編集委員が行く できること・やりたいことを軸に“楽しく働く”を実現 株式会社パルグループホールディングス(大阪府) 武庫川女子大学 准教授 増田和高 取材先データ 株式会社パルグループ ホールディングス 〒541-0045 大阪府大阪市中央区道修町(どしょうまち)3-6-1 TEL 06-6227-0308 増田(ますだ)和高(かずたか) 編集委員から  障がい者雇用を検討する際、「障がいのある人でも遂行可能な仕事を切り出す」という引き算の発想に陥ることは少なくない。しかし、一人ひとりの従業員のなかには、多様な感性や「これがやりたい」という熱意がたしかに存在します。本人の意思を置き去りにした業務配置は、真の活躍を引き出すマネジメントとはいえないはずです。  今回は、全国の店舗を舞台に現場主体の障がい者雇用を展開する、株式会社パルグループホールディングスを取材しました。同社では、障がいによる制限ではなく、「洋服が好き」、「接客に挑戦したい」という個人の意思や強みを起点に仕事を組み立てる「職務のオーダーメイド化」を実践しています。一人ひとりが活き活きと輝き、高いワーク・エンゲイジメント(働きがい)を持って働くための、先進的なアプローチを紹介したいと思います。 写真:官野貴 Keyword:ワーク・エンゲイジメント、仕事への意欲、職務のオーダーメイド化 POINT 1 「やりたい」、「好き」を起点にする仕事づくり 2 対話から生まれる「職務のオーダーメイド化」 3 一人のための工夫が職場全体を豊かにする好循環  人手不足や働き方の多様化が進む現代において、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりは、企業の持続可能性を支える重要な基盤となる。同時に、こうした環境整備は、これまで「多様性」が受け入れられず社会的な壁に直面してきた人びとが同じ仲間として共生できる社会の実現にも貢献することが期待されている。  こうした流れのなかで、障がい者雇用のあり方にもパラダイムシフトが起きている。従来の障がい者雇用は、「障がいのある人でも遂行可能な仕事を切り出し、その業務に配置する」という発想が主流であった。もちろん、こうした工夫は雇用機会の創出という点で大きな意義を果たしてきた。しかし一方で、「何ができるか」に固執するあまり、本人が何を望み、どのような場面で個性を発揮できるのかという視点は、必ずしも十分に重視されてこなかった側面もある。  今回取材した株式会社パルグループホールディングス(以下、「パルグループ」)は、こうした現状に一石を投じる企業の一つといえる。「できることを、自分のペースで、楽しく働く」を行動指針に掲げる同社では、障がい者雇用を特別な制度として切り離すのではなく、多様な人材が力を発揮できる組織づくりの一環として位置づけてきた。そこにあるのは、「障がいによる制約」から出発するのではなく、「何をやりたいのか」、「どこで強みを発揮できるのか」という本人の意思や熱意を起点に仕事を組み立てる姿勢である。このアプローチは一見すると障がい者雇用における固有の工夫のように思えるが、じつは近年の産業保健や人的資源管理の領域で注目されている「ワーク・エンゲイジメント」の概念と深く重なり合っている。本稿では、パルグループが展開する「CIAO PANIC TYPY(チャオ パニック ティピー)」、「Discoat(ディスコート)」、「3COINS(スリーコインズ)」の店舗で働く従業員へのインタビューを通じ、いかにしてワーク・エンゲイジメントを高める仕事を創出し、それが組織にどのような好影響をもたらしているのかを紐解いてみたい。 「ワーク・エンゲイジメント」とは  従業員のウェルビーイングや働きがいへの関心が高まる背景には、離職率の上昇や人材確保の困難さといった深刻な課題がある。その解決の糸口として注目されているのが「ワーク・エンゲイジメント」である。わが国における研究の第一人者である島津(しまず)明人(あきひと)さんによれば、ワーク・エンゲイジメントとは「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」と定義される。これは「活力」、「熱意」、「没頭」の三つによって特徴づけられ、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知をさす(22ページ図)。つまり、ワーク・エンゲイジメントの高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きと輝いている状態にあるといえる。ここで重要なのは、ワーク・エンゲイジメントが単なる「労働条件への満足度」や「一時的なモチベーション」とは異なる点だ。給与や待遇に満足していても、仕事そのものに意味を見出せなければエンゲイジメントは高まらない。また、精神論として「がんばること」を求めるものでもなく、自らの強みや価値観を活かしながら「主体的に働いている状態」に着目した概念である。この視点に立つと、障がい者雇用のあり方も新たな角度からとらえ直すことができる。従来の雇用管理のように、障がい特性に応じて仕事を切り出し、適応できる業務を提供することはもちろん重要な合理的配慮である。しかし、それだけでは「働ける状態(不満がない状態)」はつくれても、「活き活きと働く状態(満足して充実している状態)」までは保証できない。ワーク・エンゲイジメントの観点からみれば、本人が何に興味を持ち、どのような仕事にやりがいを感じ、どのような強みを持っているのかに目を向ける必要がある。すなわち、単に「できる仕事」をあてがうのではなく、「活躍できる仕事」をともに創り出すアプローチこそが重要となる。 ワーク・エンゲイジメントを高める仕組み(JD-Rモデル)  では、ワーク・エンゲイジメントはどのように高めていけばよいのだろうか。その代表的な理論が「JD-R(JobDemands-Resources:仕事の要求度−資源)モデル」である。このモデルでは、職場環境に存在する要素を「仕事の要求度」と「資源」の相互作用としてとらえる。まず「仕事の要求度(Job Demands)」とは、業務量の多さや時間的制約、対人関係のストレスなど、労働者に継続的な努力や負担を強いる要因をさす。これに対し、目標達成や個人の成長を支える要因が「仕事の資源(Job Resources)」であり、上司や同僚からの支援、裁量権、成長機会、適切なフィードバックなどがこれに該当する。さらに近年では、この環境側の要因だけでなく、働く人自身が内包する心理的・行動的な力である「個人の資源(Personal Resources)」の重要性も指摘されている。これは、自己効力感(やればできるという自信)や、自らの強みへの深い理解などをさす。JD-Rモデルが示すのは、労働者が十分な「仕事の資源」と「個人の資源」をバランスよく保有しているとき、仕事の要求度(負担)を乗り越え、意欲や活力を高めやすくなってワーク・エンゲイジメントが向上するというメカニズムである。逆に、これら二つの資源が乏しい状態では、仕事の負担ばかりが重くなり、疲弊や離職につながるリスクが高まってしまう。  この視点から障がい者雇用をとらえ直すと、本質的な課題がみえてくる。これまで障がい者雇用では、合理的配慮や支援体制の整備といった「仕事の資源」が注目されがちであった。だからこそ今後求められることは、本人が持つ強みや関心、挑戦したい気持ちといった「個人の資源」をいかに引き出し、日々の業務に組み込めるかという点ではないだろうか。パルグループの取組みは、まさにこの問いに対する実践そのものである。同社は「障がいがあってもできる仕事」を探すのではなく、「この人は何が好きなのか」、「何にやりがいを感じるのか」という個人の資源を出発点として仕事を組み立てていた。次節からは、店舗で働く従業員たちの具体的な姿を通して、その実践のあり方をみていきたい。 「やりたい」から始まる仕事づくり(Discoatの実践)  JD-Rモデルが示す「個人の資源」の活用は、各店舗でユニークな形で具現化している。カジュアルブランド「Discoat」の店舗で働く障がいのある従業員のAさんは、幼いころから洋服が大好きで、就職活動を控えた際も「アパレル業界で働きたい」という強い願いを持っていた。しかし、障がいのある自分に本当に務まるのだろうかという不安も同時に大きかったという。大きな決断を迫られた際、背中を押してくれたのは兄の言葉だった。「同じ後悔をするなら、好きでもない仕事をして後悔するより、好きなことをして後悔したほうがいい」。この言葉に勇気をもらい、自分が本当にやりたい仕事へ挑戦することを決意した。高校時代にDiscoatでのインターンシップ(実習)を経験した際、洋服が好きなスタッフたちと協力して働く楽しさを肌で感じ、「ここで働きたい」という想いは卒業時まで揺るがなかった。現在はバックルームでの商品整理やディスプレイ業務を担当している。入社当初は、自分から意見を伝えることに強い緊張を抱いていたという。しかし、ともに働く周囲のスタッフが特別扱いせず自然体で接してくれたことで、徐々に職場への安心感を深めていった。いまでは「自分らしく働けている」と満面の笑みをみせる。そこには、自ら選んだ仕事に誇りを持ち、主体的に業務へ没頭する、高いワーク・エンゲイジメントの形があった。 仲間として働くことで生まれる力(CIAOPANIC TYPYの実践)  ファミリーカジュアルを展開する「CIAOPANIC TYPY」の店舗でも、障がいのある従業員たちがそれぞれの資源(力)を活かして活躍している。同店で接客を担当する従業員のBさんは、「店舗の売上げに貢献できることがうれしい」と語る。接客を通じてお客さまに喜んでもらい、それが店舗の成果につながることに大きなやりがいを感じているという。Bさんが特に大切にしているのは、採用時に店舗側からかけられた「仲間として一緒に働こう。特別扱いはしないけれど、困ったときは一緒に考えよう」という言葉だ。このメッセージを受け、「仲間として認めてもらうために、まずは自分が仲間を信じよう」と心に決めたという。こうした信頼関係は、いまや店舗全体の文化へと昇華している。だれかが困っていれば自然に声をかけ、忙しいときにはお互いにフォローし合う。「障がい者と支援者」という非対称な関係ではなく、同じ目標に向かう「仲間」として助け合うナチュラルサポートが根づいているのだ。ともに働くスタッフからも、「職場全体に温かい言葉や気遣いが自然に生まれるようになった」という声があがっている。また、同店で商品管理やディスプレイを担当する障がいのある従業員のCさんも、仲間との対話を通じてワーク・エンゲイジメントを高めた一人だ。入社当初、不安だったのは、「自分の困りごとを周囲にうまく伝えられるか」という点だった。特に、衣類をきれいにたたむ作業に苦手意識を持っていたという。これに対し、当時の上司は過度な配慮を行うのではなく、段ボールで手づくりの「練習用の型」を作成し、一緒にたたむ練習をする時間を設けた。「どの作業が苦手で、どの仕事が得意なのか」、「これから何をやってみたいのか」、こうしたていねいな対話を重ねながら、上司はCさんのペースに合わせて一歩ずつ仕事内容をグラデーションのように調整していった。周囲の真摯な姿勢に触れるなかで、Cさんの心には「この期待に応えたい」という前向きな熱意(個人の資源)が芽生えていく。自ら体調管理を意識するようになり、不安なことがあれば抱え込まずに周囲へ相談できるようになった。すると、職場にさらなる好循環が生まれた。本人が自己開示し、周囲がそれに共感して耳を傾けるプロセスを重ねるうちに、働くこと自体が大きな「安心感」へと変わっていったのだ。現在では、Cさん自身がほかのスタッフの相談に乗ることもあるという。店長代理は、この変化を次のようにふり返る。  「一人の課題に向き合うためにコミュニケーションを重ねた結果、気づけば店舗全体のコミュニケーション量そのものが増えていました。もともと温かい職場ではありましたが、以前にも増して『チームとして取り組もう』という一体感が強くなりました」  障がいのある従業員へのていねいな向き合い方が、結果として店舗全体の「仕事の資源」を豊かにするという、見事な組織シナジー(相乗効果)が生まれていた。 一人ひとりの成長を支える職場(3COINSの実践)  雑貨ブランド「3COINS」の店舗で、バックルームの商品整理や納品管理を担当する障がいのある従業員のDさんは、働く楽しさについて「新しい仕事ができるようになること」だと即答してくれた。最初はむずかしかった業務ができるようになること、挑戦したかった仕事を任せてもらえること、その成果を店舗のメンバーに認めてもらえること、こうしたスモールステップの積重ねが、Dさんにとって自己効力感を高め、自身の成長を実感する貴重な機会になっている。また、「聞けばいつでも教えてもらえる」という職場の心理的安全性を高く評価していた。わからないことを一人で抱え込まず、困ったときにすぐ相談できる環境があるからこそ、失敗を恐れずに新しい業務へチャレンジしようと思えるのだという。ともに働く店長は、障がい者雇用における視点について「障がい者手帳の有無や障がい名だけでは仕事の適性は判断できません。日々のかかわりのなかでその人の性格や人となりがみえてくることで、スタッフ同士の『仲間』としての認識がどんどん深まっていく。そうしたプロセスのなかで少しずつ『どのような仕事をしてもらいたいか』と、本人の『どのようなことがしたいか』を擦り合わせていくことを大切にしています」と語る。「障がい者手帳を持っているからこの仕事」と業務を狭めるのではなく、本人の働くリズムを尊重しながら、「何がしたいのか」、「どのような強みがあるのか」を一緒に考えていく。もちろん、仕事として守るべきルールやプロとしての基準は毅然と伝えるが、その根底には「一人の大切な従業員として信頼し、ともに成長していこう」という揺るぎないリスペクトが存在していた。  今回取材した店舗で働く従業員たちに共通していたのは、「障がいがあるからという理由であてがわれた仕事」を義務感でこなしているという姿勢とは真逆の姿勢であった。好きなことに挑戦し、仲間と信頼関係を築き、自らの成長を実感しながら職務に向き合う姿、この充実感こそが彼らの「活力」や「熱意」となり、高いワーク・エンゲイジメントが維持されているのではないだろうか。 課題に向き合うことから始まった挑戦  「好きな仕事に挑戦できる」、「仲間として働ける」、「成長を実感できる」。従業員たちが口々に語るすばらしい職場環境は、決して最初から用意されていたわけではなかった。その歩みをたどるため、パルグループにおける障がい者雇用を牽引してきた、サポートフロンティア室担当責任者の清水(しみず)領(りょう)さんに話を聞いた。いまでこそ障がい者雇用のトップランナーとして知られる同社だが、かつては法定雇用率を十分に満たせない時期があったという。制度への対応という現実的な課題に直面するなかで、社内でも「どのようにして実効性のある雇用を進めるべきか」という模索が続いていた。その際、清水さんは、単に義務を果たすためだけの雇用ではなく、企業としての社会的責任を果たし、同時に組織の成長にもつながるような本質的なアプローチが必要であると考えた。  そこで清水さんが一念発起して導き出した仕組みが、「本社に専門部署をつくって一括管理するのではなく、全国に展開する既存の各店舗で、障がいのある人を一人ずつ仲間として受け入れていく」という現場分散型のスタイルであった。いまでこそ店舗主体の障がい者雇用は広まりつつあるが、当時は「現場の業務になじむだろうか」、「アパレルの店舗でどのような役割をになってもらうべきか」といった不安や手探りの要素も多かったという。それでも清水さんは「まずは現場で実践してみる」という選択をした。パルグループの障がい者雇用の歴史は、この実直な挑戦から始まったのである。 「できる人」を探すのではなく、「活かす方法」を考える「職務のオーダーメイド化」  しかし、いざ採用を進めるなかで、新たな課題もみえてきた。「雇用数の確保」だけを目的にしてしまうと、企業側の発想はどうしても「どの仕事なら任せられるか」という引き算の思考になりやすい。すると無意識のうちに、「既存の定型業務にできるだけ適応できる人材」ばかりを探すようになる。だが、このアプローチにはすぐに限界が訪れた。清水さんは当時をふり返り、苦笑交じりに「結局、そのやり方では他社との人材獲得競争のなかで、自社にマッチした方をていねいにお迎えすることがむずかしくなるんですよ」と語る。大企業が充実した専用の職場環境を整えるなかで、同じ「定型業務への適応力」というモノサシだけで判断をすれば、現場主体の同社は不利になるとのこと。さらに、「障がい者だからこの作業」といった画一的な配置を続ければ、本人が持つ潜在能力やモチベーションも十分に活かされず、職場への定着にもつながらない。そこで清水さんがたどり着いたのが、「仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせる」という逆転の発想、すなわち「職務のオーダーメイド化」であった。障がい特性や支援の必要性をみるのではなく、「その人が何をしたいのか」、「何が好きなのか」、「どのような場面でもっとも輝くのか」という内面(個人の資源)を徹底的に一緒に考える(ときに、家族や学校の先生を交えて話合いも行うとのこと)。そして、採用した人を既存の職務内容にあてはめるのではなく、その人の強みに合わせて、店舗の仕事内容や環境を柔軟にカスタマイズしていった結果、それぞれの個性や関心、「やってみたい」に挑戦できる舞台が同社では用意されることになる。そこでは障がいの有無という属性は消え去り、「その人らしさ」という個人の資源が、組織を動かすエンジンになっていた。 成功事例の「水平展開」が職場を変える  もっとも、こうした先進的な理念を清水さん一人が牽引するだけでは、全国の店舗組織は変わらない。日々売上げ目標に追われる現場の店長やスタッフが、腹落ちして行動に移さなければ絵に描いた餅に終わるからだ。そこで清水さんが実践したのが、一部の店舗でつちかった「成功事例の水平展開(横展開)」という戦略だった。まずは、障がい者雇用に対して理解があり、エネルギーのある店長がいる店舗を選択し、そこで徹底的に伴走して「最初の成功モデル」をつくり出す。障がいのある従業員が戦力として活躍し、それをみた既存スタッフの意識が変わり、結果として職場の雰囲気がよくなる。この確固たる実績とノウハウをパッケージ化し、エリアマネージャーなどを通じて全国の他店舗へ次々と波及させていくという、地道だがきわめて着実なアプローチをとった。  結果として、障がいのある一人の従業員と対話を深めるための工夫が、巡り巡って、職場全体の心理的安全性を高め、お互いをケアし合い、信頼関係のあるチームビルディングへとつながっていく。こうした取組みは障がいのある人だけが恩恵を受けるのではなく、ともに働くすべての従業員にとって、働く価値を高めるためのイノベーションとなった実例ではないだろうか。障がい者雇用のための配慮が「コスト」ではなく、組織全体のエンゲイジメントを高める「投資」になることが示唆された取組みであると取材を通して実感した。 ワーク・エンゲイジメントからみたパルグループの実践  ここであらためて、冒頭で提示したワーク・エンゲイジメントの理論(JD-Rモデル)の視点から、パルグループの実践を総括してみたい。JD-Rモデルにおいて、ワーク・エンゲイジメントは「仕事の資源」と「個人の資源」がかけ合わされることでエネルギーを生むとされている。もし、同社が従来の障がい者雇用のように「障がいがあるからこの定型業務」と一方的に仕事を切り出し、あてがうだけの管理をしていたならば、今回取材した従業員たちが語ったような、誇りと活力に満ちた言葉や活き活きとした表情は生まれ得なかっただろう。  パルグループの実践が示唆していることのなかでも特に強調したい点は、従来の合理的配慮(職場・仕事に対する環境を整えること)を超えて、その先にある本人の可能性をみすえるという視点の重要性である。「何ができないか(制限)」ではなく、「何をしたいのか(意思)」を重視する姿勢、「どのような配慮が必要か(負担)」だけではなく、「どのような強みがあるのか(資源)」という視点に関するレンズの切り替えこそが、障がいの有無を越えて、働くすべての人びとのワーク・エンゲイジメントを最大化させる鍵なのではないかと考える。 障がい者雇用から人材マネジメント全体へ  パルグループの取組みは、障がい者雇用の枠組みにおいてきわめて優れた先進事例であることは間違いない。しかし、その本質的な意義は、決して「障がい者雇用」という限定された領域だけにとどまるものではない。本来、だれもが「働く以上は、楽しく、活き活きと働きたい」という思いを持っている。だからこそ、これからの不確実な時代における人材マネジメントに求められるのは、「既存の固定化された仕事(椅子(いす))に、文句をいわずに座れる人を探すこと」ではないと考える。「目の前にいる人の資源を最大化するために、組織としてどのように仕事や環境をデザインできるか」を問い続けること。これこそが今後求められるマネジメントの本質であると考える。パルグループが体現している職務のオーダーメイド化とは、いいかえれば、一人ひとりの「個人の資源」を起点として組織の未来を組み立てる試みだと解釈できるのではないだろうか。その結果として、従業員は仕事に真の意味を見出し、仲間とのつながりのなかで自己変革を遂げ、自分らしく楽しく働くことができる。障がい者雇用の現場で試行錯誤を重ねながら育まれてきた同社の知見は、障がい者雇用の枠を越えて「人が活きる組織とは何か」という問いに対して、豊かな示唆を与えてくれているものと考える。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社パルグループホールディングス様のご意向により「障がい」としています 図 ワーク・エンゲイジメントとは? ワーク・エンゲイジメント 熱意 没頭 活力 出典:島津明人(2010).職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント.ストレス科学研究2010,25,1-6をもとに筆者作成 写真のキャプション 株式会社パルグループホールディングスが展開する「CIAOPANIC TYPY」 CIAOPANIC TYPYでは、ファミリーカジュアルの衣類や雑貨などを取り扱っている 3COINSでは、生活雑貨やインテリア雑貨などさまざまなアイテムを幅広く取り扱っている 株式会社パルグループホールディングス サポートフロンティア室担当責任者の清水領さん