ミニコラム 第57回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は増田委員が執筆しています。ご一読ください。 「障害者雇用」という枠組みを越えて 武庫川女子大学 准教授 増田和高  今回の取材を通して、障害者雇用における合理的配慮の本質とは何かについて、深く考えさせられました。一般的に「配慮」と聞くと、環境を整えることや、負担を減らすといった、周囲による外部からのサポートを想像しがちです。しかし、株式会社パルグループホールディングスの各店舗でみられたのは、そうした環境側の整備にとどまらず、働く本人たちの内面にある「洋服が好き」、「仲間と売上げに貢献したい」という、主体性とエネルギーを引き出すかかわり合いでした。  同社が体現しているのは、仕事を人に合わせる「職務のオーダーメイド化」です。これは決して過度な特別扱いを示すものではありません。一人の従業員の「苦手」をカバーし、「強み」を活かすために店長や仲間たちが対話を重ねて試行錯誤した工夫が、結果として店舗全体のコミュニケーション量を増やし、心理的安全性の高いチームをつくり上げていました。障害のある従業員に向き合うていねいな姿勢が、「コスト」ではなく、職場全体のエンゲイジメントを高めるための「投資」として見事に機能している好事例だと感じながら取材を終えました。  これからの多様化する時代において、企業の人材マネジメントに求められるのは、固定された既存の仕事に従業員を当てはめることではないはずです。目の前にいる一人の「個人の資源(可能性)」を起点に、組織や仕事を柔軟にデザインしていくこと。障害の有無という枠組みを越え、「人が活きる組織とは何か」という普遍的な問いに対する力強い答えが、同社の実直な実践のなかに息づいていました。