【表紙】 令和8年9月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第588号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2026/10 No.588 職場ルポ 一緒に働きながら、能力を見きわめ戦力化 株式会社大商金山牧場(山形県) グラビア 若手従業員が切磋琢磨 スーパーマーケットで働く 株式会社リオン・ドールコーポレーション(福島県) 編集委員が行く 地域がつながり企業へ送り出すテレワークオフィスという新しい就労の場 一般社団法人静岡障害者就労企業交流会、テレワークオフィス藤枝駅前、障害者就業・生活支援センターぼらんち(静岡県) この人を訪ねて 障害者雇用が、会社成長のきっかけに NPO法人全国精神保健職親会(vfoster)理事長 中川均さん 「宇宙へ〜新たな星の発見・開拓〜」神奈川県・小林(こばやし)杏里(あんり)さん 10月号 【前頁】 心のアート 夕暮れの ヤンバルクイナ 佐井 虎之助丸 (一般社団法人ドアレスアートオキナワ) 画材:アクリルマーカー、スケッチブック/サイズ:244mm×172mm  ヤンバルクイナをモチーフに、背景には僕の想像のなかにある美しい沖縄の景色を描きました。力強く沈む夕日と波打つ海を、ステンドグラスをイメージして描いた作品です。 (文:一般社団法人ドアレスアートオキナワ 佐井虎之助丸) 佐井 虎之助丸(さい・とらのすけまる) 1986(昭和61)年生まれ、沖縄県在住。一般企業の障害者雇用で事務員として働きながら、2025(令和7)年5月に絵を描き始めました。13歳のときに精神疾患を発症し、のちにアスペルガー症候群の診断を受けました。20年超苦しんだ精神疾患は現在寛解しています。障害は自分の一部ですが、原動力ではなく、純粋に描く楽しさや彩りを分かち合いたくて活動しています。 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2026年10月号 NO.588 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 夕暮れのヤンバルクイナ 作者:佐井 虎之助丸(一般社団法人ドアレスアートオキナワ) この人を訪ねて 2 障害者雇用が、会社成長のきっかけに NPO法人全国精神保健職親会(vfoster)理事長 中川均さん 職場ルポ 4 一緒に働きながら、能力を見きわめ戦力化 株式会社大商金山牧場(山形県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 安心して働き、能力を発揮できる職場の環境づくり 第3回 「雇用の質」を高める〜だれもが成長を実感できる職場へ〜 JEEDインフォメーション 12 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」の活用事例/2026(令和8)年度 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ グラビア 15 若手従業員が切磋琢磨 スーパーマーケットで働く 株式会社リオン・ドールコーポレーション(福島県) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 強迫性障害の私が、自分らしく働けるようになるまで 第3回 いまを生きるということ 漫画家・イラストレーター つくしゆか 編集委員が行く 20 地域がつながり企業へ送り出すテレワークオフィスという新しい就労の場 一般社団法人静岡障害者就労企業交流会、テレワークオフィス藤枝駅前、障害者就業・生活支援センターぼらんち(静岡県) 編集委員 金塚たかし 省庁だより 26 ハローワークを通じた「障害者の新規求職申込件数」が過去最高を更新 ─令和7年度障害者の職業紹介状況等─ 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート 28 中高年齢障害者の雇用継続を支える職場の取組 ―「中高年齢障害者の雇用継続支援及びキャリア形成支援に関する研究」の紹介― 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 障害者職業訓練推進交流プラザのご案内 表紙絵の説明 「この題材は、もともと宇宙や星が好きだったことと、今年から新しい仕事に取り組んでいて、それをどういうふうに表現したらよいかと考えていたとき、広大な宇宙を素材にしようと思い決めました。一緒に働いていた同僚たちは、いまではそれぞれ違う部署で働いているので、部署を星に例え、『新しい部署でもがんばってください』という思いを込めて描きました」 (令和8年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校生・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 この人を訪ねて 障害者雇用が、会社成長のきっかけに NPO法人全国精神保健職親会(vfoster)理事長 中川均さん なかがわひとし 1953(昭和28)年、石川県生まれ。1975年、株式会社熊谷組に入社。経営企画部などを経て2004(平成16)年、同社グループの株式会社ガイアート取締役就任、2016年にNPO法人全国精神保健職親会(vfoster)理事就任、2018年から同会理事長。同会のホームページはhttps://vfoster.org/ 「職親」マインドを持つ人たち ――まず、中川さんが理事長を務めるNPO法人全国精神保健職親会(vfoster(ブイフォスター))について教えてください。 中川 会の名前にある「職親(しょくおや)」という言葉をご存じでしょうか。仕事における親、という意味で、私たちは特に精神障害のある方を職場に迎え入れており、家族のように温かく見守りながら自立を支援するという理念を表しています。  職親会はもともと1980(昭和55)年ごろ、通院患者のリハビリ事業の一環として受け皿となった中小企業の経営者を中心に各地で生まれていたようです。職親会の組織化が進み、1987年に全国組織となりました。  1995(平成7)年、精神障害者の社会復帰の促進および社会経済活動への参加の促進を図ることを目的とする「精神障害者社会適応訓練事業」を、国の補助により都道府県が行えるようになりました。そこで職親会の会員企業も精神障害のある方たちを受け入れ、「ともに働く」ことを基本とする就労体験の場を提供してきました。  その後、2006年施行の障害者自立支援法によって就労支援事業など制度の整備が進み、適応訓練事業への国の補助は2012年に廃止されました。私たちの会の活動は、各地の中小企業や就労支援団体などのネットワークを広げながら、職親的なマインドを持った人たちを増やすことが中心となりました。2018年に現在の名称となり、団体・個人を含め約80会員で構成されています。なお別称の「vfoster」は、Vocational(職業の、職業訓練の)とFoster parent(里親)をかけ合わせた造語です。 一緒に働きながらスキルを ――vfosterでは、中小企業の障害者雇用を数多くサポートしてきたそうですね。 中川 障害のある方が働きやすい企業には、職場実習を積極的に取り入れているところが多いですね。複数の部署や作業を経験してもらうなかで、本人の得意なことや興味のあることに気づくことも多いからです。障害者雇用が未経験という企業には、私たちが勉強会やワークショップなどを通じて助言するほか、就労支援機関や当事者との橋渡しもしています。  いまは、就労移行支援事業所などでの一定の訓練や実習を経てから就職活動に臨む人が多いと思いますが、中小企業は、いますぐ一緒に働いてくれる人を必要としていますよね。そこで私たちは、米国で開発されたIPS(Individual Placement and Support)という個別就労支援モデルを紹介しています。オーダーメイドの伴走型個別就労支援で、本人の希望や長所などに合った職場で働きながら、必要なスキルを身につけていく方法は、職親の活動にも似ています。IPSモデルを忠実に実践するのはむずかしいかもしれませんが、それに近いやり方を職場で実践してもらえたらいいですね。 受け入れる職場の柔軟性 ――中小企業の障害者雇用がうまくいくコツは何だと思いますか。 中川 私は活動を通して数多くの中小企業を訪問してきましたが、障害者雇用がうまくいっている企業には、さまざまな業務を組み合わせられる職場の柔軟性があると感じます。例えば、ある大手メーカーの協力会社では、突発的な試作や小口注文に対応するため、その都度、工程や段取りを工夫しています。そうやって臨機応変に対応できる職場で、はじめて障害のある従業員を受け入れた際にも、働き方の仕組みをスムーズに変えていました。  逆に、そうした素地がない職場でも、「障害者雇用をきっかけに業務の柔軟性が生まれ、業績がアップした」という企業もあります。障害のある方1人を受け入れるために試行錯誤するうちに、次々とアイデアが生まれ、「自分たちで現場を改善していく力」が身についたそうです。自分たちで考えて職場環境を整えれば、やりたい仕事もできるようになる。そうして自信がつくと、どんな課題が出てきても大丈夫だという前向きな姿勢が生まれ、生産性も向上したのだそうです。大切なのは、「仕事のやり方はこれしかない」と思い込まないことです。 日報で「見守る環境」を ――精神障害のある従業員については、体調に波がある方もいるので、そういったことへの対応も大切ですね。 中川 日々の職場では、声かけをしながら体調を気にかけることが大事ですが、本人が不調をいい出せない、もしくは自覚していないときもあります。そのため、見た目や会話だけでは気づきにくい異変を、日報などを書くなかで自己申告する仕組みをつくっているところも増えてきました。  私たちは、おもにメンタルケアが必要な方向けにWebクラウド型の日報(SPIS(エスピス))を紹介しています。SPISでは、あらかじめ設定した体調の評価項目をグラフ化し、好不調の波や長期的な傾向などを「見える化」します。  この日報には自由コメント欄もあり、記載内容は、職場の上司や労務担当者、就労支援機関も閲覧できるよう設定でき、対面では伝えにくいこともやりとりできます。「今日こんなことがありました」、「〇〇がうまくいきました」などと自分の心持ちを書き込み、読んだ人たちが「○○はよかったですね」などと返信。このちょっとした“気持ちの交換”が、つねに見守られている安心感にもつながります。  ネガティブなコメントが散見された場合は、前後の記録をふり返ります。すると、業務が詰まっていた、注意を受けたことを気にしていた、私生活で悩みがあったなど大小さまざまな要因が見つかり、必要な支援や対応ができます。  日ごろから体調の波を可視化・共有し、職場全体で見守る環境が大切だと思います。 地方こそ中小企業の出番 ――近年は、発達障害を含め精神障害のある学生の就職難についても聞かれます。 中川 学生のなかには、高等教育を終えても就職できなかったり、就職しても離職してしまったりする人が少なくないようです。こうした人材を戦力として迎え入れ、いかに安定就労につなげていくかということですよね。首都圏などの一部の大学では、民間企業や就労移行支援事業所などとの連携もみられますが、特に地方では、中小企業が大きな役割を果たせるのではないでしょうか。  経営者のなかには、優れた考え方や熱い志を持った人も多くいます。メンタル面でのサポートが必要な新卒者も、職親的なマインドを持った職場であれば、安心して働けると思います。最近は、中小企業の団体と就労移行支援事業所などが連携し、地域ぐるみで就労支援に取り組む例も出てきました。私たちvfosterも地方の就労関連イベントなどに参加し、職親のよさを再認識してもらうなど、手応えを感じています。  中小企業のみなさんは、まず障害者雇用を試してみてください。何か特別なことをしようと思うから負担感があるのです。失敗しても諦めず、みんなで知恵を絞りましょう。すると、業務全体に対する考え方が柔軟になり、外部環境の変化にも強い職場になります。会社として成長したいのであれば、障害者雇用が処方箋になると思いますよ。 【P4-9】 職場ルポ 一緒に働きながら、能力を見きわめ戦力化 株式会社大商金山牧場(山形県) 食肉加工工場では、業務の切り分けやナチュラルサポートを進めながら、障害のある従業員の能力や長所を活かした戦力化を図っている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ 株式会社大商金山牧場(たいしょうかねやまぼくじょう) (本社) 〒998-0838 山形県酒田市山居町(さんきょまち)2-3-8 庄内JAビル TEL 0234-43-8629 FAX 0234-45-1018 ミートセンター/産地パックセンター 〒999-7762 山形県東田川郡(ひがしたがわぐん)庄内町(しょうないまち)家根合字(かねあいあざ)中荒田(なかあらた)21-2 Keyword:精神障害、聴覚障害、食品加工、工場 POINT 1 聴覚障害のある従業員の雇用成功を機に、ハローワークや支援機関と連携 2 業務を切り分け、一緒に働きながら本人の能力や長所を見きわめ戦力化 3 ナチュラルサポートを中心に、職場内のコミュニケーションを重視 豚肉の生産から加工・販売まで  豚肉の生産から加工、販売までを手がける「株式会社大商金山牧場」(以下、「大商金山牧場」)は1979(昭和54)年、「株式会社肉の大商」として設立され、山形県内で仲卸業を行っていたが、その後、県内外に食肉流通センターを展開しながら発展してきた。2008(平成20)年に養豚事業を開始し、2012年には他社と合併して現在の社名へ変更。地元農家と連携した循環型農業による自社ブランド豚「米(こめ)の娘(こ)ぶた」を中心に、総合食肉会社として多様な加工商品を展開している。  全従業員421人のうち障害のある従業員は10人(身体障害3人、知的障害3人、精神障害4人)で、障害者雇用率は3.05%(2026〈令和8〉年6月1日現在)という。2021年度には「障害者雇用優良事業所」として独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を受賞、2023年には山形県から「山形県障がい者雇用優良事業主」に認定されている。  大商金山牧場では、一人ひとりに寄り添った現場のナチュラルサポートを中心に、本人の働く意欲を引き出しながら、安定した就労と戦力化につなげている。今回は、事業の中心である食肉加工工場を訪ねた。 1日1万3000パック製造  大商金山牧場の加工工場「ミートセンター」と「産地パックセンター」は、庄内平野の田園地帯の一角にある。1日あたり約270頭分の豚肉が加工され、スーパーマーケットなどに並ぶ商品約1万3000パックが製造されているという。  まず、ミートセンターのカット事業部を見学させてもらった。専用作業着に着替え、手洗い消毒やエアーシャワーを経て加工エリアへ入っていくと、フロア頭上のレールに豚の枝肉が並んで吊り下げられていた。次々と作業台へ降ろされると、従業員がナイフを使い手際よく切り分けている。そのスピードと鮮やかな手さばきは、思わず見入ってしまうほどだった。公益社団法人全国食肉学校が認定する「豚部分肉製造マイスター」の有資格者が2人在籍し、後進の技術指導にもあたっているそうだ。  作業台のそばの床には大きなケースが並べられ、切り分け作業で出てくる骨や余分な脂身などが次々に入れられていた。作業台の周りでは、やはり素早い動きで満杯になったケースを置き換え、回収する従業員がいる。その1人が、聴覚障害のある佐藤(さとう)祐介(ゆうすけ)さん(42歳)だ。  この日の佐藤さんは、ケースをワゴンに載せて隣の部屋に移動した後、大きな計量機器に載せて手作業で量を調整。さらにプリントアウトしたシールをケースに貼りつけ、出荷向けのエリアに積み重ねるまでの一連の作業をテキパキと行っていた。  作業が一段落ついたところで、インタビューをお願いした。 コミュニケーションに工夫  佐藤祐介さんは生まれつきの感音性難聴で、山形県立酒田聾学校(現・山形県立酒田特別支援学校)を卒業後、山形県立酒田工業高等学校(現・山形県立酒田光陵高等学校)情報技術科に進学した。3年次には、工業系の企業を中心に就職活動をしたが、「2002年はいわゆる就職氷河期だったこともあり、特に障害のある私には厳しかったですね」とふり返る。12月に開催された就職面談会で佐藤さんは、企業ブースを出していた大商金山牧場の当時専務で、現在は社長を務める小野木(おのき)重弥(しげや)さんと目が合い、そのまま説明を聞いたという。このときの小野木さんとのやりとりをいまも覚えている。  「聴覚障害があっても大丈夫でしょうかと質問した私に、笑顔で『大丈夫。でも体力は必要だよ』と返してくれた言葉に、救われました」  後日、あらためて面接を受けて内定をもらった佐藤さん。2003年4月の入社時には、当時副社長で小野木さんの母親でもある靖子(やすこ)さんが、ほかの従業員に向けて佐藤さんに配慮が必要なことを伝え、「みなさんで支え合っていけば、何でもできますから」と声をかけた。佐藤さんは「この言葉に、『ここでがんばっていこう』という気持ちになれました」という。  配属先のミートセンターでは、「場合によってはマスクをはずして口の動きが見えるようにしてほしい」と依頼し、快諾してもらった。  最初の担当業務はパック包装。ベテランの女性従業員たちが、ほとんど身ぶり手ぶりで作業を教えてくれた。込み入った内容はマスクをはずして話してくれたが、早口になると佐藤さんには読みとりにくい。  「だんだん言葉のオウム返しをして確認するようになり、相手もゆっくり口を動かしてくれて、お互いコミュニケーションに慣れていけたように思います」(佐藤さん)  その後、佐藤さんは計量や出荷などの現場を経験し、品質管理の資格も取得。後輩の指導役を務めながら仕事の幅を広げていったが、同僚との連携がうまくいかずトラブルになったこともある。当時、佐藤さんはケースに商品を入れる作業をしていたが、「どのケースにいくつ入れるのか」について同僚が口頭で指示をしていた。するとときおり、早口になる同僚からの指示を読みとれないこともあったという。  ミートセンターを取り仕切る取締役の村上(むらかみ)文彦(ふみひこ)さんは「この現場はラインの動きについていけない従業員もいますが、佐藤さんはそれができる人でした。それに甘えてしまい、口頭指示によって無用な負担をかけてしまっていました」とふり返る。  その後、現場では身ぶり手ぶりを交え、よりわかりやすく伝える方法に切り替えた。さらに役割分担も明確にし、作業前には内容を双方で確認してから始めるようにしたという。こうした工夫によって認識のずれが減り、ミスやトラブルの防止につながっているそうだ。  佐藤さんが現在担当する枝肉副産物の回収・計量は、基本的に1人で完結する作業で、本人も能力を発揮しやすいという。「これも佐藤さんが、1日の仕事の段取りをしっかりと組めるからこそ可能なことです」と村上さんがつけ加えた。  いまや戦力として欠かせない佐藤さんには、かつて、試練の時期もあった。「35歳のとき、うつ病を患って3カ月ほど休職しました」(佐藤さん)。後輩の指導などでいいたいことがうまく伝わらず、ストレスを抱えた末のことだった。その後のスムーズな職場復帰をうながしてくれたのが村上さんだった。  佐藤さんの家族とも相談し、短時間勤務から開始したが、村上さんは佐藤さんに「体力づくりも始めよう」と提案。佐藤さんは、約1時間の自宅周辺のウォーキングや簡単な筋力トレーニングなどとともに、「ご飯もしっかり食べて、体重を元に戻す」ことを目標に、毎朝、村上さんに報告するようになった。そうして佐藤さんは、パソコン上で状況を記録しながら、着実に回復していけたという。  佐藤さんが安定して働けるようになった背景には、職場内で仕事以外のつながりができたこともあるようだ。その一つが、有志でつくるソフトボールチーム。「私自身は大した活躍もできませんでしたが、練習や飲み会が楽しかったですね」と佐藤さん。  このチームに誘ってくれたのが、カット事業部課長の阿部(あべ)雄也(ゆうや)さん。2005年入社の阿部さんに、佐藤さんが話しかけたのを機に、休憩時間などを一緒に過ごすようになった。いまでは佐藤さんにとっては「ちょっとした相談にも乗ってくれる仲間」だという。  阿部さんは日ごろ、集会などでの周囲の発言内容を、あとで個別に佐藤さんに伝えている。阿部さんは「特に心がけているわけではなく、ごく自然にやっているだけです。私だけでなく、職場の人たちはみんなそうですね」と話す。  佐藤さんは、「いまの職場では、みなさんが協力してくれて『指差し』と『読唇(どくしん)』(※)によるコミュニケーションが根づいています。おかげで安心して作業ができています」としたうえで、「海外からの実習生とも問題なく意思疎通を図ることもでき、やりがいのある職場になっています」と伝えてくれた。佐藤さんは2022年、「優秀勤労障害者」として独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を受賞している。 記憶力が低下、メモ活用し業務習得  ミートセンターで部位ごとに分けられた豚肉は、隣接する産地パックセンターでパック包装される。ここも見学させてもらった。  温度がマイナス1度で保たれたエリア では、さまざまな種類のパック商品が入ったケースが積み上げられていた。出荷先であるスーパーマーケットなどの店舗ごとに並んでいるという。ここで1人、貼りつけられたラベルと伝票を照らし合わせながら出荷先と商品数を確認していたのが、産地パック事業部で検品担当を務める小熊(おぐま)康志(やすし)さん(39歳)だ。  小熊さんは2014年に採用されたが、当時は、病院でのリハビリを経て就職活動をしていたそうだ。「2011年ごろでしょうか、日常生活のなかで、どこかに頭をぶつけたらしくて、脳挫傷で入院しました。当時のことは本当に覚えていなくて」と小熊さん。  退院後もリハビリ専門の病院や施設に通っていた小熊さんは、ハローワークを経由して採用が決まった。入社前には「記憶力がよくないことと、判断力が鈍いことを伝えていました」という。  受け入れ側にいた村上さんは、「とにかく本人が実際にできること、苦手なことをみんなで見きわめながら、担当を決めていこう」との方針を示した。実際に複数の作業を試した結果、小熊さんが任されたのは、ライン上を流れていく商品パックのラベル、印字などの検品作業だった。  目の前のものを見比べる作業のため、あまり記憶力は問われないが、村上さんによると「どんどん流れていく商品ラベルの不備をみつけるのは、なかなかたいへんな仕事です。しかも小熊さんは、大事なバーコードの印字欠けも発見してくれて、何度も助けられました」とのことだ。  その後、担当していた真空パック事業が他拠点に移管されたため、小熊さんは現在の産地パック事業部に配属となった。おびただしい数の出荷先と商品の種類があるため、小熊さんは、「どの店舗にどんな商品がどのぐらいあるか」といったことも頭に入れなければならなかったそうだ。  「もともとメモを取る習慣をつけていたので、少しずつ慣れていくうちに、自然と頭の中に入っていったように思います。一連の作業を1人でできるようになったときは、うれしかったですね」  小熊さん自身、ここで働き始めた12年前に比べ、記憶力などに関する症状はかなり改善されているという。  産地パック事業部課長の武田(たけだ)繁和(しげかず)さんも、「現場では、小熊さんの症状を意識したことがありません」と明かす。2026年春に異動してきた当初は、小熊さんから仕事の流れを教わり、「似ている店舗番号の一覧表を書いたものをもらって『こことここは特に間違えやすいので注意です』とアドバイスしてもらい、とても助かりました」という。  そして、この職場には、障害のある従業員が複数人いるほか、海外からの実習生も多い。「日ごろから、あいまいな指示や抽象的な表現は使わず、だれにでもわかりやすいコミュニケーションを心がけています」(武田さん) 見守りながら見きわめ  これまで大商金山牧場では、地元の障害者就業・生活支援センターやハローワークと連携しながら雇用を続けてきたという。当初から採用を担当してきた、執行役員で総務部長を務める福山(ふくやま)雅一(まさかず)さんは「現場で切り分けた業務について、どんな人が向いているか、職場環境も含めてハローワークなどに相談し、求人票を作成しています」と説明してくれた。  職場での実際の受け入れ方について、村上さんはこう語る。  「障害種別は気にしていません。ただ、どういう経緯で入社してきたか、これまでどんな仕事をやったことがあるかは聞いておきます。本人の希望も聞き、最低限の工数から作業を始めて、どこまで何をやれそうか、職場のみんなで見守りながら見きわめていく流れです」  なかには、残念ながら安定就労に至らなかったケースもある。ハローワーク担当者から相談を受け、知的障害のある男性を短時間の就労体験を経て採用したが、3年半足らずで退職してしまったそうだ。家族によると、それまでの職歴で最長の勤続年数だったそうだが、福山さんは反省点をあげてくれた。  「最初は管理職がうまくサポートし、少しずつ担当業務も増えていくなど順調でした。しかしその後、異動で上司・担当者が変わった際の引継ぎが十分ではなかったようで、現場でかかわる従業員が、指示を出す際に配慮が足りない場合があったことなどがわかりました。また、かぎられた人員と作業内容で、本人の望む業務に配置できなかったことも要因の一つでした」  その後は、責任者や担当者の配置換え時に配慮事項の引継ぎを徹底する、担当業務の幅を柔軟に変えられるよう複数の業務を切り分けるなどの工夫のほか、面談などで本人の不安や悩みを早めに察知するよう心がけているそうだ。  また、半年ごとに実施している、事業部の上長らによる全従業員との個別面談も「職場の小さなほころびみたいなものをみつけられるようで、トラブルになる前の対応につなげられています」(福山さん)。  こうしたなか、入社後に働き始めてから療育手帳を取得した従業員の例もあった。  そのことを職場で共有することにより、「万が一ミスがあってもカバーしやすいよう作業は複数人数によるチームで行う」、「計算が苦手(本人談)であることから、作業中に必要な計算後はみずから責任者に数値確認を求める」などの工夫が行われているそうだ。 就労継続支援A型事業所からの採用  2024年からは、地元の就労継続支援A型事業所への業務委託も始めている。福山さんによると、「先方からの依頼で、施設外就労として来てもらうことになりました」とのことだ。  最初は製造工程の一部を担当してもらったが、少しむずかしかったようで、コンテナの洗浄作業をしてもらうことにしたそうだ。洗浄といっても、その工程はいくつもある。ラベルシールをはがし、積み重ねて、洗浄用の機械に流し込む。そこから出てきたコンテナを台車に重ね、さらに乾燥機に入れて出てきたものを運んで棚に並べる、という流れだ。  「日々の活動時間が決まっているそうで、実働は3時間程度ですが、毎回事業所から多くの利用者が来てくれています」(村上さん)  また、村上さんは日ごろから、現場の従業員たちに「(利用者のなかで)そのまま一緒に従業員として働いてくれそうな人がいたら推薦してください」と呼びかけているそうだ。実際に採用した例もある。  2026年2月に入社した男性は、施設外就労中は出荷前の商品ふり分け作業を担当していた。一緒に働いた従業員たちから「まじめで元気がよく、仕事への意欲が感じられる」などと満場一致の推薦があり、採用が決まったのだという。 コミュニケーションを重ね  ミートセンターと産地パックセンターでは現在、障害のある従業員が7人配属されている。かぎられた人員配置ならではのナチュラルサポートも、試行錯誤を経ながら醸成されてきた。福山さんは、これまでの障害者雇用をふり返りつつ、今後の方針について語ってくれた。  「障害のある従業員の小さな変化を周囲が見逃さないよう、やはり日ごろからコミュニケーションを重ねることがもっとも大切だと思います。上司や同僚を信頼してもらい対話するなかで、新たに必要な配慮事項がみつかることもありますし、何より本人の意欲の向上にもつながっていると感じます。今後も一人ひとり、仕事以外のことにも目を向けながら、本人の得手不得手や、さまざまな事情に合わせた働き方ができるような職場にしていきたいと考えています」 ※読唇:相手の唇や口の動きを見て話している内容を読みとること 写真のキャプション 株式会社大商金山牧場は、豚肉の生産から加工、販売までを手がける ミートセンターのカット事業部 佐藤さんは、枝肉副産物の回収・計量を担当している カット事業部で働く佐藤祐介さん 取締役の村上文彦さん 産地パックセンター 小熊さんは、出荷前の検品作業を担当している カット事業部課長の阿部雄也さん 産地パックセンターで働く小熊康志さん 産地パック事業部課長の武田繁和さん 【P10-11】 クローズアップ 安心して働き、能力を発揮できる職場の環境づくり 第3回 「雇用の質」を高める 〜だれもが成長を実感できる職場へ〜  障害のある人など多様な人材が安心して働き、その能力を十分に発揮できる職場づくりが、いま企業に求められています。そこで障害者の雇用や就労支援を専門とする上村勇夫さんに、職場において障害のある人の安心感を高め、能力発揮をうながすために有効な環境整備や周囲のサポートのあり方などについて、解説していただきます。  第3回は、「雇用の質」を高める取組みについてです。 執筆者プロフィール 日本社会事業大学 社会福祉学部 共生社会デザイン学科 准教授、博士(社会福祉学) 上村(うえむら)勇夫(いさお)さん  企業、障害者地域作業所、ジョブコーチ等を経て、現職。障害者雇用における職場内支援のあり方と、生活支援について研究。関連論文で日本社会福祉学会奨励賞受賞。就労継続に関する著書も執筆。 はじめに―「数の確保」から「雇用の質」の時代へ  前回の第2回(※)では、現場の仲間が日々の違和感に気づき、心身の安定を支える「人的なサポート」の大切さをお伝えしました。しかし、障害のある社員が真の意味で安心感を抱き、能力を最大限に発揮し続けるためには、周囲のやさしさや配慮といった「ソフト面」の支援だけでは不十分です。それと同時に、業務の設定や評価制度といった「ハード面(仕組み)」を整えることが求められます。  現在、わが国の労働政策においても、このテーマは非常に重要な局面を迎えています。2026(令和8)年2月に報告書が取りまとめられた「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」や進行中の「労働政策審議会障害者雇用分科会」における議論を見ても、これまでの「法定雇用率をいかに達成するか(量の拡大)」というフェーズから、「採用した障害のある人が、いかに働きがいを持ち、キャリアを形成していけるか(雇用の質の向上)」というフェーズへと明確に舵が切られています。  なぜいま、雇用の質なのか。それは、単に採用人数を増やすだけでは、入社後のミスマッチや早期離職が後を絶たず、企業にとっても当事者にとっても真の幸福につながらないという事実が浮き彫りになってきたからです。労働力人口が減少するなかで、障害のある人を「貴重な戦力」として長く定着させることは、企業の持続可能性そのものを左右します。  今回は、この「雇用の質」を高めるために企業が取り組むべき具体的な考え方と方法について、三つの視点から紐解いていきます。 安心感と能力発揮の土台― 「配置・業務設定」と「環境調整」  雇用の質を高めるための第一歩は、本人の特性や能力と、業務内容がしっかりと噛み合っていること(適切な配置と業務の設定)です。  障害者雇用の現場で陥りがちな失敗として、「障害があるから」という理由だけで、本人の能力や適性を十分にアセスメントせずに、単調でだれにでもできる補助業務ばかりを切り出して任せてしまうケースがあります。これでは、本人は「会社に貢献している」という実感を得にくく、次第にモチベーションが低下してしまいます。  大切なのは、本人が持っている力を100%引き出すためには、本人にどのような特性があり、どのような業務が適しているかを考えることです。例えば、視覚からの情報処理が得意な人には製品を点検する業務を任せ、集中力が持続しやすい人にはデータ入力の業務を任せるなど、強みを活かせる配置を行います。さらに、業務を設定して終わりではなく、現場の状況に応じて柔軟に「再構築」する姿勢が求められます。例えば、複数の指示を同時にこなすことが苦手な社員には、業務を細分化し、一つ終わるごとに次の指示を出すというフローに変えるだけで、見違えるように作業スピードが上がる事例は数多く存在します。  そのうえで、前回の基礎知識でも触れた「合理的配慮の提供」をかけ合わせます。音に敏感な特性があればノイズキャンセリングイヤホンの使用を認める、疲れやすい特性があればこまめな小休憩を制度として組み込む。こうした「個々の特性に合わせた業務のチューニング」があって初めて、本人は安心して仕事に没頭し、その能力を存分に発揮することにつながります。 ワークエンゲージメントを育む― 「成長(ステップアップ)の機会」  第二の視点は、「成長の機会の提供」です。  「毎日休まず出勤し、同じ作業をミスなくくり返してくれればそれでいい」。もし企業側がそのようなメッセージを無意識に発していれば、本人のワークエンゲージメント(仕事に対する活力、熱意、没頭)の度合いは次第に低下していきます。障害の有無にかかわらず、だれもが「昨日よりできることが増えた」、「新しい仕事を任された」という成長の実感によって、働く喜びを見いだすからです。  場合によっては、「自分はどうせずっとこの簡単な仕事しかさせてもらえないのだろう」と、入社後数年で諦めの感情を抱いてしまうことがあります。これを防ぐためには、「あなたに期待している」というメッセージを具体的な仕組みとして用意する必要があります。  定着率の高い企業では、障害のある社員に対しても、段階的なスキルアップの機会を意図的に用意しています。入社から数年経ち、業務に慣れてきたタイミングで「後輩への指導役」という新しい役割を用意したり、外部の研修や資格取得に挑戦する機会を提供したりしています。  たとえそれが小さなステップアップであったとしても、「この会社で働き続ければ、自分はもっと成長できる」、そうした未来へのキャリアパス(展望)を描ける仕組みがあるかどうかが、雇用の質を高める大きな要素となります。自身の成長が可視化されることは、仕事への誇りと会社への帰属意識を強く結びつけるのです。 努力が正当に報われる― 「能力の評価と処遇」  そして第三の視点が、もっともむずかしく、かつもっとも重要な「正当な能力の評価と処遇」です。  どれだけ本人が努力をしてスキルを上げても、それが給与や役職といった「目に見える形」で報われなければ、モチベーションを維持することは困難です。「障害者採用枠だから、どれだけがんばっても昇給や昇格の対象にはならない」というような固定的な制度は、可能なかぎり見直す必要があります。  もちろん、障害特性による「できること・できないことの凸凹」や、提供している合理的配慮の程度を評価にどう組み込むかは、多くの企業が悩むポイントです。既存の評価制度をそのまま当てはめると、配慮を受けている分だけ不公平が生じかねないというジレンマもあります。そこで重要になるのが、「本人と合意した明確な目標設定」と「プロセス(過程)の評価」です。  ほかの社員とまったく同じ基準で競わせるのではなく、「半年間でこの業務を一人で完結できるようになる」、「遅刻を月1回以内に抑える」、「自分から進んで業務の報告ができるようになる」など、本人の実状に合わせた目標を設定し、その達成度合いを正当に評価して処遇に反映させます。  また、結果だけでなく「どのように努力したか」というプロセスに光を当てることも欠かせません。評価面談の場を定期的に設け、上司から「あなたのここが成長したね。だから評価したよ」とフィードバックを行うこと。この「正当に評価されているという実感」こそが、本人の自尊心を満たし、強い能力発揮の力となります。評価とは、単なる賃金決定のツールではなく、社員との対話を通じた「育成のプロセス」そのものなのです。 おわりに― 「雇用の質」の追求は、すべての社員のために  「適切な配置・業務設定」、「成長機会の提供」、「正当な評価と処遇」。これらを通じて「障害者雇用の質」を高める取組みは、じつは「すべての社員が活き活きと働ける、ワークエンゲージメントの高い組織」を創るための取組みそのものです。  現在議論されている「雇用の質の向上」は、決して企業に新たな負担を強いるものではありません。一人ひとりの個性に光を当て、その能力を組織の力に変えていくための、きわめて前向きな人事戦略なのです。多様な人材がその能力を発揮できる土壌こそが、これからの企業価値を決定づけます。  次回は、採用時の見きわめだけで終わらせず、入社後も時間の経過とともに生じるズレを継続的に修正していく、「ミスマッチを防ぐ『伴走型』マッチングの極意」について、具体的な事例を交えて解説していきます。 ※第2回(2026年9月号)はJEEDホームページでもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202609/#page=12 POINT ワンポイントアドバイス ワークエンゲージメント  従業員が仕事に対してポジティブで充実した心理状態にあることをさす概念で、「活力(仕事から活力を得ている)」、「熱意(仕事に誇りややりがいを感じている)」、「没頭(仕事にのめり込んでいる)」の三つの要素から成り立つとされています。障害のある社員のワークエンゲージメントを高めることは、離職を防ぎ、職場の生産性を向上させるための重要な鍵となります。 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金」の活用事例  「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」は、事業主が障害者の雇用にあたって、施設・設備の整備や適切な雇用管理を図るための特別な措置を行う場合に、その費用の一部を助成することにより、事業主の一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることを目的としています。  今回は、これらの助成金を効果的に活用した事例をご紹介します。 事例 1 〜義足使用者の職場環境改善に向けたトイレの洋式化および床の改修〜 【障害者作業施設設置等助成金(第1種中高年齢等障害者作業施設設置等助成金)】  A社で警備業務に従事するBさんは、身体障害1級でふだんから義足を使用していますが、加齢にともない、手すりがあってもしゃがむことがむずかしくなり、和式トイレの使用が困難になっていました。また、トイレの床材は濡れると滑りやすい材質であることから、義足を使用するBさんにとって、利用に際して注意が必要な環境であることも課題となっていました。  そのため、助成金を活用して和式トイレの洋式化および床材の改修を実施することにより、トイレ使用時の身体的負担が軽減されるとともに、安全で利用しやすい環境が整備されました。  その結果、Bさんが安心して業務を続けられる職場環境が整い、就労の継続につながりました。 事例 2 〜車いすでも使用できる食堂手洗い場の改修〜 【障害者福祉施設設置等助成金】  C社で働くDさんは、筋ジストロフィーによる体幹機能障害と起立保持困難のため、自力での歩行がむずかしいことから、常時車いすを利用しています。しかし、4階にあるC社の食堂に設置されている手洗い場は、カウンター下に足を入れる空間がない構造であったことから、車いすに乗ったままでは使用することができませんでした。手を洗う際にはエレベーターで1階の手洗い場まで移動する必要があり、手洗いの際の負担や煩雑さが課題となっていました。  そのため、助成金を活用して、食堂の手洗い場を車いす利用者でも使用できるよう改修したことにより、移動にともなう負担が軽減されるとともに、利用しやすい環境が整備され、障害のある従業員の福祉の増進が図られました。 事例 3 〜通勤を容易にするため自ら住宅を借り受けた視覚障害者に住宅手当を支給〜 【重度障害者等通勤対策助成金(住宅手当の支払助成金)】  E社で勤務するFさんは、中途で視覚障害者となりました。それまでは自宅からE社まで徒歩と電車で通勤していましたが、駅などにはバリアフリー設備が整備されているものの、人や物との接触や転倒への不安があることから、公共交通機関を利用して通勤することが困難となりました。  そこで、E社ではFさんのように通勤が困難となった障害のある従業員に対して住宅手当を支給できる制度を新設し、就業規則を労働基準監督署に届け出たうえで住宅手当の支給を開始するとともに、助成金を申請しました。  この制度の新設により、FさんはE社まで徒歩で通勤できる住宅を借り受けることが可能となり、通勤負担が軽減され、就労の継続につながりました。 事例 4 〜職場復帰にあたり勤務時間変更と職種転換を行い雇用を継続〜 【障害者介助等助成金(職場復帰支援助成金)】  精神障害のあるGさんは、対人業務に従事していましたが、障害の影響により休職することとなりました。  復職にあたっては、主治医からの指示等をふまえ、それまでのシフト勤務から勤務時間を固定した勤務へ変更するとともに、短時間勤務から開始し、状況を確認しながら通常勤務への移行を目ざしました。また、JEEDの地域障害者職業センターの支援を受けながら、対人業務のない職種への転換を行いました。  助成金を活用して、勤務時間等に関する柔軟な配慮や職種転換の措置を実施したことにより、Gさんは無理なく職場復帰を果たすことができ、復職後1年以上が経過した現在も安定して業務に従事しています。 事例 5 〜地方公共団体の制度と助成金を併用した始業から終業までの支援〜 【障害者介助等助成金(重度訪問介護サービス利用者等職場介助助成金)】  H社で働く重度の四肢・体幹機能障害のあるIさんは、Webコンテンツ作成などの業務を在宅勤務で行っていますが、日常生活全般において介助が必要であり、就業中も姿勢調整や見守り等の介助が欠かせません。しかし、障害福祉サービスの重度訪問介護では就業中のサービス利用ができないことから、地方公共団体が実施する重度障害者等就労支援特別事業による支援とJEEDの障害者介助等助成金を併用し、就業中の支援を受けることにしました。  これらの制度を併用することで、食事や排せつ、姿勢調整などの身体介助には地方公共団体の特別事業を、業務に関する介助には助成金を活用することができるため、事業主の費用負担を抑えながら、始業から終業まで必要な支援を受けられる体制が整いました。  その結果、Iさんは必要な支援を受けながら安心して勤務することができ、就労の継続につながっています。 ●事例を紹介したものを含め、各種助成金があります。詳細は、JEEDホームページでご確認ください。 �@障害者作業施設設置等助成金 �A障害者福祉施設設置等助成金 �B障害者介助等助成金 �C職場適応援助者助成金 �D重度障害者等通勤対策助成金 �E重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 �F障害者能力開発助成金 �G障害者雇用相談援助助成金 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html ●助成金に関する申請手続き等については、JEED各都道府県支部高齢・障害者業務課 (東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 https://www.jeed.go.jp/location/shibu/index.html ●e-Gov電子申請をご利用ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/e-shinsei/index.html 2026 (令和8)年度 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に向けた職業訓練や就職支援を実施しています〜 募集訓練コース、募集日程 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース 訓練期間 メカトロ系 機械CADコース 1年 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査コース 建築系 建築CADコース 情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース ビジネス系 会計ビジネスコース OAビジネスコース オフィスワークコース 物流系 物流・資材管理コース 職域開発系 オフィスアシスタントコース 販売・物流ワークコース サービスワークコース 応募回 入所日 ハローワークへの申請書提出締切日 第7回 2026年12月21日(月) 2026年10月1日(木) 第8回 2027年1月25日(月) 2026年10月29日(木) 第9回 2027年3月10日(水) 2026年12月7日(月) 第10回 2027年4月19日(月) 2027年1月7日(木) 国立職業リハビリテーションセンター 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2  職業評価課 TEL:04-2995-1201 https://www.nvrcd.jeed.go.jp 写真のキャプション 視覚障害者の支援機器を活用した訓練風景 3DCADを活用した訓練風景 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース 訓練期間 メカトロ系 機械CADコース 1年 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 製造ワークコース ビジネス情報系 システム設計・管理コース※1 2年 【視覚障害者対象】ITビジネスコース 会計ビジネスコース 1年 OAビジネスコース オフィスワークコース アシスタント系 販売・物流ワークコース サービスワークコース ※1 システム設計・管理コースの2026年度内入所の募集は終了しました。 次回の募集は、下表の第8回(2027年4月入所)となります。 応募回 入所日 国立吉備高原職業リハビリテーションセンターへの応募締切日※2 第6回 2027年1月7日(木) 2026年10月26日(月) 第7回 2027年2月4日(木) 2026年11月24日(火) 第8回 2027年4月8日(木) 2027年2月1日(月) ※2 国立吉備高原職業リハビリテーションセンターへの応募締切日:ハローワークから送付する申請書類が国立吉備高原職業リハビリテーションセンターに到着する日です。応募者は、事前にハローワークと相談したうえで、早めにハローワークへ申請書類を提出してください。 ○2027年4月入所希望の新規学校卒業予定の方  第6回から第8回までの応募回で応募することもできます。なお、職業評価(入所選考)については、応募した回の日程で受けていただきます。 ○入所日の変更  各訓練コースの入所状況等により、応募回の入所日から入所時期が変更となる場合があります。 ●遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課 TEL:0866-56-9001 https://www.kibireha.jeed.go.jp 【P15-18】 グラビア 若手従業員が切磋琢磨 スーパーマーケットで働く 株式会社リオン・ドールコーポレーション(福島県) 取材先データ 株式会社リオン・ドールコーポレーション(本社) 〒965-0871 福島県会津若松市(あいづわかまつし)栄町(さかえまち)2-14 TEL 0242-26-2111 FAX 0242-28-7028 リオン・ドール滝沢店 〒965-0003 福島県会津若松市一箕町(いっきまち)大字(おおあざ)八幡(やはた)字(あざ)牛ケ墓(うしがはか)7-1 TEL 0242-39-6711 写真・文:官野貴  福島県会津若松市に本社を置く株式会社リオン・ドールコーポレーション(以下、「リオン・ドール」)は、福島県会津地方を中心に、新潟県、栃木県、茨城県に地域密着型のスーパーマーケットを展開しており、店舗や流通センターなどで障害のある従業員が活躍している。会津若松市内のリオン・ドール滝沢店のグロサリー部門では、障害のある若手従業員たちが切磋琢磨しながら業務を行っており、店舗運営に欠かすことのできない戦力となっている。  入社8年目の齋さい藤とう颯はやとさん(26歳)は、流通センターからトラックで運ばれてきたカートを手慣れた様子で搬入していた。グロサリー部門では、常温保存の食品や飲料などを取り扱っており、齋藤さんは同僚のTさん(23歳)、眞壁(まかべ)沙耶香(さやか)さん(24歳)とともに商品の品出しや陳列などを担当している。  齋藤さんは特別支援学校在学時の職場実習を経て、リオン・ドールに入社した。当初は品出しで、指示と違う商品を出してしまうなどのミスもあったが、いまは指示をしっかりと確認することで間違いなく品出しができるようになったという。また、齋藤さんは特売品などが記載されたチラシをいつも持ち歩き、お客さまからの問合せにしっかりと答えられるようにしているそうだ。  リオン・ドールでは、地域のハローワークや障害者就業・生活支援センターと連携し、仕事と生活の両面から障害のある従業員をフォローし、適性に合わせた職場に配置をすることが高い定着率につながっている。また、地域の特別支援学校からの職場実習の受入れも長年続けており、リオン・ドールで働くことを目標にしている生徒も多いそうだ。これらの取組みが評価され、2021(令和3)年度には、「障害者雇用優良事業所」として厚生労働大臣表彰を受けている。今後も積極的な障害者雇用を続ける予定だという。 写真のキャプション リオン・ドール滝沢店 トラックから降ろされたカートを搬入する齋藤颯さん 菓子類の品出しを行う齋藤さん。作業スピードには定評がある バックヤードに戻り、商品の入っていた梱包容器の整理をする 品出しの際には賞味期限も確認し、賞味期限が近いものを手前にする プライスカードの制作�@ 上司と打合せをし、プライスカードの制作に取りかかる プライスカードの制作�A パソコンを使用してプライスカードをデザインする プライスカードの制作�B プライスカードを印刷し、できあがりをチェックする プライスカードの制作�C 完成したプライスカードを売り場に貼り出す Tさんはグロサリー部門でアルコール飲料を担当している。「将来は発注作業にもチャレンジしたい」と話す 調味料の品出しをする眞壁沙耶香さん。「お客さまからかけられる感謝の言葉が、やりがいにつながっています」と教えてくれた 【P19】 エッセイ 強迫性障害の私が、自分らしく働けるようになるまで 第3回 いまを生きるということ 漫画家・イラストレーター つくし ゆか 看護専門学校卒業後、大分県や福岡県の医療・介護現場で看護師として勤務。2019(令和元)年に結婚を機に鹿児島県へ移住。自身の強迫性障害の体験をもとに漫画制作を開始し、2022年に燦燦舎より『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』、2025年にラグーナ出版より『強迫性障害とともに生きてみた。〜不安が軽くなる30のヒント〜』を出版。現在は県内で講演活動も行っている。 環境が変わっても、変わらない症状  総合病院を辞めたあと、私は小さなクリニックや介護施設を転々としていました。  環境が変われば楽になるかもしれない、そんな思いもありましたが、強迫性障害の症状そのものが消えることはなく、仕事中に注意を受けることも少なくありませんでした。 「いまを軸に生きる」という言葉  そんななか、近所の大学で行われていたカウンセリングに通うことになりました。担当してくださったのは、目の見えないカウンセラーの方でした。これまでの生い立ちや、そのとき感じていることを、時間をかけてていねいに聞いてくださいました。  ある日、こんな言葉をかけてもらいました。  「つくしさんは、過去や未来を考えすぎて生きているのではないでしょうか。いまを軸に生きてみてはどうでしょう」 少しだけ、楽になれた考え方  その言葉を聞いたとき、「たしかに」と思いました。過去の自分の行動をふり返っては、「あのときちゃんとできていなかったのではないか……」と不安になり、そこから最悪の未来を想像してしまう。そんなふうに、不安をどんどん大きくしていたように感じたのです。  「いま」だけを見つめてみたら、少し楽になるのではないか……そう思うようになりました。  でも、不安が消えるわけではありません。それでも、「いま」に意識を向けることで、不安に飲み込まれずにいられる瞬間が少しずつ増えていきました。不安の波をなくそうとするのではなく、その波にどう乗るか。そんなふうに考えられるようになっていったのです。 思いがけない出来事  そうして、少しずつ症状とのつき合い方がわかり始めたころ、大きな出来事がありました。父に胆管がんが見つかり、余命1年と告げられたのです。つい最近まで元気だった父の突然の病気に、現実を受けとめきれませんでした。  それからの1年間は、父の闘病を支える日々でした。心も体も余裕がなくなり、落ち着きかけていた症状も、再び強くなっていきました。ふり返ると、強いストレスが影響していたのだと思います。  そして医師の言葉通り、1年後の寒い冬の日、父は亡くなりました。 気づいた「あたり前の悲しみ」  父に何も恩返しができなかった……そんな思いが強く残り、私は深く落ち込みました。何をしていても気持ちが晴れず、ただ悲しみの暗闇のなかにいるような日々が続きました。  そんなある日、ふと気づいたことがありました。  「私はいま、あたり前のことで悲しんでいる」ということです。大切な人を亡くして悲しむこと。それは、とても自然なことです。それまでの私は、起きてもいないことや、確かではないことに心を奪われ、苦しんでいました。でもこのときは、現実に起きた出来事に対して、まっすぐに悲しんでいました。 「どうにもならないこと」があると知って  その違いに気づいたとき、少しだけ、自分のなかで何かが変わったように感じました。どんなに心配しても、どんなに準備をしても、「大切な人の死」のように、自分の力ではどうにもできないことは起きてしまう。そう思えたことで、これまで抱えていた不安に対しても、少しずつ向き合い方が変わっていきました。  「いま」を軸に生きる、という感覚を、ようやくつかめた瞬間だったのかもしれません。 のびのび働ける場所へ  その後、私は病院勤務を離れ、以前から興味のあった高齢者向けの運動施設で働き始めました。ヨガや健康体操の指導をする仕事です。  これまで強く縛られていた「ミスをしてはいけない」という思いは、少しずつやわらいでいきました。自分で考えた体操を取り入れながら働くなかで、「できた」という感覚や、小さな達成感を感じられるようになっていきました。  もちろん、ミスをしないに越したことはありません。それでも、失敗を恐れて縮こまるよりも、自分らしくのびのびと働けることのほうが、私にとっては大きな意味がありました。自分に合った環境で働くことの大切さを実感し、「無理に周りに合わせ続けなくてもいい」と少しずつ思えるようになったのです。ありのままの自分を受け入れながら働けるようになったことは、私にとって大きな自信にもつながっていきました。  だからこそ私は、「強迫性障害だからできない」ではなく、「強迫性障害とともに、どうやって生きていくか」を考えるようになりました。 【P20-25】 編集委員が行く 地域がつながり企業へ送り出すテレワークオフィスという新しい就労の場 一般社団法人静岡障害者就労企業交流会、テレワークオフィス藤枝駅前、障害者就業・生活支援センターぼらんち(静岡県) NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク副理事長・事務局長 金塚たかし 取材先データ 一般社団法人静岡障害者就労企業交流会 〒426-0078 静岡県藤枝市南駿河台6-1-5-407 https://shizuokakoryukai.jp/telework_fujieda.html テレワークオフィス藤枝駅前 〒426-0034 静岡県藤枝市駅前1-2-10 JAサービスビル304 TEL 054-631-7316 障害者就業・生活支援センターぼらんち 〒427-0011 静岡県島田市東町241 TEL 0547-36-8985 FAX 0547-36-5535 Keyword:テレワークオフィス、見守り支援員、精神障害、発達障害、障害者就業・生活支援センター 金塚(かなつか)たかし 編集委員から  静岡県藤枝市で生まれた「テレワークオフィス」は、障害のある人が企業へ就職するための“中二階”となる新しい就労支援の場だ。福祉サービスの枠にとどまらず、見守り支援員が利用者と企業の双方を支え、安心して働き続けられる環境を整備。地域の支援機関や企業が連携し、一人ひとりの力を育てながら、本社勤務や一般就労へのステップアップを後押ししている。利用企業からは生産性向上や人材育成への効果が評価され、利用者からも相談できる安心感や働きがいが支持されるなど、地域ぐるみで障害者雇用を広げる、時代に合った先進的なモデルである。 写真:官野貴 POINT 1 静岡障害者就労企業交流会が設立した「テレワークオフィス」から、福祉とは異なる仕組みで当事者を企業に押し出している 2 「テレワークオフィス」には独自の見守り支援員を配置し、企業と当事者の双方を手厚く支援 3 「テレワークオフィス」はずっと居るための場所ではなく、卒業して企業の本社で働くための足場 はじめに  障害者雇用を進めたい企業と、働く意欲を持つ障害のある人。その双方を地域全体で支える新たな仕組みが、静岡県藤枝市で成果を上げている。「テレワークオフィス」は、一般就労への橋渡し役として、企業、福祉、教育、行政をつなぎ、安心して働き続けられる環境を築いてきた。その現場では、どのような支援が行われ、何が企業と働く人の力になっているのか。障害者就業・生活支援センターぼらんち(以下、「ぼらんち」)センター長の夏目(なつめ)芳行(よしゆき)さん、一般社団法人静岡障害者就労企業交流会(以下、「静岡障害者就労企業交流会」)代表の福田(ふくだ)次朗(じろう)さん、株式会社日新環境調査センター(以下、「日新環境調査センター」)総務部総務課係長の須永(すなが)史子(ふみこ)さん、テレワークオフィスを利用し、同社で働いている当事者の和田(わだ)理哉(まさや)さんに取組みの背景と現状についてお聞きした。 日本一、地域とつながり 地域を輝かせる ◆ぼらんち センター長 夏目芳行さん 金塚たかし(以下、「金塚」) 「ぼらんち」さんを一言で紹介すると? 夏目芳行(以下、「夏目」) 「日本一、地域とつながるセンター」です。私がセンター長に就任した8年前から、合言葉として掲げています。障害のある方が「この地域で就職してよかった」と思い、雇用者側も「地域で雇用したからこそ、支えがあり、自分たちの力もついた」と思ってもらえるような地域にできればと考えています。 金塚 地域を意識した具体的な取組みはどんなことでしょう? 夏目 志太榛原(しだはいばら)(※1)圏域自立支援協議会などで連携を図りつつ、福祉・企業向けの研修やセミナーでみんなが集まる機会をつくってきました。いまは当事者がコメンテーターなどとして参加する機会もあり、今後は一般市民の方々も入れるように、そのような場をつくっているところです。また、「かがやきウィーク」と題して、福祉施設で働いている当事者の方々に、企業で働く機会を設けています。これは、企業で働いた経験がない方に企業体験をしていただく事業です。企業にもご協力をいただき、毎年約130名が参加しています。 金塚 関係機関向けにはどのような取組みがありますか? 夏目 サービス管理責任者の方が集まる「サビ管ミーティング」を6年前から年2回、開催しています。当センターが管轄する4市2町には、就労移行支援事業所が2カ所、就労継続支援A型事業所が約18カ所、B型事業所が約70カ所あります。就労移行支援事業所は以前、それぞれの町にあったのですが、いまは当事業所と隣の焼津市(やいづし)だけになってしまいました。就労移行支援事業所がない地域の方々は、A型事業所かB型事業所を経て就職しています。特にA型事業所からは多くの方が就職に結びついています。 金塚 それは全国的にはめずらしいことだと思います。 夏目 先述した「かがやきウィーク」の影響もあり、「本人たちが就職したいというときは押し出していこう」という気運があります。あとは毎週1社、求人が出ている企業を福祉施設のスタッフが訪問する「見学会」を行っています。それで行けそうな利用者がいれば、送り出すという流れです。企業としても、支援者がついている当事者を採用したいという考えがあるようです。 金塚 そのほか、企業に向けてはどのような取組みをされていますか? 夏目 大きなイベントとしては「志太榛原を障害者雇用で輝かせる会議」を行っています。企業の方々が集まる場として、企業向けの研修会を年に6回ほど行っています。開催初年は200社ほどが集まりました。いまでも100名ほどが集まっています。 金塚 静岡障害者就労企業交流会が実施されている、テレワークオフィスとの関係性について、教えてください。 夏目 テレワークオフィスから就職された方が、ぼらんちに登録される形になります。また、ぼらんちに登録されている方で「この方だったらテレワークオフィスに向いているのではないか」という方をご紹介することもあります。前者に対する取組みとしては、就職直後の方は、月に3回ほど定着支援を行います。2〜3年目になると半年に一度ほどの連絡をするようにしています。後者に関しては、「就労意欲とある程度のスキルはあるが、企業でいきなり働くのはむずかしいかな」という方をお願いしています。特に「このスキルが必要」という条件があるわけではないのですが、パソコンを使う事務仕事ができる方をご紹介するようにしています。 金塚 テレワークオフィスで多くの方が就労定着している要因は? 夏目 スキルのある「見守り支援員」さんが在籍していることが一つ。また、代表理事の福田さんは、前職のころから「精神障害者を雇用する」ことに特化しておられた方です。企業・当事者の双方に対して適切なアドバイスをしてくださるので、安心できる場所になっています。地域全体からみても、「テレワークオフィスがなければ働けなかった人を救ってくれた場所」です。福祉に通うレベル・スキルではないけれど、企業へは一歩踏み出せない……という人たちが、ゆっくりスタートできる場です。 金塚 反対に課題は何でしょう? 夏目 まず、障害者雇用ビジネスに間違えられやすいことです(笑)。また、テレワークオフィスはボランティアとして当事者の就労訓練を受け入れておられます。その背景として、この地域には就労移行支援事業所が2カ所しかない、という事情もあります。静岡市の就労移行支援事業所に通う方も多いのですが、やはり地域で就労を増やしていくためには、テレワークオフィスさんが行っている就労訓練を地域で支える仕組みをさらに応援する必要があるのではと感じています。 中二階から二階へ 卒業してもらうことが原則 ◆静岡障害者就労企業交流会 代表 福田次朗さん 金塚 藤枝市の地域の特徴についてお聞かせください。 福田次朗(以下、「福田」) さまざまな産業が地域にあるため、障害者の就労の裾野が広くなっています。また、静岡市に隣接しているので、就労の機会も多い地域です。加えて、福祉と企業、特別支援学校が密に連携できているエリアでもあります。 金塚 静岡障害者就労企業交流会の全体としての取組みを教えてください。 福田 9年前に設立した組織です。取組みは三つ。一つめが障害者を雇用している・したいと考えている企業の意見交換の場。二つめが、見守りのいるテレワークオフィスを企業に提供すること。三つめが企業の障害者雇用の相談支援(障害者雇用相談援助事業の認定事業者)を行うこと。そのほか、当事者や親御さん、ドクターの相談窓口もになっています。 金塚 テレワークオフィスを設立しようと思った背景は? 福田 私はもともと、藤枝市の障害者就労の企業部会に所属していました。そのなかで「通勤困難エリアの方たちをどうするのか」という点が、以前から話題になっていました。この解決策の一つとして「駅前オフィスでのテレワーク案」が浮上してきました。同時に藤枝市が「障害者のためのテレワーク事業を始動する」というタイミングが重なりました。当時から私たち静岡障害者就労企業交流会では「企業の障害者雇用担当者を支える法人をつくりたい」と考えており、「うちが中核となってテレワークオフィスを立ち上げよう」という流れにつながったのが8年前です。 金塚 テレワークオフィスの特徴についてご説明ください。 福田 精神障害者や発達障害者の方が安心して働ける場とは、「いつも相談に乗ってくれる人がそばにいること」だと思います。それを企業が独自で実現するのはなかなかむずかしい場面もありますので、当会がサテライトオフィスを設立し、「見守り支援員」を配置する。支援員は当事者と企業の双方を支援しています。利益は考えずに、「このモデルで支援すれば働ける」という見本の場にしたかった、という思いもあります。当事者と企業がなじんで、本社で勤務できるような取組みをしています。もちろん出戻りするケースもあります。 金塚 どのような方がこちらで働いていますか? 福田 ある程度のパソコンスキルや業務経験はあるが、対人関係やほかの問題で企業で働くことができない方が、例えば主治医や地域若者サポートステーションの紹介で来られます。最初は体験訓練で入所して、そのまま終わる方もいれば通い続ける方もおられます。バーチャルオフィスも設けているので、在宅で毎日決まった時間に仮想空間にログインして「通う」という形をされている方もいます。半年ほど通って、企業に就職できそうな方はハローワークを通して送り出しています。 金塚 現在何名の方が登録しており、どんな作業をされていますか? 福田 実際に通所して企業に雇用されて働いている方は14名で、うち13名がテレワークオフィスで企業の勤務を行っています。また、バーチャルオフィスを利用して在宅勤務で企業に雇用されている方が1名。その他に体験訓練されている方が4名います(うち2名がバーチャルオフィス利用で在宅訓練)。企業につながる前の方と、企業につながった方、その両者が通っているということになります。  9時〜16時までの時間が基本ですが、最初は短時間から始める方もいます。企業とつながるまでの期間は訓練として、文部科学省委託事業を行う会社の在宅就労訓練プログラムを活用しながら、簿記やITパスポートなどの資格を取得していきます。その過程で「通所ができる」ということが確認できたら、ハローワークに登録して企業訪問や見学に行っていただきます。企業側から「こういう人材がいたら紹介してほしい」とオファーが来ることもあります。 金塚 見守り支援員の役割とは? 福田 利用者に対しては定期面談や必要時面談、見守りシート、セルフチェックシートの確認。ハローワークや障害者就業・生活支援センター、特別支援学校などとの連携調整をしています。また、企業担当者や上層部と話をすることもあります。企業担当者が職場のなかで浮いてしまった場合などは、同僚に対しての説明や理解を求める取組みを行うこともあります。また、企業へ出張して研修などを行っています。 金塚 これだけの支援を企業に対して行うためには、ある一定の経験値や能力が支援員に求められると思います。 福田 支援員の榛地(しんち)裕子(ひろこ)さんは企業支援や福祉施設の施設長の経験があり、社会福祉士の資格を持ちジョブコーチの養成研修も修了しています。 金塚 就労移行支援事業所としても活動できそうなサポート体制ですが、そうしない理由は何でしょうか? 福田 行政からもそのように頼まれることがありますが、障害者総合支援法の枠組みでの福祉のなかに入ってしまうと、できないことがあります。いろいろなことが縛られて自由にできないため、そこに入りたくなかったのです。自分たちが思い描いている障害者就労支援の理想を実現してみたかった……というのがテレワークオフィスです。開所当初はテレワークという言葉が世に知られていなかった時代です。僕らにとってはコロナ禍が逆に追い風となり、企業のテレワークに対するハードルが一気に下がりました。 金塚 いま、テレワークやサテライトオフィスはマイナスのイメージがあります。それらとの違いを教えてください。 福田 まずはフルサービスの見守り支援員がいるということです。障害者雇用ビジネスに間違えられることもありますが、「企業に雇用されており、企業が持ち込んだ仕事を当事者にやってもらう」、「ただのレンタルのオフィスである」ということ。また「それに対してこれだけの見守りを行う」ということで、静岡労働局からお墨つきをもらって開所しています。 金塚 私が興味を持ったのは、ここでの就労にとどまらず、力をつけた当事者が本社のほうに登用されているという点です。 福田 われわれはあくまで「中二階」という位置づけです。テレワークオフィスを卒業してもらうことが原則です。企業担当者を支援している理由はそこにあります。担当者の障害者雇用管理スキルが上がると、より多くの当事者を受け入れられるようになります。そのためには当事者だけを支援していても意味がありません。 金塚 現在の状況はいかがですか? 福田 ようやくこの形が地域で認知されてきました。企業から「これから障害者雇用を始めようと思うのだが、どうしたらよいか?」と相談を受ける機会も増えました。すでに雇用している当事者社員の面談を依頼され、結果的に職場の改善をお手伝いしたケースもあります。われわれのような考え方の人がほかにも出てきて、他地域でもこのモデルを広めてほしいなと考えています。 大きく生産性が上がり戦力になっている ◆テレワークオフィスを利用している企業の須永史子さん(日新環境調査センター総務部総務課係長) 金塚 テレワークオフィスを利用されたきっかけを教えてください。 須永史子(以下、「須永」) 障害者雇用率が適用される企業規模に成長したため、達成するべく利用を始めました。きっかけは代表の福田さんからのご紹介です。弊社の障害者雇用率は2026(令和8)年6月1日時点で、3.64%です。 金塚 利用する際に、不安はありませんでしたか? 須永 テレワークという形態のため、本人が目の前にいないなかで仕事を進めていく……という点は不安でした。ただ、障害者雇用という点についての心配はあまりありませんでした。  テレワークオフィス利用者の和田理哉さん(42歳)は人当たりがよく、面談でも円滑にいろいろな話をすることができたためです。 金塚 勤怠や業務の管理はどのようにされていますか? 須永 おもにMicrosoft Teamsをツールとして、朝晩の挨拶から業務連絡をチャットで行っています。勤怠管理については業務担当者と緊密に連携して、有給休暇などを取得する際には事前に申告してもらっています。急な欠席や有事の際には、本人・テレワークオフィス・本社で連絡を取り合えるような仕組みを構築しています。 金塚 生産性についての評価はいかがですか? 須永 ゆっくりですが、向上しています。少しずつ業務の幅を広げていき、気がつけばだれよりも業務に精通しているところまで成長されていました。ふり返ってみると大きく生産性が上がったことがわかりました。  当初は私が業務担当者を兼任していたため、毎日カメラ越しに顔を合わせながら報告を受けていました。 金塚 ほかにテレワークオフィスを利用してよかった、という点はありますか? 須永 本人の顔が見えなくても、現場で見守ってくださる福田さんなどから状況を聞くことができる点が一番安心でした。いまはもう1名、テレワークオフィスを通じて採用して働いている社員がおります。 金塚 今後、本社での登用も考えておられますか? 須永 かなり戦力になっているので、「ぜひ本社に」というお話もしましたが、テレワークオフィスで勤務されているお二人は、住み慣れた町で働き続けることを希望されているため、気持ちを尊重して現在の形を維持させていただいております。 金塚 同じく障害者雇用をされている全国の企業担当者の方に、メッセージをお願いします。 須永 私自身、まったく無知な状態から障害者雇用担当になりました。たしかに障害者雇用は配慮すべき点が多いのですが、「ふだん、健常者に対して気遣っている点を言語化するだけ」と考えるとわかりやすくなります。最初から完璧にしようと思わず、不安を取り除いて助けてくれる専門職の方に相談しながら進めてください。一歩踏み出すには勇気がいりますが、その一歩は必ず会社の戦力になります。 ◆テレワークオフィスを利用している当事者の和田理哉さん 金塚 テレワークオフィスを利用しようと思ったきっかけは何ですか? 和田理哉(以下、「和田」) 転職を考えていた際に事務職を希望していたのですが、なかなか希望職種が見つからず、友人の紹介でテレワークオフィスを知りました。 金塚 テレワークオフィスのよいところを教えてください。 和田 見守り支援員の方がいてくれることです。ちょっとした相談に乗ってもらったり、調子がよくないときに声をかけてもらえる安心感が大きいです。あとはほかの利用者の方と仕事以外の時間にコミュニケーションをとれる点も気に入っています。 金塚 現在、働き続けてどれくらいですか? 和田 約5年になります。テレワークオフィスに来て3カ月くらいで就職しました。業務内容は調査報告書の作成をおもに担当しています。成果が目にみえる仕事なので、達成感や充実感を得ながら働くことができています。 金塚 見守り支援員の方には、どのようなタイミングで相談をされていますか? 和田 日々相談するほかに月に一度、定期面談があります。その際は仕事面と生活面の課題や目標の相談をしています。 金塚 今後、キャリアアップなどは考えておられますか? 和田 改善や効率化を見すえて、自ら動けるような働き方を目ざしています。具体的にはVBA(※2)の習得をして、仕事の幅を広げていくことを考えています。 まとめ  障害のある人が企業で働き続けるためには、就職という「入口」だけでなく、その先を支える仕組みが欠かせない。静岡県藤枝市で始まった「テレワークオフィス」は、その課題に地域ぐるみで挑む新しい就労支援の形である。  運営する静岡障害者就労企業交流会は、企業、福祉事業所、特別支援学校、行政など、多様な立場の人々を結びつけながら、障害者雇用の裾野を広げてきた。そのなかで生まれたテレワークオフィスは、福祉サービスでも一般企業でもない、「中二階」ともいえる場所だ。利用者はここで就労先の仕事に取り組みながら、働く力や自信を育み、一般就労へと歩みを進めていく。  この取組みを支えるのが「見守り支援員」の存在である。支援員は利用者の日々の体調や仕事の様子に目を配るだけでなく、受け入れる企業の相談にも応じ、双方の不安や課題をていねいにつないでいく。企業にとっては安心して障害者雇用を進められる環境となり、利用者にとっては困ったときにすぐ相談できる心強い存在となっている。  取材では、企業から「一人で抱え込まずにすむ」、「業務の質や生産性の向上にもつながった」といった声が聞かれた。一方、利用者は「相談できる人がいる安心感が働き続ける力になっている」と語り、仕事への誇りや成長を実感していた。テレワークオフィスは単なる就労の場ではなく、人と人との信頼関係を育みながら、企業で活躍できる人材を地域全体で育てる仕組みなのである。  障害者雇用は、一つの企業や一人の支援者だけでは成り立たない。地域の企業、福祉、教育、行政がそれぞれの強みを持ち寄り、一人ひとりの可能性を支えることで、新たな雇用の形が生まれる。藤枝市で育まれたこの実践は、「地域で支え、地域で働く」という理念を体現するモデルとして、ぜひ、全国へ広げていってもらいたい。 ※1 志太榛原(地域):静岡県の中西部に位置する島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市(まきのはらし)、吉田町(よしだちょう)、川根本町(かわねほんちょう)の4市2町をさす ※2 VBA:Visual Basic for Applicationsの略。Microsoft Officeアプリケーションの拡張(おもに自動化)に使用できるプログラミング言語 写真のキャプション 障害者就業・生活支援センターぼらんち 障害者就業・生活支援センターぼらんちセンター長の夏目芳行さん 「かがやきウィーク」で、参加者が多目的ネットの修理作業を体験している様子(写真提供:障害者就業・生活支援センターぼらんち) 「志太榛原を障害者雇用で輝かせる会議」の様子(写真提供:障害者就業・生活支援センターぼらんち) 一般社団法人静岡障害者就労企業交流会代表の福田次朗さん 「テレワークオフィス藤枝駅前」が入るビル テレワークオフィス藤枝駅前では、利用者が企業での勤務や体験訓練を行っている 株式会社日新環境調査センター総務部総務課係長の須永史子さん(写真提供:株式会社日新環境調査センター) 須永さんにはオンライン会議アプリでお話をうかがった テレワークオフィス藤枝駅前を利用し、株式会社日新環境調査センターで働く和田理哉さん 【P26-27】 省庁だより ハローワークを通じた「障害者の新規求職申込件数」が過去最高を更新 ─令和7年度障害者の職業紹介状況等─ 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課  厚生労働省は令和8年6月19日、令和7年度の障害者の職業紹介状況等の取りまとめを公表しました。  ハローワークを通じた障害者の新規求職申込件数は、令和6年度の26万8107件から、27万8136件(対前年度比3.7%増)となり、新規求職申込件数が過去最高だった令和6年度実績を上回りました。 〈ポイント〉(第1表) 〇ハローワークにおける障害者の新規求職申込件数は27万8136件で、対前年度比3.7%増、就職件数は11万5178件で、前年度比0.4%減となった。前年度に引き続き新規求職申込件数は増加したものの、就労継続支援A型事業所への就職件数が前年度に比べ減少したこと等の影響により、就職件数がわずかに減少したと考えられる。 〇就職率(就職件数/新規求職申込件数)は41.4%で、対前年度差1.7ポイント減となった。 〇ハローワークに届け出のあった障害者の解雇者数は3692人(前年度9312人)となり、解雇者数が大幅に増加した前年度から減少した。 〈産業別にみたときの特徴〉(第2表) ○産業別の就職件数は、「医療、福祉」(4万4683件、構成比38.8%)の割合が大きく、「製造業」(1万3375件、同11.6%)、「サービス業(他に分類されないもの)」(1万2633件、同11.0%)、「卸売業、小売業」(1万1135件、同9.7%)が続いている。 〈職業別にみたときの特徴〉(第3表) ○職業別では、「運搬・清掃・包装等従事者」(3万3991件、構成比29.5%)の割合が大きく、「事務従事者」(2万9874件、同25.9%)、「サービス職業従事者」(1万6628件、同14.4%)、「生産工程従事者」(1万2381件、同10.7%)が続いている。 第1表 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況(令和7年度) �@新規求職申込件数(件) 前年度比(%) �A有効求職者数(人) 前年度比(%) �B就職件数(件) 前年度比(%) �C就職率(�B/�@)(%) 前年度差(ポイント) 合計 278,136 3.7 379,909 △ 2.8 115,178 △ 0.4 41.4 △ 1.7 身体障害者 59,091 △ 1.9 98,639 △ 8.7 21,463 △ 5.5 36.3 △ 1.4 知的障害者 39,307 △ 2.7 51,867 △ 5.2 22,215 △ 1.0 56.5 0.9 精神障害者 165,316 7.9 213,202 0.6 66,580 1.6 40.3 △ 2.5 その他の障害者(注) 14,422 1.2 16,201 0.6 4,920 △ 0.4 34.1 △ 0.6 (注)「その他の障害者」とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等を保有しない者であって、発達障害、高次脳機能障害、難治性疾患等により、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者である。ただし、令和2年1月のハローワークシステム刷新により、障害者手帳を有する者も一部計上されている。 第2表 産業別就職件数(令和7年度) 産業 障害者計(件) 前年度比(%) 身体障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 知的障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 精神障害者(件) 前年度比(%) その他の障害者(件) 前年度比(%) 合計 115,178 △ 0.4 21,463 △ 5.5 7,827 △ 8.6 22,215 △ 1.0 3,303 △ 4.1 66,580 1.6 4,920 △ 0.4 農林漁業 1,151 9.6 205 26.5 70 59.1 228 △ 1.3 32 △ 11.1 661 10.0 57 1.8 鉱業,採石業,砂利採取業 34 △ 12.8 12 △ 20.0 5 0.0 6 50.0 1 − 14 △ 26.3 2 100.0 建設業 3,200 6.6 728 △ 2.5 224 △ 9.3 504 6.3 45 △ 8.2 1,826 11.8 142 △ 4.1 製造業 13,375 △ 0.3 2,085 △ 10.3 760 △ 13.1 3,500 2.4 483 2.8 7,156 1.3 634 3.4 電気・ガス・熱供給・水道業 152 9.4 42 5.0 13 △ 31.6 8 △ 27.3 1 △ 66.7 98 11.4 4 − 情報通信業 1,927 △ 6.4 284 △ 16.7 135 △ 23.7 230 9.0 34 △ 5.6 1,349 △ 7.4 64 28.0 運輸業,郵便業 5,116 11.8 1,269 △ 0.8 420 3.7 1,066 18.6 149 12.0 2,593 16.6 188 8.0 卸売業,小売業 11,135 △ 3.9 1,559 △ 11.6 549 △ 11.7 2,890 △ 1.2 379 △ 13.1 6,206 △ 3.1 480 △ 3.4 金融業,保険業 1,306 △ 4.2 325 △ 7.7 135 8.0 130 0.8 19 5.6 826 △ 3.1 25 △ 16.7 不動産業,物品賃貸業 1,305 3.9 285 △ 6.6 97 △ 11.0 147 △ 21.8 21 △ 30.0 802 14.2 71 16.4 学術研究,専門・技術サービス業 2,546 △ 1.7 430 △ 5.5 164 △ 5.7 312 △ 1.9 52 △ 1.9 1,677 △ 0.8 127 1.6 宿泊業,飲食サービス業 4,660 △ 5.1 864 △ 14.9 279 △ 20.5 1,253 △ 1.7 166 △ 7.8 2,370 △ 3.3 173 1.2 生活関連サービス業,娯楽業 2,281 1.8 452 3.2 156 11.4 449 △ 11.8 88 △ 7.4 1,280 5.8 100 20.5 教育,学習支援業 3,011 5.6 804 0.4 272 △ 7.5 375 12.3 73 19.7 1,719 6.2 113 16.5 医療,福祉 44,683 △ 2.2 7,206 △ 5.5 2,894 △ 7.2 7,980 △ 6.7 1,279 △ 8.2 27,567 0.7 1,930 △ 8.6 複合サービス事業 942 0.4 145 △ 24.1 43 △ 34.8 229 7.5 32 23.1 522 5.5 46 17.9 サービス業(他に分類されないもの) 12,633 4.1 2,769 △ 1.0 936 △ 8.1 2,596 9.0 420 9.1 6,746 3.3 522 22.2 公務・その他 5,721 △ 1.2 1,999 △ 2.7 675 △ 12.2 312 △ 17.5 29 △ 29.3 3,168 2.1 242 △ 5.1 第3表 職業別就職件数(令和7年度) 職業 障害者計(件) 前年度比(%) 身体障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 知的障害者(件) 前年度比(%) 重度(件) 前年度比(%) 精神障害者(件) 前年度比(%) その他の障害者(件) 前年度比(%) 合計 115,178 △ 0.4 21,463 △ 5.5 7,827 △ 8.6 22,215 △ 1.0 3,303 △ 4.1 66,580 1.6 4,920 △ 0.4 管理的職業従事者 65 3.2 20 △ 31.0 8 △ 33.3 2 △ 33.3 0 − 41 46.4 2 △ 33.3 専門的・技術的職業従事者 8,447 7.3 1,953 △ 3.2 861 △ 4.3 394 23.9 30 △ 26.8 5,552 11.1 548 1.7 事務従事者 29,874 1.6 6,543 △ 2.0 2,559 △ 7.0 2,501 △ 1.1 293 △ 11.7 19,518 3.2 1,312 2.7 販売従事者 4,452 0.7 562 △ 15.1 208 △ 17.1 1,239 4.1 161 12.6 2,431 2.6 220 11.1 サービス職業従事者 16,628 1.0 2,960 △ 5.1 937 △ 11.9 3,690 △ 1.6 543 4.2 9,237 4.3 741 △ 0.4 保安職業従事者 1,592 2.2 612 △ 5.1 164 △ 16.3 168 1.8 13 8.3 734 9.1 78 5.4 農林漁業従事者 3,017 △ 0.7 378 0.3 135 17.4 854 △ 1.2 170 11.8 1,669 △ 0.7 116 △ 1.7 生産工程従事者 12,381 △ 4.2 1,716 △ 12.1 631 △ 13.4 3,286 0.8 410 △ 9.3 6,764 △ 4.2 615 △ 4.7 輸送・機械運転従事者 3,410 2.4 1,449 △ 8.1 420 △ 11.8 164 △ 1.8 14 △ 6.7 1,624 14.8 173 0.6 建設・採掘従事者 1,321 5.4 265 △ 6.4 74 △ 8.6 307 10.0 24 9.1 693 8.1 56 12.0 運搬・清掃・包装等従事者 33,991 △ 3.7 5,005 △ 6.8 1,830 △ 7.7 9,610 △ 3.2 1,645 △ 6.3 18,317 △ 3.0 1,059 △ 5.2 分類不能の職業 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − 0 − ★本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート 中高年齢障害者の雇用継続を支える職場の取組 ―「中高年齢障害者の雇用継続支援及びキャリア形成支援に関する研究」の紹介― 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 1 はじめに  障害のある労働者の高齢化が進むなかで、中高年齢層の障害者が職場で力を発揮して働き続けるためには、障害者と事業主の双方を支える取組が重要となっています。  本稿では、当センター研究部門が2023(令和5)〜2025年度にかけて実施した「中高年齢障害者の雇用継続支援及びキャリア形成支援に関する研究」で得られた知見のなかから「加齢に伴いどのような職業生活面の困りごとが生じるのか」、「その困りごとに対し職場はどのような支援を行っているのか」に関する調査結果について紹介します。 2 経年的な変化に伴う困りごとにはどのようなものがあるか  2024年4月から5月にかけて、一般企業と特例子会社を対象としてWeb調査(以下、「事業所調査」)を行い、948件の回答を得ました。この調査では「経年的な変化(健康状態・体力や家庭環境の変化など)により、今までできていたことができなくなったために、何らかの支援や配慮を実施した従業員はいましたか」と質問したうえで、当該従業員がどのような困りごとを経験し、それに対して職場がどのような支援を行ったのかなどについて、あわせてたずねました。  まず、経年的な変化により支援や配慮を実施した従業員の年齢層を分析したところ、「45〜55歳未満」が24.1%と最も多かったものの、「35〜45歳未満」も16.2%を占めていました。この調査結果から、加齢に伴う就労上の支援や配慮のニーズは、30代の従業員にも一定程度存在することがわかります。  次に、具体的にはどのような困りごとがあり、その背景に何があるのかについて、経年的な変化により生じた困りごとを事例単位でたずねました。すると、報告された約半数の事例について「健康管理」や「生産性」が困りごとの内容として選択されていました。困りごとの具体的内容の例は表1に示しています。  さらに、困りごとの背景をたずねたところ、4割以上の事例について「疾病や障害の進行や不調を繰り返すなどの問題が生じるようになった」や「体力や運動能力などの問題が生じるようになった」が選択されていました。この結果からは、加齢による障害の重症化や身体機能の低下が職業生活における困りごとに関連している可能性が示されています。 3 困りごとに対し職場はどのような支援を行っているのか  経年的な変化により支援や配慮が必要になった従業員に対する職場からの支援状況をたずねたところ、4割以上の事例について「健康管理に関する配慮」、「就業時間や柔軟な休暇の取得に関する配慮」、「同じ部署内での業務内容の見直し」が選択されていました。なお、「業務内容の見直し」について、具体的にどのような変更を行ったかについては表2に示した通りです。変更の対象は「業務内容」そのものだけでなく、「業務範囲」、「業務の実施方法」、「業務の実施体制」、「業務場所」、「業務負担」と多岐にわたっていました。事業所は障害のある従業員の状況に合わせて柔軟に職務を再設計することで、本人がつちかってきた知識や経験を最大限に発揮できるように配慮しているといえます。  そして、このような支援の結果、約7割の事例で「課題が解決した」または「課題が一部解決した」と報告されていました。この調査結果からは、経年的な変化に伴う困りごとは職場からの支援によって一定程度解決できることがわかります。 4 相談しやすい職場風土の醸成が支援のカギ  では、このような支援を受けやすい職場はどのような職場なのでしょうか。  この研究では、35歳以上の障害の診断のある 従業員を対象としたWeb調査も実施しています。この調査では、回答者が働く職場が「従業員同士がお互いを理解し認め合い、信頼関係や情報共有に基づく協働が行われている職場」にどの程度あてはまるかという質問と、経年的な変化により仕事のパフォーマンスが低下したときに職場から受けたサポートの種類を問う質問の両方に答えてもらいました。  調査の結果、「従業員同士がお互いを理解し認め合い、信頼関係や情報共有に基づく協働が行われている職場」にあてはまる程度が高い職場で働いていた回答者の方が「上司や同僚への理解促進」、「職務内容の見直し」、「作業環境・設備の整備」といった支援が得られている割合が高いという結果が見られました。  この調査結果からは、従業員が困りごとを相談しやすく、上司や同僚と一緒に解決策を考えられる職場風土が、加齢に伴って生じる職業生活上の困りごとへの支援や配慮につながっている可能性がうかがえます。例えば、体調の変化や作業のむずかしさを早い段階で相談できれば、職場は勤務時間の調整、作業方法の工夫、業務内容の見直しなどを検討しやすくなります。なかでも業務内容の見直しは、単に仕事を減らすことではなく、本人の経験や能力を活かしながら、現在の状況に合った役割を考える取組です。そのためには、従業員本人のキャリアに関する希望と、雇用者が期待する役割をすり合わせ、必要な調整について率直に話し合える関係性を築くことが重要といえます。 5 最後に  本研究の調査研究報告書(※1)には、上記で紹介した事業所調査、障害者調査の詳細な結果のほか、障害者就業・生活支援センターを対象とした調査の結果や中高年齢障害者の雇用管理事例に関するインタビュー調査の結果を掲載しています。また、調査で収集した中高年齢障害者の雇用管理事例を収録した事例集(※2)も公開しております。ぜひご活用ください。 ※1 調査研究報告書No.186「中高年齢障害者の雇用継続支援及びキャリア形成支援に関する研究」 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku186.html ※2 マニュアル、教材、ツール等 No.88 「取組事例から学ぶ『中高年齢障害者の雇用継続・キャリア形成支援』のポイント〜活き活きと長く働ける環境づくりのヒント〜」 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai88.html 表1 経年的な変化による困りごととその内容の例 困りごと 具体的な内容の例 健康管理 ・急な体調不良で休みがちになった ・経年とともに体力の低下や体調変化(血圧・疲労の蓄積等)が見られ、仕事を休むことが増えてきた 労働能力・生産性 ・業務(清掃)での所要時間がだんだん長くなってきた ・ケアレスミスの増加 労働条件 ・体調悪化による労働日数変更 ・通勤困難 職場の人間関係 ・コミュニケーションがとりにくくなってきた ・些細なことでイライラし他の従業員とトラブルになった 就労選択 ・経年とともに健康への配慮や相談を行うことが多くなり、ご本人より就労継続支援B型事業所への変更の意向が確認された 表2 仕事のパフォーマンス低下への対応としての職務再設計の例 類型 変更前 変更後 業務内容の変更 運搬→清掃 見回り業務→受付業務 生産ライン業務→パソコン作業・掃除・軽作業 事務作業への変更 設計業務、外部業者との交渉→内部の事務作業 自動車整備→一般事務 機械オペレーター→パソコン作業 業務範囲の変更 清掃作業→清掃作業の中で、同一作業の時間を増やした 生産〜出荷までの一連業務→移動や選別業務はなくして、単純作業のみ 事務全般にて、データ入力の他、電話応対も→データ入力メインにて、電話応対は実施しない 業務実施方法の変更 出張健診における事務補助(立ち仕事)→事務所内で着座にてできる事務補助 清掃業務→雑巾を使う内容をなくした 業務実施体制の変更 単独で行う業務→健常者と一緒に取り組む業務 製造ラインでの業務→1人工程 業務場所の変更 畑での農作業→室内で栽培できる作物の栽培、出荷準備 出社しないとできない業務も一定数あり→基本的に在宅勤務で処理できる業務のみを抽出 全ての受注先からの交通誘導業務→トイレに配慮した現場での交通誘導業務 業務負担の変更 コミュニケーションを必要とする清掃作業→作業が定型化している清掃作業 納期のある業務→納期のない業務 管理職として顧客からのクレーム対応を行う→本人の希望により管理職を解き、管理部門での対人業務の少ない業務とした 写真のキャプション マニュアル、教材、ツール等 No.88 「取組事例から学ぶ『中高年齢障害者の雇用継続・キャリア形成支援』のポイント 〜活き活きと長く働ける環境づくりのヒント〜」 ◇お問合せ先 研究企画部企画調整室 (TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 【P30】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 障害福祉サービス事業者等の指定のガイドラインを作成  厚生労働省とこども家庭庁は、障害福祉サービス事業者の質の確保や向上を目的に「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」を作成し、都道府県や政令指定都市などに通知した。  ガイドラインでは、指定事務を行うにあたって指定権者が遵守することが望ましい指針を示すとともに、質の向上に向けた効果的な取組事例や、いわゆる総量規制・意見申出制度といった指定事務に関連する制度の具体的な活用方法を示している。また、「特段の知識等がなくとも事業所の運営は可能であり、高収益が実現できる」などと安易な事業所開設を勧誘する不適切な行為を把握した場合は、厚生労働省・こども家庭庁へ情報提供するよう協力を要請している。詳細は左記の厚生労働省ホームページまで。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74046.html 働く 全国 発達障害・精神疾患の診断受けた人の就労実態調査  公益財団法人日本財団(東京都)は、発達障害・精神疾患の診断を受けた人を対象に、就労に関する困難の実態や背景を把握するために実施した調査の結果を公表した。  対象は、発達障害・精神疾患の診断があり、2018(平成30)年4月1日以降の国内就労(就労継続支援の利用を除く)・就職活動の経験がある人で、全国発達障害者連絡会議や一般社団法人精神障害当事者会ポルケ(東京都)、特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構・コンボ(千葉県)などの周知でオンライン回答した664人。  調査結果によると、就労中に診断を受けても「職場の誰にも伝えていない」人は37.6%で、理由(複数回答)は多い順に「差別・偏見が怖いので」が52%、「組織が理解もサポートもしてくれないと思うから」(43%)、「キャリアへの影響が心配だから」(38%)となった。また「発達障害や精神疾患への差別的な言動を職場で見聞きしたことがある」は55%だった。  診断について「人事が把握できる形で伝えた」(31.8%)、「上司に伝え、人事など職場が把握しているかどうかは不明」(22%)などと回答した人は、その影響(複数回答)について多い順に「理解やサポートを得られた」(36%)、「自分の力を十分発揮できない(仕事を任せてもらえないなど)」(20%)、「社内で孤立した・特別扱いされた」(13%)だった。  回答者でもっとも多かった診断名(複数回答)は自閉スペクトラム症(ASD)(50.8%)、注意欠如・多動症(ADHD)(48.8%)で、このうち6割以上が発達障害以外の精神疾患の診断も受けており、多かったのは適応障害(70.8%)、うつ病(64.7%)だった。  詳細は左記の日本財団ホームページで公開している。 https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2026/20260722-123730.html 千葉 森林再生目ざす「林福連携」  山林の伐採・造林・維持管理を手がける株式会社EG(イージー) Forest(フォレスト)(以下、「EGF」)(富里市(とみさとし))が、社会福祉法人槇(まき)の実会(みかい)(香取郡(かとりぐん)多古町(たこまち))との林福連携プロジェクトを本格始動した。県内の森林で問題となっているスギの病害木を地域資源として有効活用しながら、福祉施設の利用者が働く機会を創出するとしている。  このプロジェクトでは、EGFが伐採加工し た木材を、槇の実会が運営する通所施設「久賀(くが)福祉センター」の職員が機械で薪用の大きさにし、利用者が箱詰めや結束、運搬、保管などの作業を担当する。できあがった「千葉の薪」は県内のキャンプ場などで販売されるほか、富里市の「ふるさと納税返礼品」にも採用されている。 東京 日視連が鍼灸マッサージ修練所を開所  社会福祉法人日本視覚障害者団体連合(以下、「日視連」)(新宿区)が、「あはき(あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう)」の資格を持つ視覚障害者を対象にした、就労移行支援事業所「鍼灸マッサージ修練所」を開所した。あはきの仕事に就くことを希望する視覚障害者に対し、一般就労に必要な知識の獲得、あはきの技能向上に必要な訓練を行うほか、ハローワークにおける求職登録など就職活動を支援する。  支援の対象者は、原則18歳以上65歳未満の視覚障害者で、あん摩マッサージ指圧師、はり師、またはきゅう師の国家資格を持ち、就労移行支援について障害福祉サービス受給者証の交付を受けている人。定員10人で利用は原則2年以内。臨床経験を積めるよう施術用のベッド5台を備えた。全国から利用者を受け入れられるようグループホームの整備も検討している。詳細は左記の日視連のホームページまで。 http://nichimou.org/all/news/divisionnews/202606-jigyou/ 福岡 九電の特例子会社が屋内型水耕栽培  九州電力株式会社(以下、「九電」)の特例子会社である株式会社Q(キュー)−CAP(キャップ)(福岡市)が、屋内型水耕栽培事業を開始した。  九電の本店が入る電気ビル本館(福岡市)地下4階の旧社員食堂の一部を改装し、新たに屋内型の水耕栽培施設“水耕栽培センター”を開設。障害のある従業員10人を新規雇用し、管理者・支援者2人を含む12人体制で事業を運営する。  栽培スペースは約140�uで、栽培ラックを20基設置。グリーンリーフなど数種類の葉物野菜を無農薬で育てる。週800〜1000株の出荷を目ざし、九電グループの従業員向けに販売するとともに、スーパーマーケットやホテルなどにも販売する予定としている。  Q−CAPは2004(平成16)年、九電と福岡県の民間放送5局などが共同出資で設立し、これまで放送用字幕制作事業、ビジネスサポート事業、被服管理事業、ヘルスサポート事業などを実施してきた。 本紹介 『ウェルビーイングをめざす 新しい発達障害学入門―理解から支援へ』  東京未来大学こども心理学部教授の藤本(ふじもと)昌樹(まさき)さんが、『ウェルビーイングをめざす 新しい発達障害学入門―理解から支援へ』(北樹出版刊)を出版した。  本書では、発達障害の国際的なとらえ方や目ざす方向を示しつつ、発達障 害学の基礎、脳や心理の発達、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥障害・多動症)、SLD(限局性学習症)など神経発達症群の特徴や診断体系を解説。さらに、感覚・情緒・行動の関連や二次的困難の形成過程を整理し、アセスメントの考え方や活用法、環境調整、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などの支援法を紹介。加えて、強みに基づく支援やウェルビーイング、多職種連携、教育・家族支援まで幅広く取り上げ、「適応」から「よりよく生きる」ことを目ざす支援のあり方を示している。A5判、176ページ、2420円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2026年度地方アビリンピック開催予定 10月〜11月 北海道、青森県、千葉県、神奈川県、山梨県、石川県、滋賀県、山口県、大分県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 第46回全国アビリンピックは12月4日(金)〜12月6日(日) に、愛知県で開催されます。 地図文字 北海道 青森 千葉 神奈川 山梨 石川 滋賀 山口 大分 【P31】 ミニコラム 第59回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は金塚委員が執筆しています。ご一読ください。 「仕事を支える」と「気持ちを支える」 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事長・事務局長 金塚たかし  仕事で最高のパフォーマンスを発揮したい。しかし、毎日100%の力を出し続けることはむずかしいもの。だからこそ、自分自身の体調を整える努力と同時に、力を発揮しやすい環境が必要です。人は能力だけで仕事をしているのではなく、その日の体調や気持ち、人間関係にも大きく左右されるものです。  今回取材したテレワークオフィスの利用者のみなさんは、仕事をする力を持たれている方々であるが、不安や緊張、環境への適応のむずかしさから、一般企業ではその力をすぐには十分に発揮できない人たちです。その能力を引き出していたのが、「見守り」と呼ばれる専任の支援員でした。私は企業に障害者雇用をお願いする際、合理的配慮の一つとして「キーパーソン」の配置をお願いしています。企業からは「就労支援の経験者はいません」、「だれが適任なのでしょうか」と質問されることがあります。そのたびに私は、「安心して相談できる人を」とお伝えしています。キーパーソンに必要なのは、専門的知識や支援技術ではありません。誠実に話を聴き、本人と職場をつなぐことができる人柄です。仕事の相談がしやすく、「困った」、「不安だ」と素直にいえる相手が職場にいることが、精神障害や発達障害のある人にとっては何よりの支えになります。  これは障害のある人だけの話ではありません。私たち自身も、信頼できる上司や同僚がいるからがんばれることがある。仕事を教えてくれる人も大切ですが、落ち込んだときに声をかけてくれる人の存在は、それ以上に大きな力になります。  障害者雇用は「特別な配慮」の話として語られることがあります。しかし、その本質は、だれもが安心して働き、自分らしく力を発揮できる職場づくりにあります。「仕事を支える」ことと「気持ちを支える」こと。この二つが両輪となったとき、人は本来の力を発揮し、職場全体の生産性も高まっていくのではないでしょうか。 【P32】 掲示板 障害者職業訓練推進交流プラザのご案内 〜障害者の職業能力開発にかかわるみなさまへ〜 参加費 無料 今年度はテーマ別意見交換を実施! 日々の業務で直面する課題をテーマに実践的な情報交換を行います。 開催日時:2026(令和8)年11月6日(金)10:00〜16:30 会場:障害者職業総合センター(千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3) 開催方式:ハイブリッド方式(オンライン:Microsoft Teamsを使用) 障害者職業訓練推進交流プラザ 検索 ※内容およびお申込み方法については、確定次第JEEDホームページに掲載しますので、ぜひご覧ください。 【お問合せ先】 職業リハビリテーション部指導課 広域・職業訓練係 TEL:043-297-9030 E-mail:ssgrp@jeed.go.jp 読者アンケートにご協力をお願いします! ※カメラで読み取ったリンク先が「https://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete」であることをご確認ください。 回答はこちらから→ 次号予告 ●私のひとこと  明星大学人文学部福祉実践学科准教授の縄岡好晴さんに、障害のある方の就労支援のなかで、テレワーク就労支援についての現状と課題についてご執筆いただきます。 ●職場ルポ  社会福祉法人陶都会が運営する介護老人福祉施設ドリーム陶都(岐阜県)を訪問。企業在籍型ジョブコーチらの細やかな支援体制によって、障害のある職員たちがシーツ交換などの介護補助業務で活躍する取組みを取材しました。 ●グラビア  宮崎県延岡市発祥のラーメン店を全国展開する株式会社桝元の辛麺屋桝元原田店(福岡県)を取材。開店準備やランチタイムの調理を担当する障害のある従業員の活躍をお伝えします。 ●編集委員が行く  前原和明編集委員が、筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局(BHE)(茨城県)を訪問。BHEの理念および取組みを担当者に取材し、障害者雇用における「雇用の質」を高めるための取組みの視点について紹介します。 メールマガジン 好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba あなたの声をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 古屋勝史 編集人−−企画部次長 石井伸明 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ★発送先の変更などについては、上記のメールアドレスまでご連絡ください。 ●編集委託−株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 電話 03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 10月号 令和8年9月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 聖学院大学 准教授 石原まほろ ATUホールディングス株式会社 代表取締役 岩�ア龍太郎 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事長・事務局長 金塚たかし 弘前大学大学院 教育学研究科 教職実践専攻(教職大学院)教授 菊地一文 株式会社旭化成アビリティ 代表取締役社長 清水裕之 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 筑波大学 人間系 教授 前原和明 武庫川女子大学 准教授 増田和高 国際医療福祉大学 准教授 若林功 【P33】 右下のホームページ もしくは下の2次元コードから参加申込みをお願いします。 入場無料 第34回 職業リハビリテーション 研究・実践発表会  JEEDでは、職業リハビリテーションの研究成果を広く周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を行う場として「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を毎年開催しています。  この発表会では「特別講演」、「パネルディスカッション」、分科会形式による「口頭発表」、「ポスター発表」を行います。ぜひご参加ください。 2026(令和8)年 11月4日(水) 5日(木) 会場 東京ビッグサイト会議棟(東京都江東区有明3-11-1) 事務局:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 研究企画部企画調整室 〒261‐0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 TEL:043-297-9067/Mail:vrsr@jeed.go.jp HP:https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/vrhappyou -index.html 11月4日[水] ◆基礎講座 職業リハビリテーションに関する基礎的事項等に関する講義 「精神障害の基礎と職業的課題」「『就労支援のためのアセスメントシート』を活用したアセスメント」 ◆支援技法普及講習 職業センターで開発した支援技法の紹介 「高次脳機能障害者の自己理解を進めるための支援技法の開発」 「就労支援における発達障害者との相談スキルのチェックリスト」 ◆特別講演 「『個別支援』から『組織設計』へ ―小規模企業でもできる、企業と福祉をつなぐ組織設計の仮説検証―」 岩�ア龍太郎氏(ATUホールディングス株式会社 代表取締役) ◆パネルディスカッション�T 「障害者雇用がもたらすもの 〜取組の先にある価値は何か?〜」 11月5日[木] ◆研究・実践発表(口頭発表・ポスター発表) 研究者、企業関係者などが研究成果や実践報告などを発表します。口頭発表は、障害者雇用に関するテーマを設定した分科会ごとに登壇形式で行います。 ポスター発表は、テーマごとに発表者が自作のポスターを展示し、参加者と直接意見交換を行います。 ◆パネルディスカッション�U 「発達障害のある方のキャリアを考える〜そのニーズと就労支援の取組〜」 【裏表紙】 第46回 全国アビリンピック 同時開催 障害者ワークフェア2026 〜働く障害者を応援する仲間の集い〜 入場無料 2026(令和8)年12月4日(金)〜12月6日(日) 12月4日(金) 開会式 12月5日(土) 技能競技および障害者ワークフェア 12月6日(日) 閉会式 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 開催場所 愛知県国際展示場AICHI SKY EXPO 全国アビリンピック  アビリンピックは、障害のある方々が日ごろ職場などでつちかった技能を競う大会です。  第46回全国アビリンピックでは、全25種目の技能競技を実施します。全国各地から400人を超える選手たちが集い、それぞれの技能を披露し、競技に挑みます。 障害者ワークフェア  障害者ワークフェアでは、「働く障害者を応援する仲間の集い」として、約100企業・団体による出展を予定しています(能力開発、就労支援、職場紹介の三つのエリアによる展示・実演のほか、技能デモンストレーション、ステージイベント、各種特設コーナーなど)。 当日はライブ配信も予定しています! アビリンピック 検索 国際アビリンピック・ヘルシンキ大会 日本代表選手への応援メッセージを大募集!!  2027年5月に開催される第11回国際アビリンピックに出場する、日本代表選手17種目32名が決定! X、Instagram でも関連情報を掲載しています! フォロー&リポスト&シェア大歓迎♪ 写真のキャプション (競技種目)製品パッキング (競技種目)ネイル施術 技能デモンストレーション 障害者ワークフェア 10月号 令和8年9月25日発行 通巻588号(毎月1回25日発行)