働く広場増刊号2013
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8「働く広場」増刊号 2013就職件数の35%が精神障害者松矢身体障害者の雇用義務が始まって、1987(昭和62)年の法改正で、いわゆる「障害者雇用促進法」となり、知的障害者の算入(カウント)が翌年4月に始まりました。画期的な法律改正でした。職業リハビリテーションが行きわたり、やがて重度障害者についてはダブルカウント(2倍で算入)されるようになりました。それから約10年で知的障害者を雇用義務の対象に加えるようになりました。その次の10年というのは非常に重要でした。その間に、障害者就業・生活支援センターやジョブコーチなどの施策ができました。私自身も「働く広場」の編集委員を務め、雇用義務の対象とするときには審議会の委員でした。次に2006(平成18)年から精神障害者のカウントが始まり、今回の法改正で、2018年度から法定雇用率の算定基礎に加えることになりました。この法律改正の意義をお話しいただけますか。藤枝身体障害者の雇用義務化から始まって、知的障害者にその対象が拡大され、2005年の法改正で精神障害の方も実雇用率の算入が可能になりました。そしてこの10年の間に、精神障害の方の就職件数、雇用者数が非常に伸びています。ハローワークの窓口で就職される方の割合を見ても、10年近く前は身体障害者が圧倒的に多かったのですが、いまや就職件数でいくと、精神障害のある方が全体の35%ぐらいを占めています。企業の取組みはもちろん、精神障害の方自身の働きたいという意欲の高まり、また社会の理解も進んで、精神障害者を受け入れる環境が、この10年で急速に整ってきたのかなと感じています。松矢4月から法定雇用率が2%に上がったということで、いつから雇用義務の対象とするかということでは、だいぶ議論があったようですね。法定雇用率が2%に上がると、これまで達成していた企業も法定雇用率が達成できなくなるし、精神障害者にはとても対応できないという意見があったようです。藤枝事業主のご心配というか、これまで障害者雇用の経験のない企業もあるなかで、急に多くの障害者の方を雇うというのは、現実的には難しいという声もありました。労働政策審議会の議論をふまえ、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えるのは2018年、次回の雇用率改定のときにスタートさせるという結論になりました。加えて実際に雇用率を決めるにあたっては、施行後5年間は、精神障害者の追加による引き上げ分は計算式どおりに引き上げないことも可能という仕組みになっています。ただ、2018年を迎えるにあたっての雇用率をどう考えるかは、改めて労働政策審議会で議論をしていただく話ですので、現時点で決まっていません。法定雇用率改正と精神障害者雇用松矢 雇用促進法が精神障害まで入れたという特別対談これからの精神障害者雇用を考える8「働く広場」増刊号 2013法定雇用率の算定基礎に精神障害者数を加えるなどの制度改正を受けて、「精神障害者の雇用」に焦点を当て、厚生労働省障害者雇用対策課・藤枝課長と本誌・松矢勝宏編集委員に、法改正のポイント、精神障害者雇用の意義、今後の展望などについて語っていただいた。松矢勝宏 氏厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課長東京学芸大学名誉教授本誌編集委員会座長藤枝 茂 氏×松矢勝宏 氏

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