働く広場増刊号2013
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10「働く広場」増刊号 2013定着支援とジョブコーチ松矢 都立高校のモデル校では、東大の精神科と連携して精神保健検査をすべての新入生に行っています。面接もして、生徒の精神保健をきちんと支えていこうというねらいです。発達障害や精神障害が疑われる生徒に、学習や生活面の「困り感」に対して具体的な支援を校内委員会で講じていく。このような支援によって障害を疑われる生徒たちがニートになる可能性は低くなるだろうと考えられます。生徒本人の了解を得れば、進学先の大学との連携も可能になります。私は精神障害の統合失調症とか、うつ病の方々の従来型の課題と、発達障害や精神障害が疑われる若い人たちへの対応について、ハローワークの連携がきちんと中核に入っていただくことで、教育行政も協力していく。そのように進んでいくことを、期待しているのです。藤枝 ハローワークの障害者専門の窓口ではなく、一般の窓口に来られた方のなかで、職業相談の過程で、発達障害や精神障害が疑われる場合もあります。ご本人の障害に対する認知の問題もあって、窓口でも悩みながら試行錯誤しているところです。障害者であることをオープンにして就職活動をするメリットなどをていねいに説明して、ご本人の納得を得たうえで対応するようにしています。松矢 障害のある方たちの雇用促進では、就職の次は定着が大きな課題です。ジョブコーチ制度、障害者就業・生活支援センターなどがありますが、その充実についてはどうお考えでしょうか。藤枝 まさに職場にいかに定着させるかが、次の課題です。いわゆるジョブコーチ、職場適応援助者の制度が重要になってきます。既に企業で障害者雇用を担当しておられる方々にもジョブコーチとしての能力をさらに身につけていただくことが、定着を図っていくためには有効です。ジョブコーチの研修を受けていただけるような働きかけを行っていきたいと思っています。専門の担当者を置けないような中小企業向けには、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなどの支援機関が支えていくことが重要だと思っています。松矢 精神障害者の定着支援では、企業も相当努力されています。2012年の日本職業リハビリテーション学会で、大手銀行の子会社の社長だった方が報告されました。その会社に就職された8人の精神障害者の個別資料をきちんと整え、勤務時間も短時間から入り、段階的に可能な限り長時間勤務できるようにしていったそうです。この会社の就労定着のポイントが4つ。一つは「短時間制度の導入」。ここがスタートです。それを順調に本人の希望するレベルに上げていく。二つめは「精神科や精神保健福祉の定期的なカウンセリング」です。次に重要なのは、「趣味とストレス解消法」なんですね。職場の勤務時間だけでなくて、趣味とか余暇の活用を重視して、いろいろ配慮されている。さらに「受入れ体制の構築」。精神障害者の理解を全社的にやるという、企業でも個別の支援計画に近い形で、精神科医や精神保健福祉士の方々のサポート、健康管理を重視していました。藤枝 精神障害者雇用に理解のある企業に対して、助成金制度を充実させています。現在でも精神障害者等雇用安定奨励金といって、企業の取組みとして精神障害のある方のためのカウンセリング体制を整えたり、相談機関に委嘱したり、また体調管理などに対応できるような体制を整えた企業に対する助成制度、奨励金を支給する制度などもあります。また、ジョブコーチを配置した場合の助成などもあります。企業で働きやすい職場を整備していただくための支援を、一層充実させていきたいと思っています。まず「働く広場」を松矢 「働く広場」の啓発誌としての果たす役割について話を進めていきたいと思います。本誌は本来、事業主の方々に障害者を雇用することへの理解と啓発という目的を持っています。それから本誌の特色は、働いている障害者本人が主役になって登場してくるということです。私は本誌に関わって30年近くなります。本誌に登場する障害者の方たちのほとんどが匿名ではなく、自分の名前を出してくれるようになりました。かつてはAさん、Bさんといった時代もありましたが、最近は知的障害の方も精神障害の方も了解してくれています。藤枝 私が障害者雇用対策課長に着任して、手10「働く広場」増刊号 2013特別対談これからの精神障害者雇用を考える

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