働く広場増刊号2013
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14「働く広場」増刊号 2013会社敷地内で保育園の経営をしている。そのことも障害者雇用につながっているという。「父は『子どもが宝だ』と、社員の子どもを大事にしていました。父の姿を見ていて、障害のある人たちを雇用していくのが私の運命なのかと思いました。設立当初は障害者雇用について何もわからなかったので、心臓疾患の人を採用して運送の仕事をしてもらいました。当時、彼は90キロぐらいの体格でしたが、いまはスマ―トになって心臓もよくなっていますよ」その後、障害者の集団面接会で身体障害者を2人採用した。2008年に精神障害者を3人雇用したことが、障害者雇用への考え方を大きく変えた。「たまたま受注した車の部品の仕事がとにかく大変でした。価格が安く、数が多い、品質も非常に厳しい。1つ不良品が出れば全部を検査しなくてはならない。健常者が簡単な作業を集中し続けるのは難しくて、不良品が続出しました。こういう作業ができるのはどんな人たちだろうと考えて、障害者施設を紹介してもらい、そこで作業をしている人たちのなかから3人採用しました。精神障害者の雇用が難しいなどとは考えていませんでしたし、知識もありませんでした。任せてみたらパーフェクトだったのです」その3人は、いまも働き続けている。「私たちは、たまたまよく働く障害者と出会ったのだと思っています。最初は苦労もしましたが、『障害者雇用のマニュアル』もありません。うち独自のやり方でやってきました」特別視せずそれぞれの才能を見つける 「雇用をしたら企業の責任」と考える板垣さんは、一人ひとりに合わせて仕事を教えてきた。「障害のあるなしで分けることはありません。配慮はしますが、特別視することはありません。健常者でも難しい勉強会に、知的障害者も一緒に参加します。わからなくても、そういう雰囲気を経験するためで、参加することに価値があると思っています。精神障害者は行事に対する抵抗があったので、最初の1回だけは不参加を認めましたが、あとは参加です。会社に入ったら、仕事は違ってもみんな一緒。同じ目線で接しています」社是は、「創意・熱意・誠意」。工場内には「変えよう!思考」、「変わろう!行動」、「変えろ!結果」の文字が目立つ。入口の壁には従業員全員の顔写真入りで、ふりがな付きの一覧表がある。「上に立つ人たちには、『できないのが悪いのではなく、やらせられないお前が悪い』といいます。仕事ができるようになるにはどうしたらいいかを考え、わかりやすく作業指導をして、作業ができるような補助具を作る。それぞれ違う個性に対して、やれる方法を根気よく見つけ出しています。ひとくちに知的障害といっても、漢字が読める人、読めない人などさまざまです。同じ作業でも、つまずくところは一人ひとり違います。本人と話しながら、それぞれに応じた作業指導書を作っています」板垣さんは、各人にどんな才能があるのかを見つけるのがおもしろくて仕方がないそうだ。「固定観念があるから難しいと身構えるわけで、教え込めば発達障害や知的障害のある人たちは100%素晴らしいものづくりができます。その仕事を探すのはわれわれの仕事です。それを大変だと思ったらできない。興味がないと障害者雇用は難しいでしょう。私は、素晴らしアイテックス(上)と、その工場内にある特例子会社アイコール(下)

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