働く広場増刊号2013
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17「働く広場」増刊号 2013べると、作業ペースは2倍に上がったという。「細かい仕事ではないのですが、1日何万個も作るので、不良が出るとすべて検査しなければなりません。そのリスクは大きいですね。簡単な仕事ほど難しいんです」立上げにあたっては、特別支援学校で障害者の介助員をしていた多賀尚美さんを指導員として採用した。「具体的な数字の目標を設定しないと、ペース配分ができないところに苦労しました。1日の目標が2千個なら、カウンターを20個1セットにして、100回押したら2千だと教えました。できる人とできない人の差があるので、できる人のやり方をお手本に仕事を覚えていくようにしました。『あなたは何個』とその日に作る数をグラフにしたら、自分の目標がわかるのでわりと安定しています。気をつけているのは体調管理です。気持ちの浮き沈みがあるので、やる気の出ないときにどうしたらやる気を起こさせるかが課題ですね」 障害者には力があると発信したい社長の板垣さんは、障害のある人たちと本音でぶつかり本気で叱る。「障害のない社員には、『特別視はしなくていいけれど配慮はしてくれ』と話しています。同じことを何回も聞かれたりすると、面倒くさいなと顔に出る若い社員もいます。そうすると、障害のある人が感づいて落ち込んだりします。そのときは、『対応は大変だと思うけれど、将来きっと自分のためになる。わかるまで何度も教えるんだよ』と個人的に話しています」障害者の作業を工夫することは、会社のプラスになるとの実感がある。「健常者がやりづらいことは、障害者は何倍もやりにくい。作業の工夫をしただけ勉強になっています。そこがアイテックスの強みかもしれません。仕組みが簡単になると間違いがなくなって、会社全体の効率を上げ、結果として会社を成長させていくと思います」2011年の特例子会社の設立には、障害者雇用への決意を込めた。 「9%の雇用率でしたので、雇用率のためではなくて、障害のある人でもやれると発信したかったことと、障害者雇用の本気度を示したかったのです。今後も、障害のある方をどんどん増やしていくためには、製造業プラスアルファの仕事が必要だと考えています。能力と適性に応じた雇用の場があれば、障害があっても自立した生活を送ることができるような、社会の実現を目指したいですね」「けっこう適当。でも神経質なんですよ」と自らいう板垣社長は38歳。会社を設立してから10年余。この1年半、経営環境はさらに厳しくなったという。「下請けですから経営は大変です。自社で作り上げていくものがないと難しいと思っています。障害者でラインを立ち上げていますが、やればできる。障害者の雇用によって、海外に流れる仕事を阻止したいですね。これからやりたいことはいっぱいあって……。障害者で働けない人がまだまだたくさんいますので、製造業とは違った分野で障害者雇用を伸ばしていきたいとか、学校の延長のような教育に取り組みたいとか、高齢者をターゲットとして障害者が関わる事業をしたいとか、具体的にはまだですが、いろいろ考えています」障害者が作業できるように考えるのが楽しい! 障害者は素晴らしい能力を発揮できる! 障害者雇用に大変前向きな、若い企業にエ―ルを送りたい。指導員として活躍する多賀尚美さん

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