働く広場増刊号2013
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19「働く広場」増刊号 2013ほとんどのホームヘルパーが精神障害のある人たちというユニークな居宅介護支援事業所、有限会社サポートセンター「れいめい」は兵庫県姫路市の北、香こう寺でら町にある。JR播ばんたん但線香呂駅のすぐ近く、「れいめい」のホームヘルパー利用者は近所のお年寄りや身体障害のある方々が多い。2004(平成16)年9月に設立された「れいめい」は、現在20カ所ほどの利用者を抱えている。職員15名のうち10名が統合失調症やうつ病といった精神の障害のあるヘルパーで、利用する人たちからは名指しでオーダーがくるほど好評だという。精神障害のホームヘルパー?「精神障害の人がホームヘルパー? そんな仕事ができるの?」とか、「訓練をして資格を取っても、その人たちにヘルパーとして介助を頼む人がいるの?」といった疑問をもつ向きも少なくない。お年寄りと精神に障害のある人たちは、その緩やかなテンポがマッチしていて相性がいいので、以前から高齢者の給食宅配事業などでも成果を上げている。また、介護施設で働いている障害者も少なくない。しかし、個人宅でのホームヘルプの仕事はなかなか敷居が高いに違いない。「れいめい」も設立当初から精神障害者のヘルパーがいたわけでない。たまたま障害を隠して働いていた人がいた。代表取締役の野村浩之さんはその人の様子を見て、精神障害のある人でも、「ひょっとしたらこの仕事、いけるかもしれない」と感じたという。かつて建築関係の仕事をしていた野村さんは、精神病院で働く作業療法士の友人に頼まれて、ある入院患者にガラス・サッシの仕事の手ほどきをしたことがあった。こういう人たちのために「何か」できないかと考えたのが、精神障害者の就労と関わるきっかけだった。社適訓練から、いまや主任に「れいめい」の精神障害のあるホームヘルパー第一号は高橋琢みがくさん。ヘルパー歴丸6年の主任で、ヘルパー事業所開設の資格も持つ52歳のベテランだ。統合失調症だが、みんなが苦手な早朝や真冬の仕事にも心強い戦力である。野村さんが県のジョブコーチとして、違う職場の支援に入っていたときに出会った。麺づくりの現場で働いていた高橋さんは仕事が覚えきれず、四苦八苦していた。高橋さんはおっとりした人柄。野村さんからヘルパーの仕事をすすめられた。短い時間の精神障害者社会適応訓練事業(社適訓練)からということで、当初1週間に1回、1時間程度の訓練から始め、徐々に時間を延ばして仕事に慣れていった。3年(当時)の訓練中にヘルパー2級の資格を取得した。「れいめい」ではほとんどのメンバーが社適訓練期間中に毎週2回の講習に通い、この資格を取っている。ヘルパーの仕事は、掃除・洗濯・食事作りが基本だが、訓練生にはそうした家事には不慣れで自信のない人が多い。台所のガスコンロの火の付け方や目玉焼きの作り方から教わることも少なくない。「サポートセンターれいめい」の野村浩之代表取締役(左)と小林真理子サービス提供責任者精神障害のある「れいめい」のホームヘルパー第1号、高橋琢さん。ヘルパー歴丸6年になる① ステップアップ雇用から本格的雇用へ② 社適訓練中にヘルパーの資格を取得③ キャリアサポーターの支援で職場定着POINTPOINTPOINT(2012年12月号掲載、内容は当時のまま)

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