働く広場増刊号2013
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21「働く広場」増刊号 2013りして教えてやらなきゃ」と首を長くして、笑顔の赤藤さんの訪問を待っているのだという。こうした支え合いのなかで育った赤藤さんは、いつしか自信をつけて、将来は障害年金を受けずに自分で稼ぎたいと思っている。次は「お嫁さんをもらうこと」と、みんなの前で将来の夢を話すようになってきた。ゆくゆくは親の面倒をヘルパーの資格を持っていた福永勝博さん(42歳)は、ハローワークから、高橋さんや赤藤さんの通っている姫路北病院のデイケアを紹介され、そこからさらに「れいめい」を知ることになった。福永さんは、うつ病から一時は絶望的になったこともあったが、周囲に支えられながら社適訓練を経て、兵庫県独自の社適訓練である「雇用指向型」から「ステップアップ雇用」へと進んだ。そして本格的雇用になり、「れいめい」に来てもう5年になる。初めはつらくて辞めたくなったこともあったらしい。家族の期待による重圧に、つぶれそうになったこともあった。いまは家を離れて自立。会社の近くのアパートで暮らし、安定して仕事に打ち込めるようになり、落ち着きを取り戻してきた。家族からの自立を助けたのも、代表取締役の野村さんをはじめとする姫路の「わーくわくねっと」の支援者たちの計らいだった。その福永さん、もっともっと働いて、いずれは自分のことを心配してくれた親の面倒を見るつもりだという。そして自殺者が年間3万人を上回るという最近のニュースを見るにつけ、この国が「自殺者ゼロ」になるために、福永さんは自分の経験や力を何か世の中に活かしたいと考えている。社適訓練卒業のケース会議坂田泰智さん(33歳)は8月で社適訓練を終わって、「れいめい」で働くことが決まっている。受診先の姫路北病院で、主治医で院長の西野直樹先生も同席して、訓練最後のケース会議が開かれた。会議はこれまで2カ月に1回程度開かれてきた。今回も受け入れている職親事業所である「れいめい」の野村さんをはじめ、病院のケースワーカー、保健所やハローワークの担当者のほか、姫路特有の就労支援システム、キャリアサポーターの三木章弘さんも出席した。社適訓練を終えた坂田さんには奥さんや子どもがいる。以前は自動車販売会社の営業マンだった。「うつ」から紆余曲折を経て、「れいめい」で正式雇用になる前に、ぜひともガイドヘルパーの資格を取りたいという。西野院長からは、その資格をなぜ、いま取りたいと考えているのかを聞かれた。坂田さんは、利用者のなかに全盲で旅行好きな方がいらっしゃるので、その方を旅にお連れし、その笑顔を見たいことや、資格を持てば、収入のアップにもつながること、などを理由に挙げた。坂田さんの説明に耳を傾けた西野院長は、「なるほど。現実的な考えだね。自分の考えをきちんとまとめて、関係者のみなさんの前で、説得力ある話し振りだったね」と卒業祝いの言葉をかけた。関「自分の体験を生かして、いじめや自殺ゼロをめざしたい」と話す福永勝博さん姫路北病院 西野直樹院長「わーくわくねっと」三木章弘キャリアサポーター

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