働く広場増刊号2013
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23「働く広場」増刊号 2013身体障害の人が働くには車いすなどのハード面のサポートが必要であり、知的障害者や精神障害者には、人によるサポートが不可欠だという理解は広まっているが、精神障害の人たちへの就労支援はどの段階に、どういう人による支援が、働き続けるポイントなのか――。その意味で、キャリアサポーターは「企業で永年のキャリアを持った定年後の人材」が社適訓練の段階から、マメに巡回支援する画期的な仕組みである。姫路では数年来、支援者のなかで、精神障害者だけでなく発達障害者やニート、引きこもりなどの若年者を含む心的障害者への就労支援は、「早い段階から、切れ目なく、時間をかけることが必要だ」という機運が高まってきた。心の障害者就労支援の輪こうした動きの発信源は、「NPO法人姫路こころの事業団」から始まった。理事長の濱はま中なか美貴子さんは、かねてから、心の障害のために就労に踏み出せなかったり、あるいは働き続けることの難しい人たちには特別な支援の仕組みが必要だと考えていた。4年前の2009年4月、地元の財界に人脈の広い濱中さんは、企業・医療・就労支援機関などに呼びかけ、「姫路こころの障害者自立支援チャリティーゴルフ」を開催し、200人近い賛同者を集めた。以後毎年開催されたチャリティーゴルフの寄付金は、毎回140万円を超える金額となり、これを基金に活動を広げてスタートした「わーくわくねっと」(中播磨心的障がい者就労支援協議会)は、ここから姫路独自のキャリアサポーターを誕生させた。この「わーくわくねっと」には、社適訓練の実績を持つ居宅介護支援「れいめい」の代表取締役の野村さんほか13社の職親企業(訓練生を受け入れる協力事業所)や施設外就労の1カ所、請負作業3カ所の発注元と、彼らの就労の場が市内に次第に広がった。また、職場に入りたての不安定な時期に相談にのってもらうことで、社適訓練からの雇用も増え、職場定着の実を結んだ。企業からは、本音の話ができるとの理由で、キャリアサポーターの存在は大歓迎である。こんな仕事はやってもらえるかと、「わーくわくねっと」に企業からの提案も持ち込まれ、キャリアサポーターが率先して仕事にあたって指導するため、企業も働く人も安心できる環境が生まれた。また、「働くのが一番の薬」という姫路北病院の西野院長を招いての商工会議所での会も、企業の障害者受入れの機運を大きくバックアップした。今年の兵庫県精神保健職親会総会のシンポジウム『「働く」を考えよう』では、「れいめい」の赤藤さんや坂田さんが司会を担当、200人を越える市民を前に、心の障害があっても働ける実際をアピールした。これは「わーくわくねっと」、「NPO法人コムサロン21」との共催で開催され、画期的なイベントとなった。こうした、こころの障害やハンディのある人たちの就労を助ける市民のネットワークは行政を巻き込み、さらに障害のある人の働く力とその応援団の活動が姫路の人々の意識を確実に変えているようだ。NPO法人姫路こころの事業団の濱中美貴子理事長(右から2人目)を中心に「わーくわくねっと」の打合せ会兵庫県精神保健職親会総会のシンポジウム『「働く」を考えよう』

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