働く広場増刊号2013
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26「働く広場」増刊号 2013処できないという思いがありました。そして社員の理解を得るためには、管理職が勉強する必要があります。たまたま応募者が通っていたクリニックの院長が雇用に理解があったので、院長や看護師長にお話を聞き、デイサービスに見学に行ったりして勉強しました」社員の総合支援を行うワークサポート室の渡邉雅子さんのところには、社員の本音が寄せられた。「障害があっても深夜に及ぶまで残業して頑張るメンバーもいるのに、短時間で働くなんて甘えているのではないかという声がありました。見えない障害だけに、最初は理解を求めるのが難しかったですね」厚生労働省の精神障害者雇用促進モデル事業に選定された2009年、渡邉さんは1年かけて太陽の家の精神保健福祉士とともに、10チームごとに勉強会を開催した。「精神障害者がいるチームには、その人にも参加してもらいました。この説明会を機に、自分も仕事のストレスを抱えて朝起きづらいのでどうしたらいいかとか、自分の身に置き換えて考えるようになってきて、理解が進みました。これまで理解してもらえなかった職員も、精神障害のAさんの具合がよくなさそうなので様子を見にきてくださいなどと、話してくれるようになりました」全チームの勉強会を終えると、社内の空気は変わってきた。企業人だから甘やかさない 山下さんが説明する「採用のポイント」(上掲)は、「入社時に全社員の前で自己紹介を兼ねて、自分の症状を話せること」だった。この条件は、山下さんが考えた。「当人が自分の障害を受容・理解しているかは大事なことです。気分が悪くなって10分ぐらい休憩するとしたら、周囲がわからないままでは、何をサボっているかということになります。自分の特徴、どういうときに体調が悪くなるのか、悪くなったときに自分で解決できるかなどを全社員にわかってもらったうえで、仕事をするのが大事だと思います」昨年12月に入社した女性は、自分のことを原稿3〜4枚に綴って、発表した。「勉強会をしてもすべてを覚えているわけではありません。うつといっても、人によって違いますし、本人にはなかなか聞きにくい。入社時に本人から話されるのと、第三者から聞かされるのでは、社員の理解度がまったく違います」また、「企業内支援のポイント」として「安易に早退や休暇を認めない」というものがあった。車いす当事者の山下さんの話だけに説得力ある丁寧な解説が聞けた。「安易に休ませないことは大事だと思います。企業人である以上、甘やかしてはいけない。最低限、自分の稼ぎは自分で稼げと常にいいます。障害がある相手には、とかくいうとおりにしてしまいがち。私が当事者だからかもしれませんが、簡単に休ませてはいけません」渡邉さんも甘やかしてはいない。その具体的な対応を再現する。「出社したくないけれど……と電話がかかってきたら、『そんなことで悩むのだったら、入社時の条件をクリアしていないけれど大丈夫? 企業人としての姿勢がなっていないよね』と返します。会社として譲れない線を本人に示すことが大切だと思います」「きついので帰ってもいいかと聞きにきたら、面談の時間を取ります。いまどうしてきついのか、帰る以外に方法はないのか、本人に考えさせます。ちょっと休憩をとってみようとか、負の考えが頭をめぐるのだったら、違うことを考えてみようかとか、もう1時間頑張ってみようとかアイデアを出して、対応方法を増やしていきます。そうすることで安易に帰らないようにもっていくようにします」きちんと本人と向き合っているからこそ、このような対応ができるのだろう。「私は、厳しいとよくいわれます。先山下達夫取締役総務・管理部長三菱商事太陽の採用のポイント・病識を持ち、定期的な通院、服薬管理がきちんとできること・自分の意思を伝えることができること(調子の悪いときは申し出るなど)・調子が悪くなったときの対応方法を身につけていること・就労意欲があること・基本的なビジネスマナーを身につけていること・規則正しい生活を送ることができており、決まった日時に安定して出勤できること・基本的なパソコン操作ができること・弊社職員の前で自分の症状を話せること

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