働く広場増刊号2013
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27「働く広場」増刊号 2013週も1人が『もう頑張れません』といってきました。『頑張れないというのは頑張っている人がいうこと。あなたは頑張っていないでしょ。データ入力1日150件が目標なのに100件。130件を目標にしよう』と切り返します。その人が頑張れると思っているから、はっぱをかけるわけです。本当に頑張れない状態も知っているので、そのときは帰らせたり、フォローします。本当にきついときと、まだ頑張れるときの見極めが難しいので、そこは神経を使いながら対応しています」渡邉さんは前任者が産休に入ったため、別の業務から、障害者スポーツで障害者と接していた経験を見込まれて、2009年に担当になった。実践しながら、研修会に参加しながら今日まできた。精神障害の人たちや社員の相談を受けるほかに、他部署の業務も担当している。「最初は入り込みすぎて、山下さんによく注意されました。『それは企業の支援ではない』とブレーキをかけてくれました。一番大事にしているのは、企業も努力するけど、本人たちにも努力させるということでしょうか」山下さんが続ける。「たまたまハンディがあるだけで、障害がない人だったらどういう指導をするかが基本だと思います。厳しさだけではない証しに、我々がいうことは安心して聞けると社員からいわれます」 プライベートは生活支援で精神障害者の就労支援で、一番大事に考えているのは生活支援だそうだ。渡邉さんは、太陽の家の障害者就業・生活支援センターの精神保健福祉士(PSW)である奥武あかねさんと情報交換をしている。「彼らの相談はプライベートなことですね。ほぼ100%、プライベートな悩みで調子を崩すことが多いので、企業で抱え込まない。生活支援との連携は必須だと思います。何かあれば週に1〜2回打ち合わせをしています」山下さんも、仕事とプライベートは切り離すべきだという。「プライベートな悩みは、会社では受けつけない。PSWに相談しなさいといいます。仕事の悩みは現場とタッグを組み、定期的な会合をしながら働きやすい職場をつくっています」精神保健福祉士として、奥武さんが別府本社で働く精神障害者6人の支援をしている。「気を使うところはそれぞれ違うのですが、社内担当の方に何もかも話して頼りすぎてしまうことがあるので、どこまで相談したらいいかの線引きについて話しています。会社の人の注意や指導をつらく解釈していたら、本人がつらくなく理解できるように言い換えます。障害者を複数雇用しているのは会社として勇気があると思いますが、次々と仲間が増えると、本人たちも認められていると感じられるでしょう。いろいろなタイプの人がいますので、ここでは定着が進んでいるのだと思います」奥武さんに、障害者が企業に定着するために必要なことを聞いた。「自分の障害の状態をしっかり説明できることが大事です。自分の体調を申告できれば、体調が悪いなりに働き続ける環境ができると思います。病気で療養するにしても、自分から申告して療養するのと、休んだほうがいいと勧められて休むのでは、意識も定着率も違うと感じます」精神障害者を雇用する企業に望むことは。「病名でその人を判断するのはやめてほしいと思います。統合失調症ですといわれたときには、病名からその人をとらえないでほしい。薬を飲んでいる状態を基本として、その人とどう付き合えるのかを判断してほしいです。同じ病名でも症状には非常に差があり、たとえば統合失調症でも、とてもいきいきしている人もいますから」精神保健福祉士の奥武あかねさん(社会福祉法人太陽の家)ワークサポート室の渡邉雅子さん

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