働く広場増刊号2013
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28「働く広場」増刊号 2013東京・丸の内事務所では、精神保健福祉士が正社員として勤務している。精神障害者の雇用をはじめて4年。1年以上の定着率は100%だ。一番働きやすい職場ここで働く2人に話を聞いた。齊藤智さとしさん(29歳)はトライアル雇用を経て、今年1月1日に正式採用となった。「3年ほど地元の金融機関で貯金や保険の営業の仕事をしていました。でも営業のノルマ、お客さんとの対人ストレス、職場内の人間関係で、体調を崩して辞めることになりました。その後、アルバイトをして、職業訓練を受けてパソコンの初級の資格を取りました」ほかの企業に総務事務で採用されたがその後退職、太陽の家を紹介されたことが現在につながった。「それまで普通に働いていたときは、どうも怒られることが多かったのですが、障害の診断を受けて、いままで何かずれていたのはそういうことだったのかと納得しました。きちんと働きたいと思ってもどこに相談していいかわからなくて、太陽の家が相談を受け付けているのを知ったときは、わらにもすがる気持ちでした。パソコンはある程度扱えますとお話ししたら、三菱商事太陽さんで研修ができるか聞いてみますといわれました」そこで、山下さんの面接を受けた。「面接はガチガチに緊張して何をいわれたのか覚えていません。もともと緊張しやすいので、入社時の挨拶でもちゃんと話せたのか、いまだにわかっていないくらいです」面接をした山下さんは、「まずはやる気です。働きたいということが一番。それが伝わってきました」という。データ入力業務につき、最初からフルタイム勤務で残業もしている。「頑張りすぎていないかな。息切れしないように」と渡邉さんが気づかう。齊藤さんは、「大丈夫です。自分の障害をカミングアウトしていることもありますが、以前の職場とはまったく違います」という。通勤は車で15分。仕事に慣れてきたら、音楽とマラソンの趣味も再開したい。最初の会社の退職前に結婚しており、就職が決まったとき、「ほんとによかったね」と奥さんも喜んでくれた。「だから、ぜひきちんと働きたかったです。いままでのなかで一番働きやすくて、職場の雰囲気、仕事内容が自分に合っていると思います」経理を担っていかれれば高こうぐち口雄平さん(33歳)は、2007年、三菱商事太陽で初めての精神障害者として入社した。大学卒業前に障害がわかって、働いた経験はなかった。「経理の勉強をしていたのですが、調子が悪くなって、病院のデイケアや作業所に通っていました。障害者の合同面接会で山下部長と渡邉さんに会い、『もう少したったら、精神障害者の受入態勢ができるので、連絡する』といわれて待っていました」入社時には全社員の前で障害について自己紹介。勤務を始めた。「簿記の勉強はしていましたが、実務は初めてでした。やる気はあっても、仕事を始めたときは本当に向いているのか、わかりませんでした」当時の高口さんの様子を山下さんは、「ひと言でいえば、ぼんぼん。働いたことがなかったので、社会人としてはまだまだでした。大卒の新人を育てるのと一緒で、経理関係の外部研修に行ってもらいました」という。高口さんは総務・管理部管理チームに所属。どんどん成長している。「毎年、新しいことを教えていただき、業務を達成しようと頑張ってきました。いまは伝票入力と決算業務もしており、今年度の初めには役員会の報告資料も作りました」週4日の午前中勤務からスタートした勤務時間も徐々に長くなり、昨年11月からは8時15分から17時15分までのフルタイムとなった。齊藤智さんの担当はデータ入力業務

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