働く広場増刊号2013
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29「働く広場」増刊号 2013「大変ですが、何とか出勤できると思います。前日の眠りが浅いと、人の言葉に過敏になって、自分を悪くいわれていると思ってしまったりするのですが、職場の人たちはよくしてくれます。仕事で自信がなくなったとき、山下部長に相談すると、厳しいこともいわれます。しかし、そこを乗り越えないと成長できないという気持ちが生まれました」昨年7月に買ったバイクで気晴らしする。お酒も大好き。みんなと飲み仲間だ。「決算、予算などに興味が出てきて、勉強してみようと思っています。研修で会計がいかに重要かを教えてもらい、モチベーションが上がってきました。会計や税法などを学べたらいいなと思います」精神障害者はトライアル雇用から契約社員、準社員(フル勤務できないが、仕事は優秀な者)、そして正社員となる。高口さんは準社員。山下さんから激励のひと言。「次は正社員をめざせ。経理は会社の要なので、少しずつでいいから自分のノウハウを蓄積してほしい」「心の車いす」を障害者の安定就労につながる要素として、山下さんは、「当事者の就労意欲と目標設定」、「当事者の自己管理能力」、「社内の障害に対する理解」、「当事者と支援者の信頼関係」、「当事者を囲む支援体制の充実」の5つをあげている。障害者のメンバーは入社したころと大きく変わってきた。「勤務時間も伸びていますし、全然違いますね。精神障害のある人が身体障害の人と働くのは初めてだと思うんです。我々も初めてです。よかったと思うのは、教えたわけではないのに、精神障害の人たちが車いすを畳んだりと、身体障害の人ができないことを手伝う。そして身体障害の我々は精神障害の人の短時間勤務をフォローする。いいペアだという感じがします。一緒に飲みにも行き、そこに階段があれば、やはり手伝ってくれます」精神障害者の雇用を進めるために、渡邉さんが思っていることです。「いま現場のリーダーがすごく理解を示してくれていますが、時間の配慮とか、ちょっとした工夫で、精神に障害があっても働ける方はいると思います。また、精神障害のある方々に企業の情報をもっと提供できたらと思います。自分たちが何をめざせば企業に入れるのか、企業の支援などの情報をどんどん発信して、働きたい人が夢を持てる社会をつくっていければと思います」山下さんは4年間の経験で、精神障害者と身体障害者は職場で「共生」できると感じている。その思いを全国の企業に発信したい。「講演依頼があれば、いつでもどこでも行きます。我々身体障害者は、車いすや松葉づえがあれば社会復帰できます。精神障害の人たちは、勤務をうまくコントロールをすれば仕事ができると感じています。私は彼らに、『心の車いす』を作ってあげたい。そうすれば、彼らも働ける、それは身体障害と同じです。この職場は働きやすいといわれていますが、安心して働ける職場は、安心して相談できる人がいるかどうかだと思います」三菱商事太陽の今後について、社長の徳田さんにうかがった。「会社としての大きな方向性は私のほうで示しますが、事業プランは各チームに作ってもらっています。自ら仕事を作り出す、社会に何らかの貢献をするという意識を持ってもらうことが大事です。DTPの印刷事業、データ入力事業を伸ばして、重度障害者の雇用から多様な障害者の雇用に貢献するのが今後の課題だと思います」障害者雇用の話は、自信がないと「はれもの」に触れるようになる。公開座談会の発言や仕事の現場での話から、精神障害者の雇用に真剣に取り組んでいるという三菱商事太陽のみなさんの自信が伝わってきた。だから、厳しく言える。本物の厳しさには、人への温かさがある。障害者雇用もその時代に入ってほしいと感じた、すがすがしい取材だった。総務・管理部で働く高口雄平さん

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