働く広場増刊号2013
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32「働く広場」増刊号 2013とんどいない。日立グループ900社の雇用率も1・88%と法定雇用率を超えている。全盲の視覚障がい者が働く本社では、3人の全盲の視覚障がい者が働く。藤原さんは、パソコンの音声ソフトを使うことで仕事ができると知った。「最初は労政人事部内でも、紙が多いのにどうやって読むのかと言われました。職場実習で、視覚障がいの方が音声パソコンを使いこなす姿を見て、当時の部長が『雇用しよう』と決断し、第1号の方が入社しました。翌年もその翌年も総合職として新卒を採用しました。実際に接してみないと分かってもらえないと思います。また病気などで中途失明をした2名の方もリハビリをして、音声パソコンの操作を習得して職場復帰しています」06年に総合職として入社した榊恵理さんはブランド・コミュニケーション本部に所属。07年からは広報・IR部でイントラネットの英語版サイトを立ち上げ、日立グループの社員に日立に関連するニュースを伝えている。メールや電話のやり取りなので、榊さんが目が見えないことに気付かない人も多い。「どのタイミングで目が見えないことを伝えるのか、迷うことがあります。仕事上では、職場の皆さんがとてもよく配慮してくださるので、ありがたいと思います」上司の広報・IR部部長代理の紺野篤志さんは、榊さんをごく自然にサポートして現れた。「入社当時、一緒に仕事をしたことがあります。語学がとても優れていて、リサーチ力があると感心しました。積極性があり、苦労を見せないで仕事をしてくれます。今後も1人の社員として期待しています」「頑張ります」と言う榊さんは、「英語を使う海外の社員は、社内の情報入手に言葉のバリアがあります。その状況をどこまで最小化できるかが当面の課題だと思っています。また日立グループのユニバーサルデザインや視覚障がい者に配慮した製品などのヒアリングや提案に協力できればと思います」精神障がい者の雇用へ精神障がい者の雇用は05年からグループ企業の聞き取り調査、先進事例の収集などの準備を進めた。07年からインターンシップを受け入れ、09年には厚生労働省の精神障がい者雇用促進モデル事業に手を上げた。その際、精神保健福祉士の五味渕律子さんを雇用して、労政人事部を中心に社内委員会を作った。三輪さんは社内の空気について、「職場では、メンタルヘルス不全の方の就労サポートに苦労しているケースも少なくありませんから、精神障がい者と聞くと大丈夫なのか?という雰囲気がまだあります。モデル事業で雇用した人たちを実際に見ていただき、こうした活動の意義と重要性を広めていこうとしているところです」と語る。精神障がい者雇用の推進役を担ったのは藤原さんだ。「職場の中に在籍精神疾患社員を抱えているのに、新規雇用は考えられないと言われたのですが、私は逆に新規雇用の方たちから、なぜ安定して働けるのかのノウハウを学び、職場で生かせたらと考えました。当面は週15時間ぐらいの短時間勤務から始めて週30時間ぐらい働くようにできればと思っています。一般企業の管理部門で精神障がい者が働きやすいノウハウを作っていかなければ、精神障がい者雇用拡大藤原敏労務課主任(写真右)と、精神保健福祉士として労務課で働く五味渕律子さん上司の広報・IR部長代理の紺野篤志さん(写真右)と打ち合わせをする全盲の榊恵理さん日立本社で活躍するAさん

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