働く広場増刊号2013
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36「働く広場」増刊号 2013がい者が雇用率にカウントされるようになり、身体障がい者を中心に雇用してきた日立製作所はCSRの観点等から、99年に特例子会社を設立した。主な事業は社内郵便集配、独身寮やオフィス内外の清掃、機密文書湿式シュレッダー、そのほか庶務や食堂・喫茶の補助で、売り上げは清掃と郵便がともに35%を占める。当初、寮の清掃、郵便業務を4拠点10人でスタートしたが、今では神奈川県を中心に20事業所33拠点に広がった。知的障がい者88人(神奈川県64人、東京都22人、茨城県2人)に指導員が34人。そのほか本社スタッフ8人が各拠点をバックアップする。3代目社長の鈴木巌さんは、生産技術の合理化に携わった後、労働組合の役員として活躍、07年現職に就任した。「お客様のニーズに応えることと雇用数の確保を考えたときに、戸塚の拠点だけで固まっていたら限界があります。労働形態は派遣ではなく業務請負で、現地集合現地解散であり、33拠点の労務管理やマネジメントは大事です。各拠点の指導員が要(かなめ)ですから、まず知的障がい者の特性とはなんぞやという基本のところを教育します。その後も定期的に本社で指導員会議を開いたり、近隣の特例子会社、特別支援学校、福祉施設を見学しています。入り口でしっかり指導者を教育することが大事ですね」指導員の採用はグループ会社から転籍した人たちだ。何か問題が起きたときは、本社スタッフが個別に対応して解決策を考える。また、業務部の3人を中心に各拠点を巡回している。「指導員会議でディスカッションをしたり、各拠点に出向いて話を聞いたりして、どんな改善をしたらいいかを考え、全体のスキルアップ、レベルアップにつなげていきたいと思います」「逆ザル」教育。地域との連携も4拠点から33拠点へ。どのように増やしてきたのか、鈴木社長に聞いた。「日立では各事業所ごとに障がい者雇用率1・8%を守るルールになっていますから、一番の切り口は雇用率だったと思います。以前は『日立ゆうあんどあいに仕事を出してください』とお願いしていましたが、最近は『こういう仕事ができるからお願いします』と提案する形にしています」社長の鈴木さんは、NPO法人障害者雇用部会の理事、養護学校の評議員などを務め、地元の障害者生活・就労支援センターなどとも連携、地域とのつながりを大事にしている。採用は拠点ごとに地元から。新卒は特別支援学校、中途は障害者就労支援センター、福祉施設などから面接、実習、トライアル雇用を経て正式採用する。「60歳までの終身雇用で65歳まで継続雇用ですから、雇用契約を締結する立場として、採用に関しては私が直接面接して決めています」社員は全員が正社員だ。1期生には転職したいと辞めた人もいたが、その後の離職率は極めて低い。社員は月1回、本社で集合研修を行う。鈴木社長の挨拶のほか、「初夢は?」「いま夢中になっていることは?」などの宿題も出白紙と色紙の分別。中村哲也さんと伊賀田純平さん(写真手前)「日立ゆうあんどあい」の鈴木巌社長社内郵便集配作業シュレッダー作業をする岡田洋介さん

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