働く広場増刊号2013
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39「働く広場」増刊号 2013アクテック株式会社は、大阪府枚方市にあるカメラや精密機器などのアルミケースの製造・販売をしている会社で、現在従業員50人あまりのうち4人の精神障害者が立派な戦力として、フルタイムで働いている。創業41年のアクテックが精神障害のある人を職場に受け入れたのは1991(平成3)年で、その歴史は20年以上になるが、この20年来、働く障害者の定着率が非常に高い。精神障害者の場合、慨して仕事が長続きせず、辞めてしまうことが多いが、ここでは定着して、一般従業員としての戦力になっている。それどころか障害者が3人と最も多い「製造一課一係」が、3年間連続で収益率トップの成績をあげている。このようなめざましい業績をあげられるのは、なぜなのだろうか。「特別な障害者対策を講じているわけではない」と芦田庄司社長はいわれるが、そのトップのお考えを知りたい。そして、会社の運営や職場の実際から学べるものが多々あるに違いないと考えて、2012年3月号のグラビア取材でも訪れた小山博孝カメラマンにも、同行をお願いした。精神障害者受入れは20年以上そもそもアクテック株式会社が精神障害者を職場に受け入れたのは、同社の「パートさん募集」の広告を見た地元の福祉作業所から、「内職の仕事をさせてほしい」との話が持ち込まれたことからだった。さらに保健所からも、「福祉の作業所では、企業で働けるよう障害者を訓練しているが、なかなか就職できない。何とか職場で訓練してくれないか」と強く頼まれ、1991年6月から「精神障害者社会適応訓練事業」の委託を受け、障害者を職場に受け入れるようになった。しかし、作業所など福祉の施設と企業とでは、「働くことへの意識がかなり違うと感じた」と芦田社長は語る。1991年、職場に精神障害者を受け入れてほどなく、カメラなどAV機器業界は不況に見舞われた。その年も翌年も2年連続の売上3割減の年が続いた。どうするか。普通ならまずリストラと考えるところだが、芦田社長は「そう簡単にリストラするわけにはいかない」と考えた。同社の従業員やパートさんは同じ町内に住み、買物に行っても、スーパーで顔を合わせることも多い。ご近所の従業員や受け入れたばかりの障害者を簡単にやめさせるわけにはいかない。ではどうするか。芦田社長はその頃、会社で導入し始めた稲盛和夫の経営塾の経営理念に沿って、考えに考えた。「この会社は何のために経営しているのか。安いアルミケースを作るためにだけやっているわけではない。会社で働く人たちや、ひいては地域の人たちみんな① 業況悪化でもリストラせず乗り切る② 数値化でだれもが経営者意識を持つ③ 朝礼は社員教育の核POINTPOINTPOINTアクテック株式会社芦田庄司代表取締役社長(2014年1月号掲載、内容は当時のまま)

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