働く広場増刊号2013
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40「働く広場」増刊号 2013の幸せのために経営しているのだ。となれば、とことん頑張って、みんなにも頑張ってもらい、苦しいけれどリストラしないでやっていく。それでもどうしてもアカンのであれば、会社を閉める。従業員みんなに話して、協力してもらうことにした」と社長は、なみなみならぬ当時の覚悟を語った。ミスをなくし会社の改革 そこへ翌1992年、ある大手メーカーの注文に、障害者の仕事からミスが発生した。信用にかかわる大問題だ。そこで全製品を国内だけでなく海外からもすべて回収したところ、ミスは1件だけだったが、そこから学ぶものは大きかった。こうしたミスは考えてみれば、障害者だから起こすものというより、健常者だってだれでも起こす可能性がある。芦田社長は、ミスを障害者のせいと考えたことに、自責の念に駆られたという。そこでうっかりミスを防ぐため、社内全体として大きな2つの対策を立てた。1つは作業方法を見直し、作業のムダ・ムリ・ムラをなくす、より具体的な工程表をつくった。もう1つは、チームによるダブルチェックの仕組みを徹底することだった。そして、稲盛の考案した「アメーバ経営」の特徴である、小集団部門別採算制度を推し進めた。職場のだれもが経営者意識を持てるように、自分の働くグループの生産計画・実績・月次さらにはその週の進捗状況、自分があげている収益額までわかりやすく日々はっきり数値化して、従業員のだれでも共有できる仕組みにしていった。また会社の経営方針として、作業は複雑になるが、お客様の注文により、量の多寡にかかわらず、1点からでも受注する方針とした。全員参加の朝礼が軸 アクテックの朝礼は毎朝8時30分から始まり、もちろん全員参加する。会社の基本方針を確認し、業績や大切な連絡・報告が行われる。毎週月曜は全社員の合同朝礼に続いて、部門ごとの朝礼になる。この朝礼は、ありきたりの朝礼ではない。一日単位で損益をみるアメーバ経営の日々の実践である。「京セラのフィロソフィ」や「職場の教養」を輪番で読み、その「所感」をその日の担当の従業員が自分の言葉で発表する。部門員8人のうち3人が障害者である「製造一課一係」ではその順番もすぐにまわってくる。慣れないうちは、その「所感」を述べるのにも一汗かくが、8日ごとに順番がくるので次第に慣れて、いつの間にか、人前で自分の考えを発表する力がついてくる。前日までの業績や収益率、その日の目標などをみんなで確認し、当日の作業のポイントについての連絡となる。また、ともすればパートや障害者には無関係だと省略されがちな、他社との連携や営業の可能性といった観点からの報告や連絡があり、朝礼はまさに社員教育の核となっている。朝礼が終わるとそれぞれ自分の担当の作業に就く。その進捗状況を各自30分ごとに、自分の「作業日報」に記入する。製品番号ごとにその内容・個数を記録し、アクテックで製造・販売されているアルミケース製品出来る 出来る必ず出来るやる気が あれば必ず出来る出来ないと思えば出来ない出来ないと考えず出来ると信じ永遠に自分は進歩したい出来る 出来る必ず出来る社内全部のトイレの貼紙は、何事も諦めない社風を示していた(武者小路実篤のことば)

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