働く広場増刊号2013
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43「働く広場」増刊号 2013る。統合失調症で、一時期調子を崩して休職したこともあったが、いまではこの職場に復帰できたことを何よりも感謝している。以前は短時間で4時間、12時半までの勤務だったが、現在はフルタイムになり、自宅から電車で片道40分の道程を、休まず通っている。周囲の状況によって、Wさんは気が散りやすい傾向もあるが、将来は「梱包のプロ」になることを目指している。そしてWさんは、ゆくゆくは両親から自立して、グループホームか、一人で暮らすことも考えている。働く精神障害者は現在もこの4人だが、「前回の2年前の取材以来、だれ一人退社していない。これはすごい」と、40年来、障害者雇用の取材に関わる小山カメラマンはいう。 人事考課はみんな同じアクテックでは、入社時には、パートも障害者も「一般職業適性検査」のテストを受けるが、それだけでなく、「これからどう生きるかを自分に言い聞かせる言葉」として短文を書いて持ってきてもらうことにしている。また能力開発に役立てるため、毎年2回人事評価を行い、長所・短所をしっかり把握し、次期、どうレベルアップするかについての期待水準が示される。その評価はパート・障害者クラスでいえば、プライマリ、ジュニア、シニアの3クラスに分かれ、それぞれ知識、技能、表現等の5項目について上司が評価する。その評価は障害者もパートも同じ尺度で行われ、本人にフィードバックされて、昇格すれば、時給もアップする。 経営理念を徹底し人を活かす 2006年には部門間の収益率が最下位だった「一―一係」の飲み会の席で、芦田社長は「障害者の働く部門がビリというのは残念だ。次はみんなで一番を目指して頑張ろうや!」と酒の勢いもあっていってしまった。専門家は「障害者に頑張れっていってはいけない」とよくいわれるけれど、と社長は付け加えた。ところが意外にも彼らの方が、「頑張ろう」、「頑張ろう」と発奮、盛り上がった。その結果は目覚ましく、翌2007年、2008年、2009年と続いて上位2位に上がり、さらに2010年からは2011年、2012年と連続で収益率トップとなった。そして、この2013年度末の成績1位も「まず間違いない」という。障害のある彼らがここまでできるのは、「〝諦めないチームワーク〞ではないでしょうか」と芦田社長は語った。病気をしたことで自信を失い、普通の職場で働くことをいったんは諦めかけた精神障害者たちが、チームワークの中で期待され、働いて活かされ、元気に甦った、さわやかなアクテックの実例である。精神障害を抱えるようになった人たちのなかには、障害があっても、「正しく認められたい」という思いは人一倍強く、一般の人たちの間で評価されることではじめて、生きてゆく自信を取り戻すことが多い。そのとき、障害を持った人たちが発揮できるパワーには目覚ましいものがある。アクテックの従業員たちにとっても、障害者たちの、このひたむきな働きぶりは、職場のみんなにとっても新鮮な活力となっているようだ。仕事の様子を取材する金子編集委員製造一課四係で、梱包のプロを目指して働くWさん

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