働く広場増刊号2013
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46「働く広場」増刊号 2013が優秀な障害者を採用するのはなかなか難しいことがわかってきた。「都内に比べて障害者の雇用の場が少ない埼玉か千葉で設立したほうが社会的にも意味があるのではないか、千葉駅の近くなら、千葉の県東や県南に住む方も通えると考えました。そして、駅から至近のちょうどいい物件に出会えました」設立にあたって、田中さんは会社のポリシーを3つに整理した。1番目は、「働いて、貢献して、稼ぐ」。「ぐるなびの創業者が『貢献したいと思う心は人間の本能だ』と説いており、当社のポリシーに貢献という言葉はふさわしいと思いました。しばらく働けなかったメンバーが中心ですから、働くことの大変さと喜びを実感してほしい。まず働くこと、『あなたの作業でだれかが、なにか助かる、それが貢献』。まだ親会社に甘えているところはありますが、株式会社というのは稼がないとつぶれる存在です。自分の給料を稼ぎ、利益貢献をして、胸を張って委託料を稼いでいきたいと考えています」2番目に、「さまざまな障害のあるメンバーが集まっているので、チームワークの精神が大切」と考え、「仲間で貢献しあうチームに」と掲げた。3番目は「優れた貢献をするために最適な環境を作る」こと。「特例子会社ですので、一人ひとりをきちんと見つめ、十分な配慮ができることがメリットです。特例子会社のようなきめ細やかな対応ができれば、職場でうつ病を発症する人はいなくなるのでは、とも思うのですが、現実には普通の職場はそこまでできないでしょう。ただ社員はこの配慮に甘えず、会社と社会に貢献して、それが社会人としての誇りと自信につながってほしいと思います」精神障害に限らず前向きな人に千葉事業所長の笠かさぎ置明さんも立上げにかかわった中心人物だ。「精神障害の人や、ぐるなび本社のような混在型の雇用には向かない障害特性の人たちにも働きやすい環境を作っていけば長く勤められるだろうと考えて、特例子会社を設立することになりました。どういう業務をするかに悩みました。同じビルの1階の就労移行支援事業所『ウイングル』が精神障害者の就労支援をしていたこともあり、ウイングル経由での採用もあったので、ぐるなび社内のさまざまな業務のなかから精神障害のある人にできることはないかと探して、障害に合わせた業務を設計していきました」車いすの人がたくさん働くかもしれないとオフィスをバリアフリーで設計したが、2013年に女性が入社するまでゼロだった。「最初から精神障害の人を中心にしようとしたわけではありませんでした」と田中さんは話す。「ぐるなび本社の障害者雇用でも、障害者雇用率だけを考えた『お客さん』的な扱いではなく、主体的に働きたい、健常者と変わらずに成果を出したいという思いの方を採用してきたので、このアソシエでも、明確な思いを持っている方を第一にして、障害の種別は特に考えませんでした。前を向く気持ちがあれば障害を問わずに採用し、結果的にいまのような比率になっています」「ビジネスができる会社に」と考えていた田中さんは、ベンチャー企業で働いていた工藤さんを現場のリーダーに採用した。「彼は、新しいビジネスをやりたいという。特例子会社はものすごく新しいビジネス、どんどんやらなければならないビジネスだと説明しました」工藤さんは、立上げ時に転職してきた。「会社の経営に興味がありましたが、特例子会社という言葉すら知りませんで笠置明千葉事業所長ぐるなびサポートアソシエの事務所

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