働く広場増刊号2013
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47「働く広場」増刊号 2013した。調べてみたら、障害者が働く会社か、同じ人間だから何とかなるかな、と思いました。2010年の年末には身体障害者2人、精神障害者3人の採用が決まりましたが、どんな人たちでどんな仕事ができるのだろうと、不安の年越しでした。相手を理解し、障害を理解しようと必死でした」2011年1月、5人でPDF化業務を始めた。経験のあるウイングルからの派遣社員が5人をサポートしてくれた。その年にさらに次々と障害のある社員が入社し、2012年初めに現在のかたちが固まった。工藤さんは、「設立当初は、障害についての勉強に相手の理解、信頼関係の構築から業務の組立て、さらには会社の仕組みを考えてと、やることや決めることが多く無我夢中でした」と振り返る。「最初のころは採用のノウハウもわからず、初期に採用したうちの2人はほどなく退職してしまいました。そこで、会社説明会では、『障害者雇用をしているほかの会社と比べて、うちはビジネスとして考えているので厳しいですよ』という話をしっかり伝え、次に5日間の職場実習を実施し、職場環境や仕事内容、自身の生活の変化などを確認してもらう。この時点でミスマッチに気づくので、本当に働きたい人から応募書類をもらい、書類選考と1次・2次面接をしています」会社設立後に「『働きたい』という強い意志のある方」など4項目の「求める人物像」を作り、2012年4月に開いたホームページでも訴えた。給料は13〜16万円。ぐるなびからの受託業務をこなし、経営は黒字になっている。 精神障害者定着への取組み勤務時間は9時半から17時半まで、精神障害者も同条件で働ける人を採用している。朝礼では、「休日はどんなことをして過ごしたか」など身近なテーマを1つ決めて、みんなが発表しあう。「あの人はこんなことを考えているんだ」、「同じ意見だし、休み時間に話してみよう」などお互いを知ることで、コミュニケーションが円滑になることを目的としている。全員で清掃の後、10時から業務開始。その日の業務はホワイトボードに書き出してあり、1日中同じ業務ではなく、複数の業務を切り替えながら行う。集中力の持続や疲れにくくするために、午前と午後に10分ずつ休憩もある。17時からは業務日報を書き、1日を振り返る。そこで就寝時間と起床時間、5段階に分けた健康状態を記録し、それをもとにグラフ化して、1カ月の体調の推移が一目でわかるようになっている。「管理者が個人の健康状態をチェックするのではなくて、一人ひとりが自ら意識できるようにしています。精神障害者を中心に体調を崩す人が多かったので、自己管理ができるようにと考えました。グラフを見ると、調子の悪いときは前日の睡眠時間が少なかったなどがわかり、睡眠時間は大事だからと改善するようになります。このツールにより体調管理への意識が強まり、安定した就業につながっていると感じています」と工藤さん。業務日報には、1日に感じたこと、3つのよいことを書く欄もある。「ドアを開けてもらったとか、お年寄りに席を譲っている人を見かけたとか、小さなことでいいので書いてもらっています。よいことに目を向けると、気持ちがポジティブになるし、お互いのよい面を探すので人間関係もよくなります」と、5月に入社した管理部の小坂正和さん。17時20分から終礼を行う。その日の業務上のミスを発表しあい、翌日までミスを引きずらないように、ほかの人が同じミスをしないように全員で情報を共有する。工藤さんは精神障害者の職場定着に管理部の小坂正和さんPDF化業務のデータ入力を行う若林邦彦さん。若林さんのパソコンにはたくさんの注意メモが貼ってある

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