働く広場増刊号2013
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50「働く広場」増刊号 2013法改正により、企業における精神障害者の雇用が、ますます重要になっています。そこで、精神障害者の雇用管理に関する連載を開始します。精神障害者の雇用精神障害者雇用というと、「仕事のことを考えるのは、病気を治してからにすべきでは」、「病気が治れば障害もなくなり、精神障害者とはいわないのでは」という疑問をもたれる方もいらっしゃるかもしれません。肺炎になったら、肺炎を治してから仕事を再開するのが望ましく、「病気を治してから」と考えたくなるのも無理はありません。しかし、例えば身体障害である腎臓機能障害のことを考えてみましょう。腎臓機能障害は慢性の腎臓疾患ですが、腎臓疾患を治してから仕事をするという発想ではなく、人工透析などの通院・治療時間を確保し、重労働や寒冷な労働環境を避け、職業生活上の障害を軽減していくという考え方が必要になります。精神障害も同様で、慢性疾患の場合には完治して障害をなくす発想ではなく、病気を管理しながら、生活や職業上の困難に対してさまざまな配慮や工夫をすることで、職業生活を可能にしていくという考え方が望まれます。掲載されている職場ルポなどを読めば、職場での配慮や支援機関の支援により、精神障害があっても十分に働ける人たちがいることを理解していただけると思います。病気と障害精神疾患は、調子がよくなったり悪くなったりと状態が変動したり、治る可能性もあります。ですから、「状態が固定しないと障害といわないのでは」、「治る可能性があるものは病気であって障害ではないのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、障害についての考え方は、近年大きく変化しています。変動するとか、治る可能性があっても、健康上の変調(病気やケガなど)により一定期間以上、日常生活や社会生活に困難がある状態は障害とみなす考え方が国際基準になってきています。日本でも、基本的にはこのような考え方を採用しています。ただし、どの程度の問題や困難性がある場合に「障害」として支援の対象とするかは、国によって大きく違いますし、同じ国内でも制度(例えば、年金や雇用率など)によって、対象となる障害の範囲は異なるのが一般的です。なお、病気と障害の関係についていえば、「病気」は医学的な観点から治療の対象となるもので、「障害」は生活上の困難性の観点からいろいろな支援(例えばグループホームなどの生活支援、ジョブコーチなどの就労支援、雇用率などの法制度の整備など)の対象になると考えればよいでしょう。精神障害者とは「精神障害」や「精神障害者」という言葉は、使用する人や状況によって異なり、必ずしも定まっているわけではありません。一般的には、精神疾患を有する人を精神障害者ということが多く、例えば、「精神保健及び精神障害者福祉にはじめての精神障害者雇用 ①「精神障害」について知る福島障害者職業センター 所長  相澤欽一50「働く広場」増刊号 2013

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