働く広場増刊号2013
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51「働く広場」増刊号 2013関する法律」(精神保健福祉法)では、「『精神障害者』とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒またはその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう」と定義しています。では、「精神疾患とは何を指すのか」ということになりますが、世界保健機構(WHO)の国際疾病分類に基づいて考えるのが一般的です。国際疾病分類は、大分類「感染症」、中分類「腸管感染症」、小分類「コレラ」というように、さまざまな疾患を分類しています。精神疾患は「精神および行動の障害」という大分類にまとめられ、その内容は表1のとおりです。日本でも、この国際疾病分類をもとに精神疾患の分類をしていますが、精神障害者数の算出に際しては、「精神および行動の障害」から知的障害を除外し、さらに国際疾病分類で「神経系の疾患」に分類される「てんかん」などを含めています。一方、「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、雇用対策上の障害者を定義していますが、この法律で定義される精神障害者は、障害者(身体障害、知的障害または精神障害があるため、長期にわたって職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者)のうち、表2に該当する人になります。ただし、障害者雇用率の算定対象は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者に限られます。精神障害者保健福祉手帳精神障害者保健福祉手帳は精神保健福祉法で定められており、精神疾患を有する者のうち、一定レベル以上の機能障害や能力障害のある者を交付対象としています。手帳の申請は、初診日から6カ月以上経過していることが必要で、手帳申請用の診断書を添付して都道府県知事に申請します。申請された書類は、各都道府県の精神保健福祉センターで、手帳に該当するかどうか、該当する場合にはその等級(1〜3級)が審査されます。精神障害者保健福祉手帳所持者は、2011年3月末時点で約60万人います。2006年3月末が約38万人ですから、手帳所持者は年々増加していることがわかります。手帳制度が周知され、手帳を申請しようとする人が増加していることがその背景にあると考えられます。相澤欽一(あいざわ・きんいち)1982(昭和57)年、雇用促進事業団入団。各地の障害者職業センターで勤務。2008(平成20)年、障害者職業総合センター研究部門主任研究員。「精神障害者の雇用管理のあり方に関する調査研究」、「精神障害者雇用管理ガイドブック」の作成などに従事。2013年より現職。日本精神障害者リハビリテーション学会常任理事、日本職業リハビリテーション学会運営理事、早稲田大学非常勤講師。著書「現場で使える精神障害者雇用支援ハンドブック」金剛出版、共著「職業リハビリテーションの基礎と実践」中央法規など。表1 国際疾病分類(第10版)の「精神および行動の障害」に含まれる疾患・障害表2 雇用対策上の精神障害者具体的な疾患・障害の分類中分類名症状性を含む器質性精神障害精神作用物質使用による精神および行動の障害統合失調症、統合失調型障害および妄想性障害気分(感情)障害神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群成人の人格および行動の障害知的障害(精神遅滞)心理的発達の障害小児期(児童)、青年期に通常発症する行動および情緒の障害詳細不明の精神障害①または②に該当する者であって、症状が安定し、就労が可能な状態にあるもの。①精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者②統合失調症、そううつ病(そう病およびうつ病を含む)またはてんかんにかかっている者(①に該当する者を除く)認知症、高次脳機能障害などアルコールや薬物の依存症など統合失調症などうつ病、そううつ病など不安障害、適応障害など摂食障害、睡眠障害など人格障害など軽度知的障害、中等度知的障害など自閉症、学習障害など多動性障害、チック症など(「障害者の雇用の促進等に関する法律」施行規則を簡略化して示す)51「働く広場」増刊号 2013

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