働く広場増刊号2013
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54「働く広場」増刊号 2013先月号では統合失調症を取り上げましたが、今月号は気分障害を取り上げ、中川正俊氏による「気分障害」(『精神障害者雇用管理ガイドブック』)(文献1)をもとに説明します。また、気分障害や統合失調症などさまざまな疾患があるなかで、「精神障害者の雇用管理」のポイントをどう考えればよいのかについても解説します。気分障害とは気分障害とは、憂うつや気分の高ぶりなどの気分の浮き沈みが、一定期間正常を超えた状態となり、それに伴い、考え方や行動面、身体面などにも障害が生じたものの総称として使用される病名です。「うつ状態」だけが現れるものを「うつ病」、「うつ状態」と「躁状態」の両方を繰り返すものを「躁うつ病」と呼んでいます。「うつ状態」では、憂うつや物悲しさ、絶望感などの気分の変化に加えて、好きなことにも興味を持てず何をしても楽しめない、考えが浮かばず簡単な判断もできない、集中力に欠ける、何事も億おっ劫くうで疲れやすい、過度に申し訳なさを感じ自己を責めるなどの精神症状が現れます。また、不眠(朝早く目覚めるのが典型的)や食欲低下、頭痛、胃部不快感などの身体症状もみられます。多くの人で精神症状や身体症状は朝方に強く現れ、時間とともにやや軽快する「日内変動」が認められます。「躁状態」では、気分が高ぶり爽快である反面、時にいらいらして怒りっぽくなります。考えは飛躍しがちで、自分が大物で金持ちであるなどと誇大的となります。行動面では、落ち着きなく口数も多くなり、買い物などの外出や知人宅への電話・訪問などが頻ひん繁ぱんになります。身体面では、「うつ状態」と同様に不眠がみられますが、食欲は亢こう進しんします。時に浪費や無分別な性的逸脱行為などが問題となることもあります。日本では、うつ病の頻度は7%ぐらいで、躁うつ病の割合は0・7%ぐらいといわれています。「うつ病」は女性が男性の2倍多くかかるといわれていますが、「躁うつ病」はかかりやすさに性差はありません。原因は明らかではありませんが、本人の側の要因(遺伝や性格など)に加え、何らかのきっかけ(心理的ストレス、睡眠不足や疲労などの身体的負荷、生活状況の変化など)が関係して発症に至ることが多いと考えられています。「うつ病」では、「抗うつ薬」と呼ばれる薬物の服用に加え、仕事や家事などの役割から開放され休養することが、治療の基本となります。「躁うつ病」では、「気分安定薬」と呼ばれる薬物を中心とした服薬による治療が行われます。「うつ病」や「躁うつ病」は、診断における分類法の違いによりさまざまな呼称があり、診断書にも多様な病名が使用されています。具体的には、「うつ病エピソード」や「反復性うつ病性障害」、「大うつ病性障害」は「うつ病」を意味し、「双極性感情障害」や「双極性障害」は「躁うつ病」を意味します。〈気分障害に対する留意点〉「うつ病」も「躁うつ病」も、主治医や産業医の指示に従い、職場ができる協力を行う必要があります。いずれも健康管理と再発予防のために、定期的な通院と服薬が必要ですが、特に「躁うつ病」は、多くの人で症状がない時期でも、再発予防の目的で継続した服薬を必要とします。また、再発には対人ストレスや生活リズムの乱れなどが影響することが知られており、再発予防のためには、過重労働や不規則勤務を避け、職場の人間関係に配慮する必要があります。精神障害者の雇用管理とは精神障害者の雇用管理といっても、「さまざまな異なるはじめての精神障害者雇用 ③「気分障害」および「精神障害者の雇用管理」福島障害者職業センター 所長  相澤欽一54「働く広場」増刊号 2013

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