働く広場増刊号2013
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56「働く広場」増刊号 2013先月号までは、「精神障害」の障害特性など基本的な知識について説明しましたが、今月号からは、雇用管理の具体的な留意点について説明します。採用の選択肢に入れる障害者雇用を考える際に、精神障害者の雇用を想定する企業はまだ多くないかもしれません。しかし、8月号に掲載されている事例からもわかるとおり、戦力として活躍している精神障害者は大勢います。精神障害者の場合、通常、職場の物理的環境などのハード面の改善は必要なく、工程の多い作業や専門性を要求される職務に対応できる人もいます。自社の仕事内容にマッチする人を見つけ、労働条件面や指導の仕方、コミュニケーションのとり方などのソフト面の対応を適切に行えば、有用な人材を採用できるチャンスは十分にあります。「有用な人材=即戦力」という視点にこだわらないただし、「有用な人材=即戦力」としか考えないようでは、かえって有用な人材を見逃すこともあります。最近は即戦力の人材が求められ、人材をじっくり育成するゆとりが少なくなっている企業が多いかもしれませんが、障害のあるなしに関わらず、新しい人材を長期的な視点で育てていくことの大切さは、いつの時代でも変わりません。ましてや、障害のある従業員の場合には、障害に対し一定の配慮が必要です。精神障害者の場合、初めての場面に弱かったり、慣れるまで時間がかかる人も多いので、長期的な視点で育てていく姿勢は、さまざまな配慮の中でも特に重要なポイントになります。どんな仕事で募集するのかひとくちに「精神障害者」といっても、もともと持っている能力、職歴や学歴、資格取得の状況など、人によって大きく異なります。このため、精神障害者に向いている仕事を初めから特定することはできません。ただ、初めての場面に弱く、慣れるまで時間がかかることに加え、臨機応変な対応が苦手、仕事内容や仕事量の急な変更にストレスを感じやすいといった人が多いので、初めから納期がきびしかったり、仕事内容や仕事量が急変するようなものはなるべく避けることが望まれます。もちろん、そういわれても、「納期がきびしくない仕事」なんてほとんどないし、「仕事内容や仕事量もそのときどきの状況で変化する」のは当然で、とてもそのような仕事は用意できないと考える企業もあるかもしれません。その場合は、多数の部署から横断的に仕事を切り出して、精神障害者が行う仕事をつくり出すことを検討することが考えられます。もっとも、このような対応を考えなくても、指導の仕方や仕事の与え方などにより、本人に過重な負担がかからないように配慮するだけでも、かなり違います。あまり大げさに考えずに、27頁の上に示した精神障害者雇用の事例集などを参考にしながら、自社で考えられる職務を検討するとよいでしょう。募集の仕方求人はハローワークに出すことが基本です。また、就労支援機関や医療機関、職業訓練校などを訪問し、自社に向いた人材を捜す企業もあります。各種支援機関の職員に直接説明することで、企業が望む人材のイメージを支援機関の職員に理解してもらいやすくなりますし、支援機関を利用している精神障害者の訓練場面などを見ることで、企業側も働く精神障害者のイメージが持てるようになります。どんな人を採用したらよいか募集している仕事内容に、ある程度、対応できる人かどうかの確認は当然必要ですが、資格や職歴だけで採用しても、職場に適応できなかったり、健康管理面で大きな問題はじめての精神障害者雇用 ④採用時に考慮すること福島障害者職業センター 所長  相澤欽一56「働く広場」増刊号 2013

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