働く広場増刊号2013
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58「働く広場」増刊号 2013初めて精神障害のある社員を指導する場合、どのような声かけをすべきか、「頑張れ」といっていいのかなど、不安になる人もいるかもしれません。今回は仕事の教え方について述べます。ここで述べることの多くは、新入社員に仕事を教えるときの留意点とさほど異なるものではありません。精神障害だからというより、ていねいな対応が必要な社員に対する指導という視点で取り組んでいただければと思います。仕事を教えるときの基本●特定の指導者を配置するいろいろな人から指示を出され戸惑う、人によって指示の出し方が異なり混乱する。わからないことがあったときに、だれに質問すればよいか迷う、といったことを避けるため、特定の指導者を配置すると効果的です。●やってみせ、わかったかどうか確認し、やらせてみるいきなり仕事をさせるより、まずは指導者が説明しながら実際に仕事をやってみせるとよいでしょう。わかったかどうか本人に確認した後、実際に仕事をやらせ、どの程度仕事ができるか、しばらく観察します。その後は、状況に応じて必要な指導をするようにします。●指示は具体的に、誤解の余地なく、タイミングよく指示は具体的に、誤解の余地なく明確に出すよう心がけましょう。また、本人が落ち着いて聞けるタイミングで指示を出すことも大切です。相手の目を見ながら、ゆっくりと話すことや、一度に指示されると混乱する場合があるので、必要なことだけをピンポイントで伝えることにも留意します。●混乱した状況は整理してやり、いつまでも迷わせないどうしたらよいか悩んでいるときは、対応方法を具体的に示し、いつまでも迷わせないことが重要です。例えば、「指示されたAの仕事が途中までしかできていませんが、Bをする時間になりました。どうしたらいいでしょうか」といった質問をしてきたとします。このとき、「どちらでもいいですよ」とか、「自分で判断しなさい」という指示ではなく、「Aを最後まで終わらせてから、Bに取りかかってください」とか、「Aは中断して、Bを始めてください」といった指示を出すとよいでしょう。ただし、指導者が本人の能力をある程度把握し、本人が仕事に慣れてきて自分で判断できそうだと推測できるときには、「あなたはどう思いますか?」とか、「Aを中断することで何か不都合はありますか?」という質問をし、本人がどう答えるか様子を見るといった方法も考えられます。本人の力をある程度把握したら、本人の力を引き出す工夫も望まれます。●指示を出した後の本人の様子に注意する指示を出したり、本人の質問に答えた後は、本人の様子をよく見て、指示や回答に納得しているかどうか、確認することが重要です。指示を受けても、不安げな様子であれば、何か気になっている点があるかもしれません。その際には、どこかわからないことや不安に思っていることがないか、尋ねるようにしましょう。指示を出した後に、この数秒間の手間をかけるだけで、本人の不安が大きくならずに早期に解決する場合もありますので、時間を惜しまず、ていねいに対応することが望まれます。はじめての精神障害者雇用 ⑤仕事の教え方福島障害者職業センター 所長  相澤欽一58「働く広場」増刊号 2013

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