働く広場増刊号2013
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59「働く広場」増刊号 2013●できているところを伝える(褒める)精神障害者の場合、自信が持てない、不安が強いといった人が多いのですが、特に就職したてのころは、仕事にも職場環境にも慣れていないため、不安感が一層強まっています。このような人に対しては、できていることを見つけ、本人に伝えることが重要です。自分のことをきちんと認めてくれる人がいると、やる気や自信につながりますし、よりよい人間関係を構築する基礎になります。●ミスをしたら解決策を一緒に考える (頭ごなしの叱責はNG)ミスをしたときは、頭ごなしに叱責しても効果はありません。「やっぱり自分はだめなんだ」と自信をなくしたり、叱責した人の指導を安心して受けることができなくなる場合もあります。ミスに対しては、その原因を明確にし、「どうすれば同じ失敗を繰り返さないですむか」、具体的な解決策を一緒に考える姿勢が重要です。ミスを極端に気にして萎縮してしまう人もいます。そのような場合には、万一ミスをしても、最終的な責任は上司がとることを明確に伝えることで、安心して仕事をしてもらっているという企業もあります。適切な指導を行うための条件上述したような指導を行うためには、仕事を教える人が指導しやすい環境を整えておくことが重要です。●仕事内容を明確にする指示を「具体的に、誤解の余地なく、明確に」伝えるためには、だれがやっても基本的に同じ手順で作業遂行できるようにしておくことが必要です。作業を標準化することで、どのように仕事をすればよいか迷うことが少なくなり、作業遂行に伴う不安も軽減します。標準化した作業を、手順書や工程表などにまとめておくことで、より早い作業の習得が期待できます。また、どこに何があるか明確にしておくことで、作業に伴うストレスを軽減することができます。パソコンを使う作業でも、さまざまな文書ファイルが、どのフォルダに入っているかわかりにくいといったことが、ストレスになる場合もあるので、注意しましょう。●指導する人をバックアップするスムーズに仕事を覚えたり、環境に慣れるのにあまり時間がかからない人もいますが、その一方で、仕事や環境に慣れるのに時間のかかる人もいます。指導者の予想や期待通りにならない場合もあり、精神障害のある社員を指導する人には、急いで結果を求めず、心に余裕を持って、根気強く指導する姿勢が求められます。もっとも、指導者が自分の仕事を持ちながら指導する場合は、指導者自身がストレスを抱え込みがちになります。現場の指導者の悩みを所属長などがきちんと聞く体制を整えることが望まれます。また、上司や企業全体が障害者を長い目で育てる視点を明確に持っていると、指導者は心に余裕を持って指導しやすくなります。人事担当者や企業のトップは、現場に対し、障害者雇用の大切さについてメッセージを発することが望まれます。「頑張れ」というのは禁句だと聞いたことがありますが、「頑張れ」といってはいけないのでしょうか?「頑張れ」という励ましの言葉自体は、決して悪い言葉ではありません。例えば、本人ができたことを見つけ、「大変よくできました。頑張りましたね」と努力を認め、「ここを注意するともっとよくなるので頑張りましょう」というのは、本人の励みにもなります。ただし、「頑張れ」という言葉が、「ちゃんと仕事をしてないじゃないか、もっと頑張って仕事をしろ」といった意味で受けとめられたり、「頑張れといわれても、具体的にどのように仕事をすれば頑張ったことになるのか、わからない」と本人が悩んだりするようでは、問題です。どのような声かけをすれば効果的な励ましの言葉となるかは、そのときどきの状況で適切に使い分けることが望まれますが、このような配慮は、精神障害のある社員に対してだけ求められる問題ではないでしょう。Q&AQA59「働く広場」増刊号 2013

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