働く広場増刊号2013
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60「働く広場」増刊号 2013障害者職業総合センターの調査によると、精神障害者雇用をしている企業の9割弱が「本人が上司や同僚に相談しやすい雰囲気作りをする」と答えています(文献1)。相談しやすい雰囲気がつくれれば、職場への帰属意識が高まるとともに、本人が一人で問題を抱え込み、それが職場不適応につながるといったことも避けられます。そのためには、常日頃のコミュニケーションのとり方が重要です。先月号に記載した「仕事の教え方」を実践するだけでも、相談しやすい職場になりますが、今月号ではそれ以外のコミュニケーション上の工夫や、周囲の社員の協力を引き出すための工夫などについて述べます。コミュニケーション上の工夫や配慮〈定期的に相談時間を設定する〉何かあったらいつでも相談するようにといわれても、なかなか自分から相談できない人もいます。このような人に対しては、定期的に相談時間を設定し、本人が従事した仕事について振り返るなかで、本人が感じている不安や疑問、体調の変化などを早期に把握するという方法をとれば、本人があれこれ自分一人で悩むことを防いだり、コミュニケーションを深めることができます。相談前に、図の様式にあらかじめ本人に記入してもらい、効果的に相談を行っている企業もあります。また、採用後、仕事に慣れて大きな問題が発生しなくなると、仕事ぶりに関する評価のフィードバックが少なくなりがちです。このような状況が長期間続くと、仕事に対する目標がはっきりしなくなり、意欲が低下して、本人が持っている能力を十分に発揮できなくなることもあります。このようなことを防ぎ、目的意識をもって仕事に取り組めるように、本人と定期的に話し合い、仕事について振り返り、企業側の評価をフィードバックし、本人と一緒に新たな目標を設定していくことが望まれます。〈リラックスした場面でのコミュニケーション〉休憩室や喫煙所などのリラックスした場面で、職場の上下関係をあまり意識させずに、趣味などの雑談をすることで、コミュニケーションを深めるよう工夫している企業もあります。また、昼休み時間に、ほかの社員と一緒に食事をしながら雑談することが、職場での円滑な人間関係のベースになっている人もいるようです。ただし、人によっては、職場では仕事以外の話をしたくないとか、休憩時間は一人でゆっくりしたいという人もいますので、休憩時間の過ごし方についても、本人の意向を確認したり、必要に応じて支援機関とも相談するなど、本人に合わせた対応が望まれます。〈職場全体の雰囲気を和やかにする〉本人とのコミュニケーションにいくら気を遣っても、職場全体の雰囲気がよくないと本人の職場定着に悪影響を与えます。例えば、休憩時間の雑談中に、その場にいない人の悪口などが出ると、自分のことをいわれていなくても、嫌な気持ちになって精神的にストレスを感じる人もいますが、精神障害のある社員のなかにも、そういったことに大変敏感な人がいますので、職場全体がなるべく和やかはじめての精神障害者雇用 ⑥相談しやすい職場作り福島障害者職業センター 所長  相澤欽一60「働く広場」増刊号 2013

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