働く広場増刊号2013
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63「働く広場」増刊号 201363「働く広場」増刊号 2013〈産業保健スタッフの活用〉在職者が心の健康問題で休職したときに、産業医や保健師などの産業保健スタッフがさまざまな役割を担っている企業でも、精神障害者の新規雇用では、産業保健スタッフの関わりが乏しい場合もあるようです。企業の中の数少ない医療保健の専門家ですので、精神障害のある社員の健康管理や医療機関との連携については、産業保健スタッフの有効活用が望まれます。環境変化への対応〈指導者や上司の異動に伴う対応〉指導者や上司が異動する際には、引継ぎをきちんと行い、担当者が変わったとたんに指導方針も変わるといったことがないように、注意する必要があります。担当者が変わる際に、前任者と後任者が一緒に本人と相談し、引継ぎなども十分行っていることを説明するとともに、後任者と本人の関係づくりが円滑に行われるよう配慮している企業もあります。特定の指導者や上司との関係が強く、それ以外の人との人間関係が希薄な場合、その人が異動するだけで、本人が不安定になることがあります。そのため、特定の指導者だけでなく、職場内のいろいろな人とある程度の関係性を構築できるようにしておくことも重要です。また、慣れた人が変わるのは、職場の都合で避けられない場合もあります。環境の変化をピンチとしてとらえるだけでなく、さまざまな人と仕事をすることにより、本人が職業人として成長していくチャンスでもあるという視点を持つことも、必要でしょう。〈日常環境の変化が職業生活に影響を及ぼす場合〉生活面の問題から仕事に支障をきたしたり、生活環境の変化が職業生活にも影響する人がいます。企業によっては家族と相談するなどして、生活面への課題に対応するところもありますが、日常生活や家庭の問題には、企業は直接入り込まず、支援機関の方で対応してもらうのが一般的でしょう。問題が発生したときに、生活支援の対応をしてもらえるところがないといった状況は困りますので、生活面の支援をしてくれる機関を把握しておくと安心です。〈長期的な支援機関との連携〉障害者職業センターなどの支援機関に定期的に職場に来てもらい、職場での対応方法について助言をもらったり、本人の相談に乗ってもらう企業もあります。また、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、保健所、福祉施設、医療機関など、本人を支援している人に集まってもらい、本人も参加してのケア会議を開催している企業もあります。このケア会議は、何か課題があったら開催するほかに、何もなくても支援者の異動などに併せて年1回は開催するようにし、何かあったら関係者が連携して対応しているそうです。このような企業と支援機関との継続的な支援をあまり必要としない人もいますが、特に、精神障害のある社員を多数雇用している企業の場合には、さまざまなタイプの人がいますので、支援機関との連携体制を構築しておくことが望まれます。主治医から情報収集するときの工夫例主治医から情報収集する際に、ある企業では、次のような工夫をしています。①主治医には守秘義務があることを念頭におき、情報収集に際し本人の同意を得ておく。②本人の了承を得たうえで、必要に応じて、診察に同行して情報収集する。③診察同行の際は、事前に本人から主治医にその旨を伝えてもらい、ある程度、面接時間が確保できる日時で診察の予約をする。④企業としては本人の職場定着を願っており、本人のためにどのような対応が望ましいのかを知りたいなど、本人を辞めさせる材料を把握するために情報収集したいのではないことを、明確に主治医に伝える。⑤主治医が数週間に1回、数分から10数分程度の面接しかできないのに対し、企業では仕事ぶりや職場での人間関係を通じて本人の状況を把握しているので、職場での普段の様子や、調子を崩してからの状況などをわかりやすく報告し、主治医から的確な助言をもらえるようにする。

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