働く広場増刊号2013
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64「働く広場」増刊号 201364「働く広場」増刊号 2013精神障害者の雇用管理これまで7回にわたり、新規に採用した精神障害者の雇用管理について述べてきましたが、例えば、本人の話をよく聞く、悩みごとには迅速に対応する、叱責ではなく有用な助言を行う、成功体験を積ませ達成感を持たせる、職場の人間関係を和やかにするといったようなことは、障害のない社員にとっても有益だと感じる方も多いでしょう。疾患や障害状況に合わせて、通院日や調子の悪いときに休みを与えるといった対応は、健康面で配慮を要する社員にも必要ですし、短時間労働のような本人の状況に合わせた労働時間の設定は、子育て中の社員などにも求められるでしょう。仕事を標準化し必要に応じてマニュアルを整備する、根気よくわかりやすく教えるといったことは、仕事に習熟していない新入社員などにも求められる対応です。このように、精神障害者の雇用管理の基本的な対応は、多くの社員にも共通して求められる対応といえます。さて最終回では、若干視点を変えて障害のない社員も含めた職場のメンタルヘルスの側面から、精神障害者の雇用管理について考えてみたいと思います。職場のメンタルヘルス過剰な業務量、長時間労働、能率の追求、職場環境の急激な変化、複雑な人間関係など、職場のストレスが増大するなか、社員の休職や自殺など、企業はさまざまな問題に直面し、メンタルヘルスの重要性が指摘されるようになりました。厚生労働省では、2006(平成18)年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定し、セルフケア(社員が自らのストレスに気づき対処する)、ラインケア(管理監督者の対応)、産業保健スタッフなどによるケア(産業医や保健師、人事労務担当者などが職場環境の改善や管理監督者への助言、労働者の相談に応じる)、職場外の専門機関のケア、という4つのケアを継続的・計画的に行うことの重要性を指摘しています。このうち、ラインケアでは、管理監督者に対し、人間関係などを含めた職場環境の把握と改善、メンタルヘルス不調者の発見と対処などを求めています。企業のメンタルヘルスを推進する担当者向けのテキスト(文献1)では、メンタルヘルス不調者の発見と対処について、日頃から部下をよく見て↓いつもと違う様子があれば↓声をかけ↓よく話を聞き(批判はしない・結論は急がない)↓必要に応じて社内の担当者や社外の専門家への相談・受診を促すこと、を指摘しています。さらに、このテキストでは、休職後に復職する者を支援する際の管理監督者の心得を示しています。それによると、「復職者は、『職場ではどう思われているだろうか』(中略)など、さまざまな心配をしながら出社しています。そうした復職者の気持ちを受け止めることを、管理監督者には望みたいのです」としたうえで、困ったことがないか、こまめに声かけと確認を行う、心理状態には波があるので、良好な状態・低下した状態・平均的な状態を把握し、産業保健スタッフなどと相談しながら回復状況を理解する、ほかの社員に過度の負担がかからないよう注意し、復職者への接し方や配慮すべき点をあらかじめ伝える、うまくいかないことも多いので自分だけで背負い込まず、産業保健スタッフや人事労務管理スタッフと連携する、などに留意するよう指摘しています。そして、「『上司は自分をわかってくれている』と感じることができれば、復職者の職場での緊張は大幅に軽減されます」としています。ここに示されたようなラインケアの対応は、新規雇用した精神障害者の雇用管理にも活かせることがあると感じるはじめての精神障害者雇用 ⑧(最終回)職場のメンタルヘルスと 精神障害者の雇用管理福島障害者職業センター 所長  相澤欽一

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