働く広場増刊号2013
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65「働く広場」増刊号 201365「働く広場」増刊号 2013方も多いでしょう。同様のことは、ほかのケアについても言えます。セルフケアについては、新規雇用された精神障害者でも、自分自身の疾患や障害を理解し、健康を維持するために睡眠や食事に気をつける、ストレッチや呼吸法などでリラックスする、職場以外の楽しみを見つけるなどのストレス対処が望まれます。産業保健スタッフのケアは、2月号で、精神障害者の健康管理においても産業保健スタッフの活用が望まれることを指摘したように、新規雇用した精神障害者の雇用管理にとっても、一定の役割を担うことが期待されます。職場外の専門機関のケアも、精神障害者の雇用管理では個別対応が必要であり、そのためには支援機関の活用が重要になることを、この連載中に何度も指摘してきました。このように、今後は、障害者雇用の分野と産業精神保健や労働安全衛生分野の連携が、これまで以上に注目されるかもしれません。職場環境の重要性職場のメンタルヘルス対策では、一次予防、二次予防、三次予防の視点で考える必要があります。心の健康問題で休職した社員の職場復帰支援は三次予防、メンタルヘルス不調になった者が長期休職にならないような早期発見と適切な対処は二次予防、メンタル不調の未然防止は一次予防に位置づけられます。企業にとっても、社員にとっても、できれば三次予防が必要になる前に、一次予防や二次予防の段階でとどまることが望まれます。特に、メンタル不調を未然に防止する一次予防の強化は重要です。この一次予防の重要な柱としては、仕事の進め方や人間関係までを含む、広い意味での「職場環境の改善」があげられます。職場におけるストレスの原因を軽減し、メンタルヘルス不調の発生リスクを低減するための職場環境の改善の取組みは、ラインケア、産業保健スタッフなどのケア、そして経営者も含めた全社的な対応が必要でしょう。仕事量や責任が過重でない、仕事のやり方やペースに意見をいえる、仕事上の指示や目標が明確である、いじめや対人葛藤がない、上司や同僚のサポートが得られる、といった職場と、そうでない職場では、社員のメンタルヘルスの状態が大きく異なるのは容易に推測されます。もちろん、精神疾患はさまざまな原因により発症しますので、どのような職場であっても、社員が精神疾患を発症したり、それにより休職することがあるかもしれません。しかし、上記のような働きやすい職場の方が、休職した社員の復職もスムーズに行われる可能性が高いでしょう。さらに、このような職場の方が、精神障害のある社員の就業継続も期待できます。表に示したような雰囲気のなかで、同じ働く仲間として受け入れてくれる職場であれば、新規雇用された精神障害のある社員も安心して働くことができるでしょう。企業は厳しい競争にさらされており、そのような職場づくりの余裕はないという見方もあるかもしれません。しかし、職場のストレスにより社員が心身の不調に陥れば、企業の負担も増大します。職場のメンタルヘルスと精神障害者の雇用管理の両面から、だれでも無理なく働ける職場づくりが求められているといえます。【文献】1 『事業所内メンタルヘルス推進担当者テキスト』 中央労働災害防止協会、2010年2 大野裕監修『職場のメンタルヘルス』東京法規出版、2005年快適な職場づくりのためのチェックポイント□あいさつが交わされている□気軽に話せる雰囲気がある□休憩時間には笑い声が聞こえるときもある□意見を率直に言える雰囲気がある□自分のミスを率直に認める雰囲気がある□多忙なときや困難な事態が生じたときはみんなで協力し合える□職場の目標と労働者の役割を全員が理解している文献2より改変して一部抜粋

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