働く広場増刊号2013
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72「働く広場」増刊号 2013精神障害者雇用Q&AA 企業や国・地方公共団体などは、一定割合以上の障害者を雇用するよう義務づけられています。この割合を法定雇用率といい、民間企業は2013(平成25)年4月から2・0%になりました。いまは身体障害者と知的障害者の労働者の数をもとに法定雇用率が算定されていますが、5年後の2018年4月から精神障害者の労働者数も含めて算定される(*)ということになります。A 「障害者の雇用の促進等に関する法律」の施行規則では、精神障害者について「①精神保健福祉法第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者、②統合失調症、そううつ症(そう病およびうつ病を含む)または、てんかんにかかっている者」であって、いずれも症状が安定し、就労が可能な状態にある者と規定されています。精神障害者については、精神疾患が改善した後も障害が残り、就労し続けているための特別な援助が必要な人としてとらえることが適当と考えられます。障害者雇用率制度では、精神障害者保健福祉手帳を所持している人が雇用率算定の対象とされ、短時間労働(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満)の場合には0・5人分として算定されます。なお、てんかんは国際疾病分類(ICD―10)では「神経系の疾患」の一部とされていますが、厚生労働省では精神障害者として施策の対象としています。A 職場で日常的にかかわることができ、信頼関係を築くことができる支援担当者を決めておくことです。仕事上のことや職場生活のことを、いつでも相談できる人が身近にいると、安心して仕事ができます。日常を見守る支援担当者が心身の緊張をほぐすように、休み方などの配慮をすることで継続的な就業が可能になります。もうひとつは、本人を支援する人たち(支援機関の担当者、家族、知人など)と連携することをおすすめします。支援機関には医療・保健機関、地域の社会復帰施設や作業所、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどがあり、担当者を中心に、日ごろから生活面や就業面の支援をしています。A 定期的な通院と服薬の継続は、精神障害者が仕事を続けていくうえで、とても大切なことです。主治医に健康、仕事、対人関係などの状況を常に理解、把握してもらい、問題があるときはいつでも相談できることが重要です。社会生活中の人でも、薬をやめた人の再発率は服薬を続けている人の2・5倍から3倍に達します。A 職場での適応をよくするためには、本人の障害特性や指導上の配慮事項などを従業員に理解してもらうことが大切ですが、一方で本人がそのことをどう考えているか、また職場の人間関係がどうかを見極め、個別に考える必要があります。まず本人の気持ちを確認し尊重したうえで判断するのがよいでしょう。ただ、直属の上司や本人の支援を担当する従業員には、「心の病気をしたために、治療を続けながら働くこと」を前提に、本人の障害特性と対応方法を伝えるとともに、通院や残業の際の取扱いなどを指示します。「なぜあの人は残業しないのか」とか「定期的に休むのはなぜか」といったほかの従業員からの質問に答えられるようにしておくことが大切です。「ほかの従業員にも障害のことを周知してほしい」と本人や支援機関が希望し、事業主としても職場環境などから考えてその方が望ましいと判断したときは、職場配置の前に予告する形で話しておけばよいでしょう。A 個別に異なるので、一概にいえませんが、精神障害者の特徴として、①臨機応変に判断することが苦手、②動作が遅く、ぎこちない、③新しい環境に慣れるのに時間がかかる、などがあげられています。例えば、職務の範囲や手順が明確な作業が向いていて、スピードが求められる作業や、対人業務などの精神的に負荷がかかる仕事は苦手と考えられます。しかしさまざまな支援を得て、いろいろな仕事で個々の力を発揮される人も多いので、今後はさらに仕事の可能性は広がると思われます。面接時に仕事への希望や特徴を確認し、配置後に就業状況を見ながら職場内で「適材適所」を検討してみてください。Q1Q2Q3Q4Q5Q6「精神障害者の雇用義務化」と大きく報じられたが、(法定)雇用率の算定はどのように変わるのか?雇用・就労支援の対象になる精神障害者は?採用にあたって、職場として準備をしたほうがいいことは?雇用後も、通院や服薬は必要?採用時に病気のことを従業員に知らせた方がいいか?精神障害者に適した仕事とは?(*)現在、精神障害者を雇用した場合は、身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます。

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