働く広場増刊号2013
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73「働く広場」増刊号 2013 本人の適性を見るために、当初は比較的簡単な仕事から入り、様子を見ながら本人の希望も尊重しつつ仕事を決めていくことが望まれます。高学歴の人の場合には、単純労働につくことに抵抗を感じることもあるので、その仕事の重要性を伝えるなど、動機づけを高める配慮が大切です。また、変化への対応を苦手とする人が多いので、仕事を変える際には注意が必要です。特に、より難易度の高い仕事へ変える場合には、本人のストレス状況を見ながら実施する必要があります。また、過大な評価や肩書きのあるポストへの配置は慎重にして、本人の負担にならないようにする配慮が必要です。いずれの場合も時間をかけ、自信を回復するようステップを踏むことが重要です。A 必ずしも大がかりな制度や組織を作る必要はありません。しかし、一般的に「キーパーソン」(本人の障害や勤務状態などをよく理解しており、気軽に相談や指導ができる人)がいる事業所の方が適応しやすいのも事実です。キーパーソンには、職場の直属の上司(職長、主任)やグループリーダー、中小企業では社長や工場長自身がなる場合が多いですが、先輩や同僚がこの役割を担う場合もあります。職制とは別にカウンセラーをおいている例もありますし、同じ病歴をもつ先輩が後輩を指導して効果を上げているところもあります。本人が気軽に相談できる、同一の人から指示されるほうが迷いも少なく、効果的と思われます。ただ、相談や指導に当たる人にもさまざまな負担が生じるので、キーパーソン本人に対する職場の理解とバックアップも不可欠です。なお、5人以上の障害者を雇用する事業所では、障害者職業生活相談員を選任することが法律で定められています。相談員は、職務内容や作業環境、職業生活について障害者から相談を受けたり指導したりすることになっています。職場内の相談や指導だけでは、問題の解決が難しい場合には、ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援事業を利用すると、地域障害者職業センターなどからジョブコーチが出向き、本人への支援を行うとともに事業主や従業員に対して必要な助言を行います。A 障害のない従業員が、障害者本人の障害についての一般的な知識があると、人間関係の維持が楽になるでしょう。「心の健康」といったテーマで、社員教育の一環として勉強してもらうのもよいかもしれません。障害のない従業員が知らない場合は、障害者本人が職場内で孤立しないように気を配る必要があります。しかし、配慮も過ぎればかえって目立ち、障害者本人も気が重くなるかもしれません。上司が折にふれて声をかける程度で十分なようです。A 採用するとき、それまで本人の生活を支えてきた支援機関をまず確認しましょう。対処に困ったときは、まずそこに相談できるようにしておくことが大切です。一般的な支援機関として、病気や障害に関することは主治医の所属する医療機関や各都道府県にある精神保健福祉センター、保健所、地域生活支援センターなど、採用や職場不適応など就業に関することは、公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどがあります。A 本人のこれまでの経過や現在の状況を把握することが大切です。職場内に限らず、本人の通院している医療機関や支援機関などとの情報交換や連携を早い時期から始めておくといいでしょう。職場復帰にあたっては、本人の希望や職場復帰後どのような仕事をするのかなどが重要です。最初は、本人にとって無理のない勤務条件や職種を設定するほうが、本人だけでなく迎える側もやりやすいと思います。A 自分のことを表現したり伝えたりすることが苦手な人が多いので、担当者を決めて話を聴くことが必要です。本人が精一杯頑張っている場合には、励ましはかえって負担を増やしてしまうこともあるのは、精神障害のある従業員に限りません。気分転換や休息を上手にとるのが苦手な人も多く、効果的に休むことへのアドバイスも必要となる場合があります。日常的にはごく普通の対応でいいのですが、職務内容や業務量、勤務時間については調整や配慮が必要な場合もありますので、まずは本人にどうしてほしいか希望を聞いて、必要に応じて産業医や産業保健スタッフ、主治医、支援機関と相談しながら対応していくことができればいいのではないでしょうか。Q10Q11Q7Q8Q9精神障害で休職している従業員の職場復帰について、どのような点に注意すればいいか?精神科に通院していて休みがちな従業員がいる。どのような対応をしたらいいか?特別に指導する人をつける必要は?障害のない従業員との人間関係の維持のために配慮することは?何か困ったときは、どこに相談すればいいか?

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