働く広場2019年4月号
11/36

9働く広場 2019.4職位制度を効果的に活用するために、キャリア形成をうながす「目標管理シート」もある。会社側が「採用、定着、成長、キャリアアップ、自律」というステップごとのモデル事項を示しながら、本人なりの目標設定をしてもらい、日々の仕事や生活の向上に役立ててもらう。例えば採用時は「困ったときに確認や質問ができる」、「家族、支援機関、医療機関のサポートがある」などの項目がある。定着(第1ステップ)時には「休まずに出勤できる(体調の安定)」、「困ったときに質問できるコミュニケーション能力がある」。成長(第2ステップ)時には「ビジネススキルがある程度身についている」、「効果的、効率的な仕事ができる」といったものだ。 人事グループに在籍する浅あさ山やま麻ま衣いさん(33歳)は、勤続8年目を迎える今年、正社員を目ざしている。これまでは10時~18時勤務だったが、昨秋から服用している新しい薬が合ったようで体調も安定してきたため、1月からは9時30分~18時勤務に変更。春から9時~18時のフルタイム勤務にできるよう調整している。もともと趣味で使い慣れていたパソコンでデータ入力などを担当。「初めての会社勤めでわからないことも多かったのですが、いまはいろいろな仕事を経験させてもらっています。エクセルなどを駆使したスキルも向上しました」と笑顔を見せる。SOPでは今年度、大きなニュースもあった。当初からSOPに在籍していた30代の男性社員が、シダックスグループ内の会社に一般社員として登用されたのだ。グループ会社に1人で派遣されて事務を担当していたが「うちの社員として働かないか」との誘いを受けたという。グループ内で、障害者枠から一般枠への雇用に変わった初めてのケースとなる。高橋さんは「人材を育て、グループ内に送り出していくこともSOPの大きな役割であると思っています」と手応えを感じている。 全国の事業所に対する定着支援は、特例子会社設立の2年後である2013年に本格的にスタートした。全国を11ブロックに分け、各ブロックに1人ずつ、定着支援員を配置している。定着支援員は社外セミナーを年5回以上受講するほか、企業見学会にも参加しながら、障害者職業生活相談員やジョブコーチの資格取得も目ざす(いまは相談員5人・ジョブコーチ6人)。同時にSOP内に「キャリア支援室」を新設し、バックアップする。例えばSOPで行っている振り返り面談の内容も電子データ化されているため、さまざまな事案について課題や対応策などを参照できる。また一方で、SOPのグループリーダーが1人で課題を抱え込まないようラインケア体制も整えている。毎週開かれている事例検討会議では個別の課題を全員で共有し、対応策を検討。全国の定着支援員も共有している。さらに2カ月に1回、全国から定着支援員が集まり勉強会も開催する。そのようななかで新たに気づく課題もあるそうだ。「例えば地方の事業所では、定着支援員よりも、現場で毎日顔を合わせる同僚たちによる自然な援助、ナチュラルサポートが一番大切です。いまは事業所ごとに定着支援員が『受入れ研修』を行っているほか、管理者に加えてキーパーソンとなる社員を最低1人はもうけ、サポートを任せられるよう指導・支援を続けています」こうした取組みのおかげか、現場でのコミュニケーションが改善され、「従業員が現場で相談できず、急に出勤しなくなった」というケースも減っているそうだ。シダックスグループ全体での障害者雇用数は計558人(2018年6月1日時点)、雇用率も2・51%となっている。今後もさらに全国の事業所などで、障害者が自然と溶け込めるような職場環境づくりを目ざしていくという。グループ会社の「一般正社員」登用もサポートしあって仕事をする人事グループで正社員を目ざして働く浅山麻衣さん全国の事業所に定着支援を展開

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る