働く広場2019年4月号
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27働く広場 2019.4②企業の農業参入には否定的な地域もあるなかで、障害者の雇用の場を農業で作ることには公的な支援が期待できること ③特例子会社が行う新たな職域として自社の業務のアウトソーシングの限界もあって、農業分野に対する評価が相対的に高まってきていると考えられること ④特例子会社や就労継続支援A型事業所が農業で成立することを示す成功事例のノウハウが蓄積され、それが横展開しつつあること などが考えられる。 ●特例子会社、企業出資の障害者福祉施設で異なる  農業分野への進出目的 なお、特例子会社と企業出資の障害者福祉施設とでは、親会社の規模・業種、行っている農業の経営部門に違いがみられ、農業参入の目的でも違いがあることがうかがわれた。 特例子会社では、大企業が多いこともあって、食品関連の企業が自社製品の原材料確保や、自社の店舗で販売するために農業を行っている例はみられない。本社とは異業種の農業で、法定雇用率の充足、CSR活動として、障害者の雇用を確保しようとしているところが多い。地域貢献に資する援農に熱心な企業も増えつつある。 企業出資の障害者福祉施設でも同様の目的で農業を行っている企業もあるが(法定雇用率算入の特例を受ける企業もある)、中堅規模の食品関連企業が、自社製品の原材料確保や、自社の店舗で販売するために農業を行っている例も多い(17社中9社)。また、障害者の一般就労への送り出しに熱心な企業も多い。 農業分野に進出している特例子会社で、経常収支黒字を実現している会社は少ない(調査対象6社中1社)。特例子会社の持続性を考えれば、経常収支の黒字実現はクリアしたい一つのハードルといえる。 農業分野に進出している企業出資の障害者福祉施設で、経常収支黒字を実現している会社は少なくない(調査対象12社中5社)。障害福祉サービスの対価として報酬(訓練等給付費)が支払われる点は、経常収支の黒字化に寄与するが、他方で制度改正を受けて利用者の工賃を生産活動から生み出す必要があるため、生産活動での赤字が許されなくなったという厳しさもある。 ●農業分野に進出している特例子会社の特徴 調査対象企業40社は、全て親会社の従業員数が3,000人を超える大企業。 農業が経営の中心となっている特例子会社の設置は一番古いところで2008年。その後、水耕栽培や援農事業で成功している事例をモデルにして、農業分野に進出してくる特例子会社が増加している。業種的には、農業や食品に関連がない業種からの参入が多い(食品製造業、食品流通業からの参入は40社中3社にとどまる)。調査対象企業では、設立の目的は、法定雇用率の達成とCSR活動の一環との回答が多い(表1参照)。 ●農業分野に進出している企業出資の障害者福祉施設の特徴 特例子会社とは違って中小企業も多く、また、17社中9社が食品の加工や販売を行う企業となっており、これらの企業では、自社農園で生産された農産物の原材料としての使用や販売を主目的の一つとして挙げている。 ●特例子会社と企業出資の障害者福祉施設との経営作目の違い 農業分野に進出している特例子会社では、農業が経営の中心となっている会社は48%(障害者の職域の拡大の一環で農業に進出)。経営部門では、水耕栽培を行う会社が12社と最も多い。ただし、農地法の改正を受けて露地野菜を作る会社も9社に増加。農作業を受託する会社も成功事例が横展開されて6社に広がっている。 企業出資の障害者福祉施設は、農業が主たる部門になっている施設がほとんどである。経営部門では、露地野菜作を中心にした施設が4割弱(6施設)、施設野菜作が中心であるが露地野菜も作付けている施設も加えれば9施設と全体の5割強となっている。 現在、農業分野で障害者の働く場を拡大しようとする企業が増加している。その理由としては、 ①農村地域で、仕事ができる能力があるのに就労できていない障害者を掘り起こせる可能性があること Ⅱ農業分野に進出してくる特例子会社、企業出資の障害者福祉施設が増加している理由 Ⅲ農業分野に進出している特例子会社、 企業出資の障害者福祉施設の今後の課題 ※この研究成果の報告は、農林水産政策研究所のウェブ・サイトからご覧いただけます。  http://www.ma.go.jp/prima/koho/seminar/2018/index.html

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