働く広場2019年4月号
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     29働く広場 2019.4 職場不適応が起こるとメンタルヘルス不全から精神科医療機関を受診し、場合によっては発達障害の診断に至ります。そこで、発達障害のある人が多数受診している精神科医療機関に対するインタビュー調査を行い、「受診から発達障害の診断」、さらに「治療過程に至るまで」をたずねました。その結果、患者らは何らかの不適応状態から受診に至っていること、医師による発達障害についての診断のプロセスは概おおむねしかし、職業リハビリテーションの専門支援は「障害」のある人が主な利用者となっています。発達障害の診断の有無に関わらず、職場適応上のニーズに応じて職業リハビリテーションサービスを利用してもらうためには、その紹介元となる医療機関や支援機関で支援の必要性の理解が促されること、あわせて専門支援機関への“紹介”が期待されます。また、職業リハビリテーション機関では対象者の職場におけるストレス要因を明らかにするため、障害特性や職場へのストレッサーに対して適切なアセスメントを行うこと、ストレスを低減させるために環境調整を図ることが求められます。これらの専門支援機関としての機能を十分に活かすことで、発達障害者の就労を支えていくことが望まれます。共通していることが聞かれました。ところが、医療機関ごとにメインとなっている患者像は異なっており、A・C・Dの医療機関では障害者雇用も検討の範囲となる人が多く、Bでは一般枠で雇用される発達障害グレーゾーンの人が中心となっていました。それぞれの特性や課題によって、医療機関ごとの対応や院内プログラムに違いがみられました(表1)。 一般の労働者として社会人のスタートを切った発達障害のある人の多くが、適応上の問題をきっかけに医療機関を受診し、紆う余よ曲きょく折せつしながら一部は専門支援にたどり着くことになります。※2 NIOSH:米国国立労働安全衛生研究所(National Institute of Occupational Safety and Health)参考文献:岩田昇(2017)職業性ストレスの測定と評価,産業保健心理学 第3章,ナカニシヤ出版.※発達障害専門を標ぼうしている医療機関はBのみ・発達障害のグレーゾーン〜発達障害診断のつく者・他精神科や産業医等からの紹介、周囲の指摘、自ら来院・発達障害のグレーゾーン〜発達障害診断のつく者・一般枠で就労中・発達障害者支援センターの紹介、周囲の指摘、自ら来院・発達障害のグレーゾーンの者・成人期の者で未診断の者・休職中もしくは一般枠で就労中・周囲の指摘、自ら来院・大学内支援で解決に至らないケース・発達障害が疑われる場合には大学からクリニックへ紹介患者像・受診経路ABCD対象機関対応・プログラム等課題と感じること・クリニックと経営主体が同じであるB型就労移行支援事業所での活動の実施・診断がついた場合に手帳の取得勧奨、地域の就労支援機関の紹介・認知行動療法プログラムの実施・発達障害専門外来での診療と発達障害に対応した治療プログラムの実施・学内支援の段階で診断に進める・診断がついた場合に手帳の取得勧奨・場合によって障害者雇用の検討直ちに就労がむずかしい発達障害に特化した支援・治療の枠組みは必要と思われるが、技術面・経営面で課題が大きい。精神医療側の意識は高いといえない。グレーゾーンの者が支援を利用できない正社員の場合、配慮の必要性について相談の上でむずかしさがある「対人恐怖がある者」「集団を怖がる者」「こだわりの強さがある者」の場合、プログラムへの参加を選択しないケースもある手帳取得に進む前の了解や納得など「障害受容」に時間を要する3.発達障害の診断と  治療から支援までの流れ4.職業リハビリテーションに  期待されること物理的環境役割葛藤、曖昧さ対人葛藤仕事の将来の曖昧さ仕事のコントロール雇用機会量的労働負荷労働負荷の変動人々への責任技能の低活用認知的要求交代制勤務職場のストレッサー仕事外の要因緩衝要因個人的要因急性の反応疾病心理的反応 仕事への不満 抑うつ生理的反応 身体的自覚症状行動化 事故 薬物使用 病気欠勤仕事に関連する心身の障害医師の診断による問題図1 NIOSH(※2) 職業性ストレスモデル(Hurrell & MacLaney,1988(岩田,2017))表1 発達障害を診る精神科医療機関に対するインタビュー結果家族、家庭からの要求社会的支援上司・同僚・家族より年齢、性別婚姻の状態雇用保障肩書性格自尊心

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