働く広場2019年4月号
9/36

7働く広場 2019.4定着支援員が詳しい状態を聞きながら必要な対応をする。佐藤さんによると「こうしたツールは体調管理の“とっかかり”としてはとても有効でしたが、いまでは名札を貼らなくても『今日はちょっと調子が悪いんだよね』と自分からいうようになっています。ただ気分ノートについては、あとで見返したときに『あのころから体調を崩す前兆が出ていたのだな』と調子の波を自己分析するのに役立っています」また勤務中は作業が続くと知らぬ間に疲れていたり、息抜きのために離席するのをためらう従業員もいるため、「休憩時間の細分化」を導入した。当初は1時間に1回ずつこまめに取っていたが、いまは午前1回・午後2回で各10分間ずつ設定している。これも最近は形をかえつつあるという。自分で意思表示ができるようになると「全員の一斉休憩だと、1人になれないので休憩にならない」という声もあったため、人によっては自身の裁量で休憩をとってもらうようにしている。社内には休憩用の個室も用意されている。そして、外部からカウンセラーに来てもらい月1回の「こころの相談室」を設けている。「どんな話をしてもいい」ということにしており、従業員にリフレッシュ効果をもたらしているそうだ。いう希望をもった従業員の存在に気づいたことだという。そこで改めて、従業員自身が仕事や職場環境についてどう考えているかを知るため、全員の面談を行った。その結果、次の4点がわかった。①体調の波を小さく整え、心身ともに安定し長期的に健康になりたい②障害特性を理解し、うまくつき合いながら人として成長したい③良好な対人関係を形成したい④(収入を含め)一人でも生活できる力を身につけたいそこでSOPでは、従業員が仕事を続けていくうえでの不安感を減らし、やりがいを持って取り組めるようにするため、「だれもが働き続ける力を身につける」ことを人事制度のビジョンに掲げた。具体的な取組みは次の内容である。①セルフケアの方法や円滑な対人関係を身につけるための「グループワーク」②積極的に仕事に取り組めるようにするための「改善好事例の提案制度」③無理のない将来設計ができる「職位制度」「振り返り面談」も月1回行われている。会社側と本人と支援機関の三者が同席し、仕事上で困ったことや悩み、今後の希望などについて話し合う。主に会計業務を担当している外と川がわ佐さ智ち子こさん(54歳)は、「定期的に話を聞いてもらえる環境がありがたい」と話す。もともと別の会社で正社員として働いていたが、30代のころ障害者手帳を取得。調布市の就労支援サービスを利用して、2011年にSOPに入社した。「グループリーダーをはじめ周囲の人が私のことを理解したうえで配慮してくれ、細かいことも相談しやすいです。振り返り面談があるのも助かります。働き続けるなかで新しい悩みが出てきますから。特に私の場合は、若い同僚が増えるなかで『自分のやり方で大丈夫かな』と不安になることがあります」外川さんは以前、どうしても外出ができなくなり半年ほど休まざるを得ないこともあったが「私の席を空けて待っていてもらえたことが、とてもうれしかった。これも大きな安心につながっています」とも明かしてくれた。SOPでの就労定着を図るために大きな役割を果たしているのが「人事制度」だ。導入のきっかけは、「上を目ざしたい」とキャリア形成に向けた人事制度名札を貼って、その日の体調や気分を示す顔マーク。セルフケアに欠かせない月1回行われる振り返り面談。支援機関の担当者も同席のうえ、話し合う会計業務を担当する外川佐智子さんグループリーダーの見けん目もく真ま理りさん(右)のサポートを受けて仕事を進める

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る