働く広場2019年5月号
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12働く広場 2019.5 ミズベの主力業務の一つとなっている「ビルクリーニング」は、1995年に外部委託から切り替える形で始まり、いまはエプソン本社を含め県内工場5カ所で行っている。全国アビリンピックの2017年栃木大会と2018年の沖縄大会に出場した、豊とよ科しな工場の与よ曽そ井い瑞みず穂ほさんが、「ビルクリーニング」種目で連続して銀賞を獲得するなど、レベルの高さがうかがえる。昨年入社したばかりの山やま﨑ざき芹せり菜なさん(26歳)も「いつかは挑戦してみたい」と遠慮がちに話してくれたが、リーダーの樋ひ口ぐち隆たか子こさんは「山﨑さんは、とても優秀なので、ぜひ挑戦してほしいですね」と背中を押す。「清掃用の道具は、食堂や水回りを含め、場所に合わせていろいろあるのですが、山﨑さんは一つひとつていねいに使いこなして取り組んでくれています」日ごろは、昼休みの同僚たちとの歓談が楽しみだという山﨑さんは、聴覚障害のある同僚との会話のために、独学で手話も勉強しているそうだ。企業在籍型ジョブコーチ(職場適応援助者)でもある樋口さんは「一人ひとりの個性に合った指導をしながら、日々の小さな変化を見逃さないように心がけています。みんなに楽しく通ってもらうことが一番」としながら、今後は作業エリアの拡大も狙いたいと語る。「実は、社員が清掃を担当している場所は手が回りきっていないようで、私たちがやったほうがキレイになるからです」と笑いながら明かしてくれた。取材陣が最後に訪れたのは、本社から車で45分ほど離れた松本市の神かん林ばやし事業所。ここには大型プリンター用インクカートリッジの分解作業部署などが入っている。分解によって7割のリサイクルを実現しているという。カートリッジに付随しているICチップを取り外し、ラベルをはがし取り、プラスチックケースを分解し、インクパックを取り出し、分別仕分けする作業を、十数人で定期的に役割を入れ替えながら行っている。この日、ラベルはがし作業に取り組んでいた上かみ條じょう美み咲さきさん(23)は、全国アビリンピック沖縄大会の「オフィスアシスタント」種目で金賞に輝いた。前回の栃木大会で初出場して入賞を逃し「悔しくて号泣した」という上條さんが、今回は表彰台で「嬉しくて号泣した」姿が印象的だった。大会前は、競技のために封筒や紙などを用意し、毎日2時間の練習時間も確保してもらったという。業務ができない時間はほかのメンバーがカバーした。入社5年目という上條さんは「いままで先輩たちに支えてもらってきたので、今後は後輩たちに、仕事を教えたり、いろいろな相談に乗ってあげたいですね」と頼もしい表情で語ってくれた。指導役の洞ほら澤さわ陽よう子こさんにも話を聞いた。「競技の練習も普段の業務も、本人がしっかり納得したうえで取り組めるよう心がけています。特にここは安全にも気をつけなければいけないため、本人の作業のしやすさなどを考慮し、作業方法やペースを一緒に試行錯誤しています」 アビリンピックに挑戦する障害のある従業員が増える背景には、その意欲を引き出し、大会までの練習を含めて支えるサポート従業員の存在も大きいだろう。ミズベは、障害のある従業員を支援する従業員46人全員が、障害者職業生活相談員、うち13人が企業在籍型ジョブコーチの資格を取得している。さらに、以前まで月2回の訪問だった精神保健福祉士には、いまは常駐の形で8拠点を巡回してもらっている。ミズベの管理部長荒あら井い孝たかサポート側の従業員も支援レベルの高いビルクリーニング「ビルクリーニング」種目で銀賞を獲得した与曽井瑞穂さん清掃班の山﨑芹菜さん「オフィスアシスタント」種目で金賞の上條美咲さん

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