働く広場2019年5月号
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13働く広場 2019.5昌まささんは「もともと精神保健福祉士の巡回は障害のある従業員のためでしたが、彼らをサポートする側からもさまざまな悩みが寄せられました。職場では先輩が経験をふまえて助言することも多いのですが、やはり専門職の方の話は説得力があるようです。各工場で定期的に勉強会やワークショップなども行い、好評です」と話す。また、障害者の視点に立った新たな安全活動の一つとして、災害時などに自分の命と安全を守るための「HELP CARD」を2017年に導入した。首からさげる社員証ホルダーに一緒に入れる赤色のカードには、障害種別や支援してほしいこと、家族や支援機関・主治医の連絡先や服用薬の種類・量などを細かく記入できる。ミズベの従業員全員が携帯しているそうだ。「私自身も通勤時など何かあったときに、代わりにだれかが連絡してくれたり、助けてもらったりできるという安心感があります」と荒井さん。さらに同年春には、障害のある従業員の就労定着支援に力を入れるため、管理部内に「サポートグループ」を新設。同年夏には「企画グループ」も誕生し、新しい業務の開拓に取り組む。近年、通勤圏内では精神障害のある求職者が圧倒的に多いこともあり、目下の重要課題は「精神障害のある方の採用をいかに拡大するか」だという。そのためのワーキンググループを2月に立ち上げたばかりだ。障害者雇用の「時代の波」に立ち遅れないよう、荒井さんたちは各地で開催されるさまざまな障害者雇用向けセミナーや集まりに頻繁に参加し、情報収集にも余念がない。「私たちの理念や支援のあり方をしっかりと継承しつつ、時代に合わせて変えるべきものは変えていかなければいけないと思っています。ミズベだけではなく親会社も巻き込んで、職域・雇用拡大のための議論も始めています。ミズベが、今後もグループ全体の障害者雇用を牽けん引いんしていくという気概をもって取り組んでいきたいですね」毎年7月ごろに開催されるアビリンピック地方大会に向け、挑戦する選手を決めるのは年度初めの4月ごろからだ。各工場に声をかけ、職場の上司と相談して本人が立候補してくるそうだ。競技種目は業務内容と無関係でも構わず、本人の希望を尊重するという。上司らの指導やアドバイスを受けながら毎日のように行う練習は、就業時間内に確保している。練習に必要な道具なども社内の備品などをうまく使いまわしている。物心両面で手厚いバックアップ体制だが、最初のころは社内でも認知度が低かったらしく、当時参加していた従業員が「自分のときは1人でやっていた。いまは会社が応援してくれてうらやましい」と笑いながら教えてくれた。周囲のサポートや応援を感じるほど、本人たちの「がんばりたい」という気持ちも強くなる。ある若い障害のある従業員は、同僚がアビリンピックの練習をする様子を見て「私も出られますか」と相談してきた。初めての地方大会は残念な結果に終わったが、泣きながら「再チャレンジします」と宣言したという。「泣くほど悔しい思いをする経験も、彼らの成長の糧になっているようで、こちらもうれしくなります」という荒井さんだが、同行した沖縄大会では「自分のほうが感動して泣いてばかりでした」と振り返る。最後に、アビリンピックに参加することの意味について、こう語ってくれた。「もちろん賞をもらえることに越したことはないのですが、職場では、なによりも『みんなで目標を持ってチャレンジすることを大事にしたいよね』と話しています。何かに挑戦する従業員のために、周囲のメンバーも仕事を助けたりアイデアを出しながら、一緒になって取り組んでいます。一人ひとりが刺激を受け、職場全体が活性化していくことを日々実感しています。それがミズベの理念の一つである『昨日より今日の自分が成長していることが僅わずかでも感じられること』にもつながっていると思います」管理部長の荒井孝昌さん「HELP CARD」のサンプル挑戦が日々の成長もうながす

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