働く広場2019年5月号
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     29働く広場 2019.5  学識・実務経験者からは、社員の意識向上、ダイバーシティ経営への効果、障害者雇用ノウハウの営業ツール化、障害者対応の新技術への応用など、障害者とのかかわりのなかで得られる企業のメリットについての視点が得られました。 企業からは、社員の意識向上が最も多くあげられ、企業のイメージ向上や社員の育成に効果が得られるなどの視点も得られました。  学識・実務経験者からは、ピアレビュー(立場や職種が同じような者による評価)による質的評価、障害者雇用率、職場定着、職場定着率が得られました。 企業からは、職場定着、地域の障害者機関・施設との関係づくり、社会的気運の醸成が得られました。  今回の研究は、何人かの専門家、企業の方々や先行文献のなかから、障害者雇用の質を見る視点を事例的に収集し、見出しをつけて整理を行った段階のものになります。本研究がさまざまな立場の方々において「障害者雇用の質とは何か」ということについて考えていただく契機となり、障害者雇用の質的向上につながることを願っています。  学識・実務経験者からは、障害者の働きやすい環境づくりの取組みとして、仕事に対する意欲や態度を向上するためのかかわり、職務とのマッチングの定期的な点検、地域資源(外部機関)の活用などの視点が得られました。 企業からは、加齢・障害特性への配慮、労働条件の緩和など障害者一人ひとりの状態に合わせた対応や、必要に応じて外部の支援機関を利用した対応をすることなども視点として得られました。 障害当事者からは、支援機関に対する就職当初の職場適応支援や仕事を理解するための支援、障害特性に理解ある社員を求めるなど人的サポートに関する視点が得られました。  学識・実務経験者からは、ES(従業員満足度)、ワーク・ライフ・バランス、会社での居場所づくり、幸せの実現につながる雇用、自己実現、生活の充実など、障害のある方々が豊かな生活を送るために必要な視点が得られました。 企業からは、仕事に対するやりがいやモチベーションの向上につながる取組みが得られました。 障害当事者からは、働きがい、他者からの承認、自己実現、健常者とともに働く場、社会参加、仕事への意欲、賃金、経済的安定などの視点が得られ、その多くが仕事を通して社会参加し、自己実現を求めるものでした。※ 本研究(資料シリーズNo.101)は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています。  http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/shiryou/shiryou101.html JEED 資料シリーズ 101 検索(4) 障害理解に基づくきめ細かな対応(6) 障害者雇用の波及効果(障害者雇用と企業経営・共に働く労働者の雇用との相互作用)(7) その他(5) 働く価値や意味、賃金、自己実現(障害者から見た雇用の質)3.おわりに表 収集した障害者雇用の質に関する視点の概要分類視点項目視点(抜粋)①社会からの期待への対応(よりよい働き方、企業経営等)2432CSRの観点、ESG投資としての障害者雇用、ダイバーシティ経営の推進、障害者雇用による地域活性化、家族の希望への対応、実習の受入れ、障害者の雇用管理方法への期待、社会・地域貢献、社会からの要請に基づく障害者雇用への取組み、社会貢献活動、障害者雇用に関する表彰等、障害者の社会的な自立への支援、社会的責任の履行、社会の役に立つ、地域社会の理解など②障害者雇用の位置づけと全社的な取組み5070企業理念での位置づけ、共通の賃金制度、グループ全体での障害者雇用の推進、健常者との同一の労働条件、雇用推進の仕組み、雇用の目的の付与、コンプライアンス、支援の積極的な実施、資格制度の導入、障害者雇用知識の習得、障害者雇用の取組方針、親会社と連携した雇用促進、管理職の障害理解の促進、機会の均等化、終身雇用の実施、障害の有無に関係のない人事異動、障害者用の賃金制度の設定、職位に求められる人財像の明確化、人材育成の観点、正社員への登用、ダイバーシティに取り組む姿勢、同一労働同一賃金、労働環境の整備、企業トップの姿勢、経営課題としての障害者雇用、経営戦略としての取組み、経営倫理の理解、差別のない雇用、社会からの排除の改善、障害者雇用を経営戦略に位置づける、戦略化策としての障害者雇用、組織変革としての障害者雇用など③障害者のキャリア形成と能力の発揮(戦力化)53105障害特性に応じた職務、仕事からの学び、実習による適性の見極め、キャリアアップ、キャリアビジョン、個別の育成プログラム、個別の作業習得支援、コミュニケーションの強化、雇用障害者に合った職位制度の創設、雇用の安定性、作業指示の工夫、作業量の向上、支援器具、支援者のサポート、仕事の与え方、仕事の調整、仕事の能力向上、仕事のマッチング、仕事への意欲、障害者の長所、柔軟な働き方、障害に合った機器の改良、障害への配慮、昇進・昇格、職場の人間関係、職場の物理的環境、職場の理解、職務遂行上での指導の実施、職務の遂行、人材育成の姿勢、人事異動、成果の見える化、生産性向上、多能工化、適材適所、適正な業績評価、適性の見極め、適正評価、適切な雇用管理指導の実施、適切な人事評価の実施、手順の工夫等、特性に応じた育成プログラム、日報作成、能力に応じたスキルアップ、能力の活用、配属先での業務理解の促進、研修システムの充実など④障害理解に基づくきめ細かな対応5087外部機関の活用、仕事の与え方、柔軟な働き方、働く意欲の維持向上、同じ職場の仲間、家族との連携による職業生活の維持、加齢に伴う対応への配慮、休職に関する配慮の実施、勤務時間の弾力化、合理的配慮、個別配慮、コミュニケーション、支援者のサポート、仕事の調整、仕事のマッチング、仕事の見える化による定着の促進、施設・設備の改善、障害者相互の支援の実施、指導役の対応、障害者同士でのカバー、障害知識を有する社員による雇用管理、障害特性に応じた配慮の実施、障害への配慮、上級職位への意識付け、職場の理解、生活面を含めた支援の実施、相互理解の促進、体制整備、賃金の公平性、定着課題へのきめ細かな対応、適正な支援、店舗巡回・面談の実施、配慮ニーズの把握、働きやすい環境、目標設定と結果に応じた賃金の設定、労働条件の緩和など⑤働く価値や意味、賃金、自己実現等(障害者から見た雇用の質)3255ES(従業員満足度)、同じ職場の仲間、解雇、健常者と同じ仕事、健常者と働く場、自己実現、仕事からの学び、仕事による承認、仕事の負荷、仕事への意欲、社会参加、職場の人間関係、職務の必要性の理解、職務満足、生活の充実、成果に伴うやり甲斐の発生、退職遺留、他者からの承認、賃金、通勤、働きがい、ハラスメント、福利厚生、モチベーションの向上、労働条件、ワーク・ライフ・バランス、会社での居場所づくり、経済的安定、健常者と同じ参加の場、幸せの実現につながる雇用、昇給、賃金が維持できる雇用、満足度⑥障害者雇用の波及効果(障害者雇用と企業経営・共に働く労働者の雇用との相互作用)1836企業イメージの向上、求人への応募の推進、業務改善の推進、顧客に対するイメージの向上、コミュニケーションへの配慮、雇用管理方法の習得、作業工程の改善、障害者雇用の価値、社員の意識向上、社員の指導方法の改善、社員の障害理解の難しさ、社員の生産性向上、社内のコミュニケーションの向上、相談時間の確保、ダイバーシティ経営への効果、雇用による社内への好影響、障害者雇用ノウハウの営業ツール化、障害者対応の新技術への応用⑦ その他67社会的気運の醸成、職場定着、地域の障害者機関・施設との関係づくり、ピアレビューによる質的評価、障害者雇用率、職場定着率計233392

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