働く広場2019年5月号
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7働く広場 2019.5りました。村木 精神障害者については調子の波をどうするか、就労時間はどの程度まで延ばせるのか、といった問題もありますが、ハローワークで扱う件数も相当増えていますから、実例が増えてくるなかで現実的な雇用の仕組みも確立されてくるのではないでしょうか。松矢 基本的には、福祉と医療と雇用・就労の連携ということになりますが、医療は継続して必要です。精神保健福祉士といった専門職が、医師側とつなげられるようにすることですね。いくら医師が「もう働けますよ」と診断してくれても、実際に働く際には支援が必要です。法律が改正されたことに後押しされて、「働きたい」という精神障害者は増加すると思われますので、支援センターを利用される人のなかには、ていねいな支援を必要とするケースもあるでしょう。そのあたりは知的障害者よりも充実させる必要があります。村木 もともと精神障害者へのサービスは医療中心でした。障害者自立支援法ができたときに三障害種共通の枠組みをつくりましたが、あの狙いは、知的障害者がそれまで使っていた福祉サービスをいかに精神障害者にも使ってもらうかという部分が大きかったですね。働くために生活や病状を支える仕組みが必要ですから、福祉的な支援の強化と並行していかないと、就労が長続きしないと思います。松矢 そういう意味では、やはり選択肢がいろいろあって、「がんばったけど挫折しちゃった」という場合に一度立ち戻る、再チャレンジするという柔軟さがあるといいわけですね。また、地域センターで行ってごく大事なのだと感じています。働くことで自己実現して自信を取り戻して成長していける社会を考えたとき、手段としてもっとも先行しているのが障害者雇用の世界だと思っています。この世界で、いろんな人を巻き込み、サポートし、選択肢をつくれば、外側の広い世界にも大きな恩恵があると思います。その実現に向けた情報提供のツールとして、この『働く広場』の意味は大きいのではないかと感じています。そして働く人や支援する人、雇用する人たちなど多くの方たちから、「ダイバーシティ」という言葉が出てくるのも、この雑誌のすぐれた点です。世の中のいずれの職場にとっても大事な価値が、理屈や無理やりの仕掛けではなく、自然に編み込まれているような感じなのです。これからもこのスタンスを変えずに、「読んで楽しくためになる」雑誌でいてほしいですね。松矢 ダイバーシティ、多様性ということでは、たとえば稀少難病でも働きたいという思いを持っている方もいらっしゃいますよね。『働く広場』では最近もテレワークについての記事がありましたが、多様な労働形態や仕事の内容なども含めネットワークを活用して情報をどんどん見つけて取材をしてもらいたいですね。そうした情報が障害のある方たちを勇気づけ、一般の方たちも「働くとは何か」について考える大きなきっかけとなり、心の糧にもなっていくはずです。できれば『働く広場』が、障害者雇用に関係する人や機関にとどまらず、多くの場で、多くの世代の人たちの目にとまるようになってもらいたい。そしてなにより終わりのない広報誌であってほしいと思いますね。ありがとうございました。いるリワーク支援(※5)については、気分障害といった精神障害のある方たちの復職に際し、よい効果を出しています。企業側の困り感を解消できるよう、主治医と事業主が連携しながら取り組める仕組みになっていますね。 『働く広場』の公開座談会にも精神障害や発達障害のある方が出てくださると、自分はどうやって企業に雇用されるに至ったかといった話をしてくれ、説得力があります。会場にも当事者の方たちがいて熱心に聞いてくれます。 村木 『働く広場』は、当事者や支援者、いろいろな立場で情報がほしい方に応えてくれていると思います。障害者の支援方法や仕事の内容、働くための工夫などについての情報は、ネットワークによって地域や分野を超えて集まってきます。そのネットワークに入っている人たちを巻き込んでつくられている『働く広場』は、本当に幅広く網羅していると感じます。松矢 編集委員も多様で、定期的に入れ替わっていますが、あらゆるジャンルで活躍されている人が記事を書いてくれています。取材では雇用を手がけた方がわかりやすく話してくれているので、初心者の方たちも興味を持って「もっと知りたいな」と思ってくれるような記事やニュースが多いのだと思います。 では最後に、今後の障害者雇用と『働く広場』への期待についてお聞かせください。村木 私は最近、困窮者や引きこもり、非行の子どもたちとかかわる活動をしています。どの分野にいても、「働く」ことはす働く場に多様な人がいる価値※5 リワーク支援:うつなどで休職中の方を対象とした、主治医および事業主と連携しながらスムーズな職場復帰を図るための支援

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