働く広場2019年6月号
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働く広場 2019.6オフィスでは、出入りがしやすい角地のデスクを使用。打合せなどもその場で行っている視覚障害者用アクセス機器を駆使し、ワードやエクセルを使いこなす川崎市の自宅から港区の職場まで、電車で通勤しているクラシエ製薬株式会社(東京都港区)の本社で働く尼あま野の次じ郎ろうさん(43歳)は、小学生のときに角膜が混濁し、光を感じる程度の視力となった。小中高校と盲学校で学び、大学卒業後は点字図書館で4年ほど校正の仕事をしていたが、民間企業の事務職にも興味が湧き、一般企業への就職を目ざし「国立職業リハビリテーションセンター(以下、職リハセンター)」の視覚障害者アクセスコース(現在の視覚障害者情報アクセスコース)に入所した。職リハセンターでは、1年3カ月かけて視覚障害者用アクセス機器(点字、点図ディスプレイ)やアクセスソフト(音声化ソフト)の使用方法をはじめ、パソコンでの事務処理で求められる知識や技能を学んだ。就職活動では、実際の業務内容や職場のコミュニケーションの取り方などに不安を感じていたが、職リハセンター職員との面接の練習や、企業の採用担当者へのパソコン操作の実演などを通して自信がつき、「クラシエ製薬株式会社」への就職につながった。現在、入社10年目の尼野さんは総務・人事部に所属し、社員の給与管理などの事務処理や電話対応などを担当している。「仕事が生きがい」と語る尼野さんの趣味は20年間続けているマラソンで、年に複数の大会にも出場している。公私ともにアクティブな尼野さんは、今春、主任へ昇進した。「今後、社内の後輩の不安を解消するアドバイスができるようになりたい」と抱負を語る。職リハセンターの訓練生には「訓練をしっかり受けて、面接なども恐れることなくチャレンジしていくことが大事」とアドバイスしている。16

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