働く広場2019年6月号
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価格設定などは自由なので、付加価値の高い商品とサービスを提供したい」と、川島副社長の夢は広がる。また、さぽーとぴあにカフェベーカリーを開設した一番の目的は、「実習の場」を提供することだという。川島副社長は、就労支援機関に「企業で働く」というレベルを的確に理解してほしいと強調する。たしかに、就労支援センターから見れば、実習の場を増やすことに加え、企業とアセスメントの状況を共有することにもつながることになる。障害者雇用に対する同社の基本的な姿勢は、「会社内のことは会社内で対応する」こと。そして障害の有無にかかわらず、「努力すればキャリアが進む」ことを前提としている。障害のある社員と向き合う際には、常に「自立」を念頭に置いており、同社には特別支援学校を卒業した若い従業員も多いため、働いて自立することを期待しているという。一方、彼らが職場に定着し、持てる能力を十分に発揮するためには、生活の安定や生活上の課題の解決が欠かせない。そのため、社員のプライベートにあたる生活面は、就労支援機関によるサポートを活用している。このように、企業と支援機関との役割分担をふまえたうえで、両者が連携していくことが重要である。同社からは、就労支援センターとカフェベーカリーを通じ同社がファクトリー事業として展開する2拠点のうちの一つが大田区にある。ここは人じん工こう光こう型がた植物(水耕栽培)工場で、葉物野菜を栽培し、楽天本社ビル内の社員食堂をはじめ各所に納品している。ここには、就労支援センターの登録者も勤務している。また同社は、大田区立障がい者総合サポートセンター「さぽーとぴあ」のグランドオープンに合わせて、一般の消費者向けのカフェベーカリー業務も行っている。楽天本社ビル内で運営しているコンビニエンスストア業務のノウハウを活かしながら、さぽーとぴあを利用する障害者のみならず、近隣の障害者や高齢者、さらには地域のさまざまな住民との共生を目ざす新しい形の店舗だという。焼き立てパンの製造やレジ打ち、商品の陳列・補充、店内清掃などの通常業務に加え、開かれたお店づくりを行うことで、多くの利用者に憩いの場を提供したいとのこと。このコンビニエンスストア機能を有するカフェベーカリーでは、ベーカリーそのものには職人を採用したが、オープン時から店内には複数の障害者を配置し、障害種別にかかわりなく業務の可能性を広げていきたいという。さぽーとぴあを訪問した際にも実感したが、目の前には公園があり、病院も近く地域住民が利用しやすい環境にある。「公的な施設ではあるが、型事業所などの福祉的就労と、企業就労との違いを明確にイメージして相談に臨むことがむずかしい場合もある。そのようなときに『大田区ジョブック』を利用すれば、相談のなかで得られる情報から、チェックリストを用いることで、支援対象者における就労のステージを概がい観かんできる。こうしたツールによる情報共有は、地域生活の支援をになう相談支援事業所と、就労支援センターによる支援を密接に結びつける役割を果たしている。 地域のネットワークに基づく就労支援センターの特徴を知れば知るほど、具体的な支援の状況についても知りたくなる。そこで紹介いただいた楽天グループの特例子会社、「楽天ソシオビジネス株式会社」を訪ねた。同社は、東京都世田谷区の楽天株式会社の本社内にある。就労支援センターから電車利用で一時間ほどの場所にあるが、区は異なっても就労支援の活動には距離をいとわない支援機関の心意気が感じられる。楽天本社ビル内にある楽天ソシオビジネスを訪ねると、さっそく同社代表取締役副社長の川かわ島しま薫かおるさんと、雇用推進部定着支援グループの山やま岸ぎし大だい輔すけさんが出迎えてくれた。「楽天ソシオビジネス」で、新たな連携を実感働く広場 2019.6代表取締役副社長の川島薫さん雇用推進部定着支援グループの山岸大輔さん「さぽーとぴあ」の就労支援を受け楽天ソシオビジネスで働く神じん村むら海かい斗とさん(注)楽天ソシオビジネスの取組みについては、本誌2016年1月号の「職場ルポ」(※1)で紹介しています。また、障害者雇用事例リファレンスサービス(※2)にも掲載しています。※1 当機構ホームページでご覧いただけます。※2 当機構ホームページでご覧いただけます。https://www.ref.jeed.or.jp/27/27506.html働く広場 2016年1月号検索障害者 リファレンス 楽天検索24

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