働く広場2019年6月号
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働く広場 2019.6 2018年6月号の研究開発レポート(※1)で紹介したように、障害者の就職と職場定着における課題と、地域の人材育成とネットワークの課題は表裏一体です。障害者に対する効果的な就労支援が実現している地域では、就労支援の成功体験を積んだスーパーバイザーを含めて、さまざまな分野の支援者が、多様な個別支援ニーズに対応するために、現場で日常的に情報交換したり、アイデアを出し合うことで、複雑な課題の総合的な解決につなげています。その一方で、そのような現場での「インフォーマル」な取組みは、外部からは分かりにくいものです。それが障害者就労支援による成果の地域差や、支援者の異動などによる地域ネットワークの不安定さの要因となってきたことも否めません。 障害者職業総合センター研究部門︵以下、「当センター」︶では、モデル的なワークショップの実施などをふまえ、このような地域の現場で暗黙的に実施されている人材育成とネットワーク形成のプロセスの言語化と体系化を進め、そのポイントを小冊子(※2)としてまとめました。障害や疾病のある人も働ける社会づくりが本格化するなかで、多様な関係者が、共通目標を確認し、効果的な役割分担と連携に向けた対話を促進するために活用されることを期待しています。 そもそもなぜ、現在、障害や疾病のある人々の職業生活を支えるために、幅広い関係機関・職種が関わるようになってきたのでしょうか?それは、従来、障害や疾病のある人については日常生活や地域生活の支援が中心と考えられてきたのに対して、現在は、このような人たちが職業生活を送ることができるように社会全体で支える取組みの整備が急速に進んでいるからです。これはわが国だけでなく、世界各国でも同様です。 当センターの最新の調査研究報告書No.147︵次ページ※3︶でご紹介しているように、世界ではジョブコーチなどによる個別支援技術の発展にとどまらず、関係機関・職種の連携によるケースマネジメントや支援プログラムの開発が進んできました。さらに近年では、社会全体として、本人や企業・職場による多様な主体的取組みが進み、個別支援のニーズに、多様な関係機関・職種がタイムリーに「餅は餅屋」で支えていくようなものに発展しています。すなわち、「インクルーシブな企業・職場と地域づくり」こそが、地域関係機関の役割分担・連携の次のステージのビジョンなのです。 当センターでも障害者就労支援の役割分担・連携のためのワークショップの共催を地域に呼びかけたところ、社会保険労務士による役割検討、青年会議所の地域振興企画、難病対策のための保健医療関係者の研修、大学の学生相談室など、従来の「障害者就労支援」関係者の範囲を超えた多様な関係者から応募がありました。ワークショップへの参加者の多様さとその対話の内容から、地域関係者がそれぞれの強みや社会資源を活用して障害や疾病のある人の職業生活を支える、これまでにない取組みを行える可能性も確認できました。 障害や疾病のある人の職業生活を支えることに関心があり、実際に役割を果たすことのでき障害者の就職と職場定着の支援に向けた関係機関・職種の人材育成とネットワークのために障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門※1 「働く広場」2018年6月号は、当機構ホームページでご覧いただけます。 ※2 本小冊子は http://www.nivr.jeed.or.jp/research/kyouzai/kyouzai61.htmlから無料でダウンロードいただけます。冊子が必要な場合などは、お問い合わせください。   ◇お問合せ先:研究企画部企画調整室(TEL: 043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp)研究開発レポート働く広場 2018 6月号検索1 インクルーシブな企業・職場と地域づくり2 共通目標と成功イメージの共有28

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