働く広場2019年7月号
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働く広場 2019.7さんは2年前にマルハ物産に転職してきたとき、大鋸さんから「少しこだわりが強い従業員さんがいるので、そこだけ気をつけて見守ってほしい」とアドバイスを受けた。日ごろから世間話やちょっとした声かけをするなど、コミュニケーションを心がけているそうだ。そして、「任せた作業に一生懸命取り組んだり、効率を考えて工夫しようとしてくれるなど、私よりもエキスパートな熟練さんもいます。今後もみんなが新しいことにチャレンジできるよう協力し合っていきたいですね」と話してくれた。 マルハ物産では、今年から新しい取組みとして、障害のある従業員に、業務上の資格取得をうながすことにした。資格とはクレーン技能講習(学科1日・実技1日)と玉掛け技能講習(学科2日・実技1日)の二つ。その挑戦者第1号が氏うじ家け覽ただ敬ひろさん(26歳)だ。「資格取得はハードルが高かったですが、氏家さんは日ごろの仕事でフットワークや判断能力が優れているので、チャレンジできるのではと声をかけてみたところ、本人も意欲を見せてくれました。この資格があれば工場内のクレーンを操作できるようになるので、障害のない従業員と同じ仕事も任せられるようになります」氏家さんは漢字が苦手なため、学科の予習がスムーズにできるよう、大鋸さんが前もって資格を取得し、内容についてアドバイスしたという。氏家さん自身も、マニュアルの項目などを覚えられるよう「陰でとても努力していたようです」と大鋸さん。取材日はちょうどクレーンの実技講習日で会うことができなかったが、後日、二つの資格を見事取得できたそうだ。資格取得をうながすことを検討するきっかけは、全体的な人手不足だと大鋸さんは話す。「いまいる従業員のなかで、少しでも仕事の幅を広げたいと思いました。障害のある従業員のみなさんには、これまで安全に仕事をしてもらうために役割を制限していた部分があります。例えば、刃物がついた機械を扱う担当にならないようにしていました。しかし経験が積み重なるにしたがって、自ら安全管理ができるところまで成長している人もいます。一緒に働くなかで適性や能力・経験も見極めながらステップアップをうながすことで、本人のモチベーションも上がることがわかりました。資格取得などにより専門的な作業ができるようになった従業員のために、待遇に反映できる新たな制度環境を検討しているところです」実際にクレーン操作の工程は、90度という熱湯でレンコンをゆでて引き揚げるのだが「商品の良し悪しを決めるといってもいいほど、とても重要な部分」だという。氏家さんのような従業員が、クレーン操作を行えるようになることで、それまで担当していた従業員が、さらに別の仕事にかかわることができるため、工場内全体の人員体制が流動化し、ボトムアップを図ることができる。氏家さんが資格を取ったことを知って「今度は自分も挑戦したい」と意欲を見せている従業員もいるようだ。「社内の新しい動きのなかで、彼らの活躍の場や成長の機会を増やしていけたらいいなと思っています。全従業員を含めて配置転換や応援し合える体制もつくっていきたいですね」 マルハ物産では2年ほど前から、育成園の施設である指定障害福祉サービス事業所「なごみ」に、職場実習の場として職場共用スペースの清掃業務を委託している。もともと委託していたシルバー人材センターで人員確保がむずかしくなっていたところに、「なごみ」側から「実習でできる仕事がないだろうか」と相談があったのがきっかけだ。平日午前中に「なごみ」の就労継続支技能を身につけ、職域拡大とボトムアップ高齢の障害者が働ける機会を提供資格を取得して、ホイストクレーンを操作する氏家覽敬さん(写真提供:株式会社マルハ物産)8

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