働く広場2019年7月号
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働く広場 2019.7援B型事業所の利用者が清掃作業を行っている。実習生のなかには当初、音に敏感で感情の起伏が激しい特性を持つ人もいたが、仕事を続けるなかで症状もしだいに落ち着き、「就職したい」という意欲も強くなっているそうだ。「なごみ」の職業指導員を務める川かわ崎さき弘ひろ法のりさんに話を聞いた。「清掃作業はハードルが高いので、最初は不安もあったのですが、シルバー人材センターの方や私たちが指導しながら取り組みました。その後、仕事内容が合っていた2人が続けることになり、『ここまでできるようになるとは』と驚いています」同じく2年前からマルハ物産は、「なごみ」に泥つきレンコンを運び入れて、皮むき作業も委託している。きっかけは、70代の足の不自由な男性利用者だった。「若い人は外に出て作業ができるのですが、高齢の方は体力的にもむずかしい。本人は少しでも働きたいという思いを持っていらっしゃったので、思い切ってマルハ物産さんに相談してみたのです」初年度は作業をやりたがる人がおらず、この男性を含めて3人ぐらいだったそうだが、実際に作業をしている様子を見て興味を持つ利用者が増え、いまでは10人ほどにまで増えた。70代の男性は作業リーダーをつとめている。ピーラーを使うので慎重に指導し、できあがりは職員が確認している。扱うレンコンも1日200㎏、1カ月3tぐらいになるという。「最初は『むずかしいかな』と思っていたような人も、どんどん作業能力が上がり、達成感とともに働く意欲もぐんと上がりました。いまでは一定の工賃を支払えるほどになり、本当にありがたいです」「なごみ」が運営しているパン工房「ぱんぱかぱん」の移動販売も月1回、マルハ物産の事務所前で行われている。従業員も楽しみにしているようで、毎回売り切れているそうだ。大鋸さんは「直接雇用をこれ以上増やすことはむずかしくても、業務委託などにより、少しでも働く障害者を応援できればと思っています」と話す。ちなみに大鋸さんは、奥さまが福祉施設で働いており、互いに勉強になることも少なくないそうだ。最後に大鋸さんは、障害者雇用をすすめる地域社会のあり方についても話してくれた。「私が、この松茂町がよいと思っている点は、長年にわたって小・中学生が授業の一環として知的障害者施設を訪問していることです。子どものうちから、障害のある人を身近な存在として当たり前のように感じられるような経験と機会を、社会でたくさんつくっていくことも大事だなと思います」指定障害福祉サービス事業所「なごみ」でのレンコン皮むき作業(写真提供:株式会社マルハ物産)パン工房「ぱんぱかぱん」の移動販売車。マルハ物産の従業員にも人気がある(写真提供:株式会社マルハ物産)9

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