働く広場2019年7月号
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さっそく木工作業室へ。聴覚障害のある武む藤とう哲てつ夫おさん(66歳)が杉の木を用い、草花を植えこむプランターをつくっていた。「木工が一番好きです。長岡聾ろう学校にいたとき、大工コースで6年間習っていました。休みの日はスキーをします。スキー大会運営のボランティアにも行きます」筆談と、同僚の手話を交えての取材。スキー歴は40年の上級者だった。コンポストセンターで肥料の袋詰め作業を中心に働く小こ浦うら英ひで幸ゆきさん(39歳)は「袋一つが15㎏、結構重いんです。夏は暑くて汗が出ます。休みの日は彼女とドライブを楽しみます」と笑顔で話した。障害のある8人の年齢は21歳から68歳まで。平均年齢は30代だ。9時から16時まで勤務している。山菜と大根、白菜、スイカなどは長岡市街地にあるJA直売所で販売している。「山菜、野菜の売り上げ、親会社からの肥料の生産委託費などが会社の収入源に「遠路ようこそ」と、作業服姿の代表取締役社長、野の口ぐち邦くに夫おさんが迎えてくれた。会社の概要を聞く。「障害者の雇用機会の拡大、ノーマライゼーションを企業内で実現するため、ともに働くことの幸せを実感できる環境を目ざして特例子会社を設立しました。ここで働く障害のある人たちの当初の業務は、肥料の袋詰めと配達でしたが、地域に高齢者が多く、耕作放棄地が増えたため、それを活用して農業に参入しました。ワラビや行ぎょう者じゃニンニクなどの植えつけ、ウド、キノメ、ミズナ、ウワバミソウ、ネマガリタケなど山菜の採取、そして雪の降る冬は、木工製品の制作を行っています」いつしか郷土色豊かな、地域に根ざした仕事内容になっていた。「社員の体力、根気、特性、適性や、季節、働きやすさなどを配慮し、この7年間の経験により、業務内容はこのようになりました」と話す。上越新幹線の長岡駅から車で20分、長いトンネルを抜けると、4月というのにまだ辺りの山には雪が残っていた。豪雪地帯なのだ。その里山の麓ふもとに緑水工業株式会社(以下、「緑水工業」)の「緑水工業コンポストセンター」の看板があり、下水処理の過程で発生する汚泥を高温発酵して肥料をつくるバイオマス事業所があった。その敷地内に鉄骨2階建ての、特例子会社「株式会社夢ガーデン」の社屋がある。働く広場 2019.7完成した木製プランター木製プランターを製作中の武藤哲夫さん肥料の袋詰め作業をする小浦英幸さん(右)たち夢ガーデン代表取締役社長の野口邦夫さん特例子会社「株式会社夢ガーデン」障害者の就労の場として、特例子会社の設立・誘致に取り組む中ちゅう山さん間かん地域にある特産品を発掘し商品化。その生産・販売を地域活性化へつなぐ障害者や受入れ市民のための「就農訓練カリキュラム」を作成、就農・就労をマニュアル化123POINT21

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