働く広場2019年7月号
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と知り合い「原料になるクロモジを探している」といわれた。クロモジは漢方では整腸作用があるとされ、香りがよく、リラックス効果も期待される。家老さんはUNEHAUSの周辺の山に自生していることを思い出し、現地へ行ってみると、棚田の上の山で発見。メーカーに連絡し納入への具体的な条件を確認して出荷が始まった。クロモジは高さ2mほどの落葉樹だ。秋口に山へ採取に行き、昨年度は3t出荷できた。その後、以前からの知り合いとの協働でお茶の商品化に取り組み、2017年より販売を開始した。枝と葉を採取、洗浄した後、乾燥し、お茶になる。枝をはさみで短く切る作業は手間がいるが、障害者には向いていた。山中でクロモジを見分ける作業も、覚えると早くなった。商品も好評で長岡市の道の駅、そしてJR長岡駅、新潟駅の土産物屋で販売している。商品化はさらに進み、今年3月には搾さく油ゆを行い、そのエッセンシャルオイルが「ピローミスト」という商品名でスプレーになった。寝る前、枕に吹きかけるとリラックス効果から睡眠導入が期待できるという。試してみたが、たしかによい香りだった。特産品づくりや農家レストランを営その他の醸造酒製造許可を長岡税務署から取得、同市内初の蔵元になり、齋藤さんが担当することになったと紹介されている。齋藤さんはもともと、地元の織物会社の研究開発担当の取締役だったが会社が倒産。職を失った人たちに申し訳ない気持ちがあり「福祉で恩返しを」とUNEに入った。半年後、どぶろくづくりの話が持ち上がり、翌年から酒米「亀の尾」を田植えした。どぶろくづくりには、自家産米を使う。亀の尾を蒸し、酵母と麹を入れ水と合わせ仕込む。亀の尾は寒さと水の冷たさに耐える特性があり、濃い芳ほう醇じゅんな味に仕上がる。2015年11月、最初のどぶろくが瓶詰めされた。家老さんは新潟の銘酒にちなみ「雪中」、地名の一之貝から広く世界に思いを込め「壱乃界」とし、ラベルに「雪中壱乃界」と刷り込み、障害のあるスタッフとともにラベルを貼った。720㎖で販売価格2160円。年間1000~1500本売れている。「素人ががんばって国内2位の賞をいただいた。うれしかった。全国の人に飲んでほしい。採算ベースは2000本なので、もう少し。通信販売もしています」と66歳の齋藤さんの言葉に力が入った。また、UNEではクロモジを使った商品の開発・販売にも力を入れている。2016年、家老さんは薬用酒メーカーの人地指導を受け、地域の農家の人たちに助けられて、米づくりを学んだ。「『コメづくりが自分に合っている』と思いはじめ、3年目からやっと自分が思う米づくりができるようになりました」と田中さん。そのお米を使っているUNEHAUS内の食堂が、長岡保健所の営業許可を取って農家レストランになり、「お客さんが﹃おいしい﹄といってくれるのが何よりうれしい。励みになります」と語る。今年3月、地元紙長岡新聞に「全国どぶろく研究大会 雪せっ中ちゅう壱いち乃の界かいが優秀賞」、「市内初の蔵元 NPO法人UNE」という大きな見出しのトップ記事で紹介され、どぶろくの仕込みをする齋藤さんの写真も掲載された。記事には2013年、長岡市がどぶろく特区になり、UNEが就農訓練カリキュラムどぶろくで優秀賞働く広場 2019.7瓶詰めされたどぶろく「雪中壱乃界」くろもじ工房では、クロモジからお茶やエッセンシャルオイルがつくられる24

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