働く広場2019年7月号
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働く広場 2019.7「職場では、障害者のみなさんも当たり前のように一緒にいるので、だれも違和感がないと思います。もちろん時折、業務上の言葉のやり取りのむずかしさが出てくることもありますが、特別扱いはせず、しっかり伝え合うことを心がけています」ちなみに新しく入ってきた社員から「障害のある従業員と、どのように接したらいいか」といった相談を受けると、大鋸さんは「普通の人として、ふだん通りにやり取りしてください。会話での多少の不自由さはあるかもしれませんが、ふだん通りわかりやすく語りかければ大丈夫」と伝えている。その一方で不要なトラブルが生まれないよう、前もってベテラン社員にも一緒に入ってもらいながら見守ってもらう細やかな体制づくりも欠かさない。「現場でうまくいかなくなるとすれば、原因は、お互いの情報・理解不足に尽きると思います。障害のあるなしは、仕事をするうえで壁にはならず、あくまで“役割の違い”であると思えるような職場環境を、いかにつくるかが大切だと思っています」いまも育成園の関連施設や特別支援学校などから実習生を受け入れたり、トライアル雇用を経るなどして採用につなげている。基本的にはフルタイムの立ち仕事なので、ある程度の体力・集中力が基本条件だ。もちろん長く勤められるよう、お互いにマッチできるかどうか見極めることも大事だという。それでも入社直後や繁忙期には、精神的・体力的な疲れなどから私生活に支障が生じることもある。「朝晩の生活リズムが乱れてくると、施設や通勤寮の職員らから『朝起きにくくなっている』、『トイレがうまくできなくなっている』といった不調を知らせる連絡が入るので、作業負担を減らしたり配置を変えたりして調整しています」 さっそく、工場内を見学させてもらった。学校の給食室を巨大化したようなイメージだ。ステンレス製の大きな水槽のなかのカット済みのレンコンをザルですくいあげ、隣の大きな機械のなかに投入していたのは稲いな葉ば和かず彰あきさん(50歳)。1989(平成元)年入社で勤続30年の最さい古こ参さんだ。主に、選別ライン(原料の異物除去・規格選別工程)の原料投入と選別業務を担当している。この日は2人の女性従業員が一緒に作業をしていた。水槽のなかのレンコンがなくなると、いったん機械を洗浄する。手際よく機械の各部を水洗いしながら、次の原料を投入する準備を始めていた。一日の終了時には設備の分解洗浄、翌日スタート時の部品の組立て作業も行う。大鋸さんによると「機械洗浄では、特に見えにくいところに、原料が詰まっていたり、水みず垢あかなどがついていたりするのですが、稲葉さんは一度ポイントを教えると、細かいところにも気づいて、ていねいに洗浄してくれています」作業の合間に稲葉さんに声をかけて、仕事について聞かせてもらった。「この作業は力が必要で、しんどいときもあります。量が多いときは少し休みを入れています。汚れがないよう気をつけています。工場長さんは、よく話を聞いてくれて、機械の洗浄がきれいにできたら褒ほめてくれるのでうれしいです。がんばって定年まで働きたいと思います」同じ選別ラインで別の機械の部品洗浄各ラインで適性を活かし活躍選別ラインで活躍している、ベテランの稲葉和彰さん。異物除去機の洗浄作業も真剣に行う「定年までこの会社でがんばりたい」と語る稲葉さん6

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