働く広場2019年8月号
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働く広場 2019.8一方で、特別支援学校からの実習生に対しては「会社で働くこと」についての指導に力を入れている。実習に入る際には、必ず事前面談を行う。そこでは「四つの約束」をはじめ、テーマ別に、働くための心構えなどを説明する。「四つの約束の2番目の﹃わからないことはわからないという﹄ことは、決して恥ずかしいことではなく、むしろそういわなければ仕事にも支障が出ることを何度も伝えます」と伍嶋さん。また、実習の際は「指示を、きちんと聞くことができるか」、「目を、合わせられるか」、「ルール、時間を守れるか」といった点を確認することをあらかじめ示している。こうした数々の「働くこと」について考えるための提示は、保護者や学校の先生たちにも向けられている。「学校や就労移行支援事業所では、作業のテクニックばかり教え込もうとしているケースが少なくない。作業内容はぼくらがいくらでも教えます。それよりもまず、社会人になるための基礎を身につけておいてほしいのです」と伍嶋さんは話す。例えば、ある実習生が交通系ICカードを使って通ってきていたが、売店で買い物に使いすぎて残高がなくなってしまったという。「すぐに親に電話して迎えに来てもらったそうですが、現金は持っていたそうです。ICカードにチャージする方法、切符を買う方法を知らなかった。こういう基本的な生活スキルこそ家庭や学校で教えておいてほしいと実感しました」一方で、本人に任せず教え過ぎる先生にも注意をうながしているそうだ。「教室で移動した机の配置を元に戻すときも、毎回場所を教えるのではなく、『◯◯時までに元通りにして』という指示をすれば、生徒たち自身で試行錯誤しながら達成できる場合がある。できるかもしれないことをトライさせないのは一番よくない。“指示待ち人間”をつくっているのは大人たちです」実習の最終日には、保護者や先生を交えた事後面談も行う。伍嶋さんは実習中に気づいたことを細かくメモにまとめておき、本人の伸ばすべき「よいところ」、「注意すべきところ」などを伝えながら、就職活動に向けたアドバイスをする。伍嶋さんは、いまでは特別支援学校などに呼ばれて生徒や保護者向けに話をすることも多いそうだ。そこで話すのは「就労の可否は、障害の程度によるのではなく、本人がどこまで働くことに意欲を持っているかということです。『うちの子は重度だから就職できない』という保護者の方もいますが、そういう大人たちの意識を変えたい。子どもたちは変わっていけるということを、もっと知ってほしいですね」資料提供:SBフレームワークス株式会社働くための心構え9

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